
この記事を読むべき人
倉庫改善や自動化の優先順位を、社内で説明できる形に整理したい方
倉庫業務の負荷が増えているものの、どこから見直せばよいか分からない方
この記事でわかること
- 倉庫現場で見直したい代表的な作業負荷
- 自社倉庫の見直しポイントを見つけるための観察ポイント
- 現場で見つけた課題を、改善につなげるために整理する方法
倉庫自動化を考えるとき、最初に検討すべきことは「どの設備を入れるか」「どのロボットを使うか」ではありません。
まず必要なのは、自社の倉庫のどこに見直すポイントがあるのかを確認することです。
倉庫現場の作業負荷やボトルネックは、すでに現場で認識されている場合も少なくありません。歩く、探す、待つ、確認する、やり直すといった負荷は、日々の運営の中で現場が感じていることも多くあります。
ただし、こうした負荷が「どの工程で起きているのか」「なぜ発生しているのか」「どの程度、処理能力や品質、コストに影響しているのか」まで整理されていないと、改善や自動化の検討につなげにくくなります。
この記事では、自社倉庫の見直しポイントをどのように確認し、次の検討に使える形で整理すればよいのかを解説します。
自動化の前に、自社倉庫のどこを見るべきか
前回の記事では、倉庫自動化が必要と言われる背景を整理しました。
人材確保の難しさ、出荷量や出荷パターンの変化、出荷精度やスピードへの要求などにより、これまでのように人の努力だけで吸収し続ける運営は難しくなりつつあります。
ただし、自動化を検討する際に、いきなり設備やソリューションを見るのは早い場合があります。
なぜなら、倉庫現場ごとに、扱う商品、出荷量、作業手順、レイアウト、人員体制が異なり、課題の出方も変わるからです。そのため、まず自社の現場課題を整理し、関係者間で認識をそろえることが重要です。
自社全体での認識が「何となく大変そう」「人が足りなさそう」というあいまいな状態のままでは、どの業務を改善すべきか、どの業務が自動化の対象になり得るのかを判断しにくくなります。
本社のDX推進部門や企画部門などにとっても、現場の負荷や課題を具体的に把握することは、改善テーマや自動化検討の優先順位を考えるうえで重要です。
倉庫現場で見直したい代表的な作業負荷

日々の倉庫運営の中では、さまざまな場面で時間や労力が使われています。現場の負荷か膨らんだり、ボトルネックになりやすいポイントとして、代表的なものには次のようなものがあります。
- 歩く、探す、運ぶ
ピッキングのために倉庫内を歩く、保管場所を探す、資材を取りに行く、商品を次の工程まで運ぶといった作業です。量が多くなると、出荷処理そのものよりも移動や探索に多くの時間が使われることがあります。 - 待つ、滞る
ピッキング後の検品待ち、梱包待ち、出荷前の滞留、工程間の詰まりなどです。ある工程だけが速くても、次の工程が詰まっていれば、倉庫全体の処理能力は上がりにくくなります。 - 確認する、判断する
例外対応、出荷優先順位の判断、似た商品の確認、保管ルールの確認などです。判断基準や情報共有の仕組みが整理されていないと、作業が止まったり、特定の人に確認が集中したりします。 - やり直す
誤ピック、数量違い、検品差し戻し、再梱包、在庫確認などの手戻りです。ミスそのものだけでなく、原因確認や再作業にも時間がかかります。 - 一部工程に負荷が集中する
出荷量は、曜日、時間帯、キャンペーン、繁忙期などによって変動します。通常時は問題なく回っていても、出荷締め時間の前やセール後などに、一部工程だけが急に忙しくなることがあります。 - 作業の進み具合や詰まりが見えにくい
どの工程が遅れているのか、どこに商品が滞留しているのかが見えにくい状態です。状況が把握しにくいと、改善すべき場所も判断しにくくなります。
このように、作業負荷や滞留は、特別なトラブルとしてだけ発生するものではありません。日々の倉庫運営の中に分散して存在しているため、自社の現場ではどこに負荷が集中しているのかを見極めることが重要です。
現場の見直しポイントを見つける5つの観察視点

作業者が常に動いている現場でも、実際には移動や確認に多くの時間が使われていることがあります。反対に、一見落ち着いて見える時間帯でも、特定の工程にだけ負荷が集中している場合もあります。
現場を観察するときは、「人が足りているか」だけでなく、「作業がどこで止まっているか」「どこで判断が必要になっているか」「どの工程に負荷が偏っているか」を見る必要があります。
ここでは、自社の倉庫を観察するときに確認したい5つのポイントを紹介します。
1. 工程ごと/工程間で見る
まずは、倉庫作業を工程ごとに、そして工程間に分けて見ます。入荷、保管、補充、ピッキング、仕分け、荷合わせ、検品、梱包、出荷の工程内そして工程間うち、どこで時間がかかっているのかを確認します。たとえば、「出荷が遅れている」と言っても、原因は一つではありません。ピッキングに時間がかかっている場合もあれば、検品や梱包の前で滞留している場合もあります。工程ごとに見ることで、どこが処理能力の制約になっているのかを把握しやすくなります。
2. 作業者の動きを見る
次に、作業者の動きを見ます。歩行距離が長くないか、同じ場所を何度も往復していないか、商品や資材を探す時間が多くないかを確認します。作業者がよく動いていることと、作業が効率よく進んでいることは同じではありません。移動が多い現場では、作業者の負担が増えるだけでなく、処理件数の上限にも影響します。
3.作業が止まる場所を見る
確認待ち、指示待ち、検品待ち、梱包待ちなど、作業者や商品が止まる場所を観察します。「なぜ止まっているのか」を見ることで、情報が足りないのか、次工程が詰まっているのか、人の判断を待っているのかが見えやすくなります。同じ場所で繰り返し滞留が発生している場合は、改善や自動化検討のヒントになります。
4.判断が発生する場所を見る
どの場面で判断が必要になっているかも重要です。「これは誰に聞くのか」「どちらを優先するのか」「この商品で合っているのか」といった判断が頻繁に発生している場合、作業が属人的になっている可能性があります。判断が多い作業は、自動化する前に、ルールや手順を整理する必要があります。判断が属人化している状態は、教育負荷や品質のばらつきにもつながります。
5.繁忙時と通常時を分けて見る
現場の負荷は、通常時には見えにくいことがあります。通常時は問題なく回っていても、繁忙期、キャンペーン後、出荷締め時間の前などにだけ詰まる工程があるかもしれません。通常時と繁忙時で、どの工程に負荷が集中するのかを分けて見ると、処理能力の制約が見えやすくなります。繁忙時に表れる負荷や滞留を把握することは、人員計画や設備投資の優先順位を考えるうえでも欠かせません。
見つけた現場課題を、改善につなげるために整理する

改善や自動化の判断材料とするために、次は洗い出した現場課題の内容を整理します。
同じ「ピッキングが大変」という課題でも、原因が歩行距離にあるのか、商品を探す時間にあるのか、検品待ちにあるのかによって、取るべき対応は変わります。
そのため、見つけた現場課題は、工程、内容、原因、影響、頻度に分けて確認することが重要です。この整理によって、現場の困りごとを、処理能力や品質、コストに関わる課題として説明しやすくなります。
- どの工程内または工程間で発生しているか
ピッキングなのか、検品なのか、梱包なのか、補充なのか、またはどこかの工程間なのか。工程ごと、そして工程間を分けて見ることで、改善すべき場所が明確になります。 - 何に時間や労力が使われているか
歩行、探索、確認、待機、再作業、運搬など、負荷の種類を分けて整理します。同じ工程でも、どこに時間が使われているかによって課題の性質は異なります。 - なぜ発生しているか
動線が長いのか、保管ルールが分かりにくいのか、情報共有が不十分なのか、作業スペースが足りないのか。原因を見ないまま対策を考えると、表面的な改善にとどまることがあります。 - どのような影響があるか
処理能力、出荷品質、人員配置、教育負荷、残業、コストなどへの影響を整理します。たとえば、歩行距離が長いという課題は、1時間あたりの処理件数や必要人員に影響します。 - どのくらい頻繁に起きているか
毎日発生するのか、繁忙期だけなのか、特定の商品や出荷パターンで起きるのかを確認します。頻度と影響を合わせて見ることで、優先的に見直すべき課題が整理しやすくなります。
このように、現場で起きている作業負荷や課題を経営指標に近い言葉へ置き換えることで、本社や経営層とも改善や自動化の優先順位を議論しやすくなります。
現場課題を、改善・標準化・自動化に分けて考える

洗い出した現場課題は、すべてを自動化対象として見る必要はありません。
まずは、運用改善で解決できるもの、標準化が必要なもの、自動化を検討しやすいもの、自動化の前に条件整理が必要なものに分けて考えます。
- 運用改善で解決できるもの
保管場所の見直し、資材配置、表示ルールの改善などで解決できる課題もあります。よく出る商品を取りやすい場所に移す、資材を作業場所の近くに置くといった工夫で、歩行や探索の時間を減らせる場合があります。 - 標準化が必要なもの
判断ルール、例外対応、教育方法、確認手順などが曖昧な場合は、まず標準化が必要です。作業ルールが整理されていないと、新人や応援人員が入ったときに作業が安定しにくくなります。 - 自動化を検討しやすいもの
繰り返し発生する作業、移動や搬送が多い作業、負荷が集中する工程、作業量が読みにくい工程は、自動化を検討しやすい候補になります。単に作業が大変な場所ではなく、処理能力や品質に影響している場所かどうかを見ることが重要です。 - 自動化の前に条件整理が必要なもの
例外が多い作業、ルールが曖昧な作業、現場ごとに判断が大きく異なる作業は、すぐに自動化しにくい場合があります。このような作業は、まず例外の種類や判断基準、作業手順を整理する必要があります。
自動化は、現場の課題をそのまま機械に置き換えることではありません。整理した現場課題をもとに、どこを運用改善で解決するのか、どこを標準化するのか、どこを自動化の候補として考えるのかを分けて見ることが重要です。
この切り分けができると、自動化を検討する場合にも、目的や期待効果を説明しやすくなります。経営側にとっても、投資判断の前提が明確になりやすくなります。
現場課題を整理することが、自動化検討の第一歩

倉庫自動化を考える前に必要なのは、自社倉庫のどこに見直すべきポイントがあるのかを確認することです。
日々の作業の中で発生している負荷をその場での対処で終わらせず、工程、原因、影響、頻度に分けて整理することで、改善すべき部分、標準化すべき部分、自動化を検討できる部分が見えやすくなります。
さらに、現場で起きている作業負荷や課題を、処理能力、品質、人員配置、コストへの影響として整理できれば、本社や経営層とも改善の優先順位を共有しやすくなります。
自社倉庫の見直しポイントを確認し、現場課題として整理すること。それが、自社に合った倉庫自動化を考えるための第一歩です。
自社倉庫の現場課題を整理したら、次に知っておきたいのは「倉庫自動化とは何を指すのか」です。次の記事では、倉庫自動化の基本的な考え方、対象となる業務や方法を整理します。

この記事のおさらい
Q. 倉庫現場の見直したい作業負荷には、どのようなものがありますか?
A.代表的なものには、歩く・探す・運ぶ、待つ・滞る、確認する・判断する、やり直す、一部工程への負荷集中、進捗やボトルネックの見えにくさがあります。
これらは特別なトラブルとしてだけ起きるものではなく、日々の倉庫運営の中に分散して存在していることが多いです。
Q. 自社倉庫の見直しポイントを見つけるには、どこを見ればよいですか?
A.工程ごとの流れ、作業者の動き、作業が止まる場所、判断が発生する場面、繁忙時と通常時の違いを見ることが有効です。
「人が足りているか」だけでなく、「どこで時間や判断が発生しているか」を見ることで、改善すべき場所が見えやすくなります。
Q. 見つけた自社倉庫の現場課題は、どのように整理すればよいですか?
A.工程、内容、原因、影響、頻度に分けて整理します。
たとえば、同じ「ピッキングが大変」という課題でも、歩行距離が長いのか、商品を探す時間が多いのか、検品待ちが発生しているのかによって、取るべき対応は変わります。
Q. 洗い出した自社倉庫の現場課題は、すべて自動化すべきですか?
A.すべてを自動化対象として見る必要はありません。
まずは、運用改善で解決できるもの、標準化が必要なもの、自動化を検討しやすいもの、自動化の前に条件整理が必要なものに分けて考えることが大切です。自動化は、現場の課題をそのまま機械に置き換えることではなく、自社に合った改善方法を見極めるための選択肢の一つです。

- Vol.1: 「まだ人で回せる」はいつまで続く?いま、倉庫自動化が必要と言われる理由
- Vol.2: 自動化を考える前に確認したい、自社倉庫の改善ポイントの見つけ方
- Vol.3: そもそも倉庫自動化とは?できること・対象業務・3つのタイプを整理 (8月下旬公開予定)