
保管やピッキングだけでなく倉庫全体の出荷能力を向上
殆どの場合、倉庫自動化はピッキング、仕分け、梱包など自動化導入による効果が最も大きいと期待されるプロセスから着手されます。しかし、この自動化導入時に単一のプロセスのことだけに集中してしまうと全体観を見失い、個別最適に偏重してしまう恐れもあります。
倉庫というものを俯瞰して見た時に、最も重要なのは「出荷能力」に他なりません。出荷するということは売上が計上されることを意味するからです。従って現場業務の視点では、どんな荷姿でどの程度の物量が出荷できるのか、という点が重要となります。管理や経営側の視点からは、商品・オーダーあたりの単価や倉庫面積の平米あたり売上なども大切な指標です。
旧来の自動倉庫は、その名の通り「倉庫」であったため、機能の中核的な部分は「保管」にありました。高密度保管が自動倉庫にとって重要な指標の一つであることは間違いありません。これは導入規模にもよりますが、拠点数を増やさずに出荷量を増やすことに繋がるからです。しかし、自動倉庫の導入は億単位の投資になることも多く、その規模の投資を行うのであればそれだけでは十分ではないと私たちラピュタロボティクスは考えています。つまり、高密度保管と高生産性を両立させる、そして自動倉庫がカバーする「保管」「ピッキング」だけを効率化するのではなく、出荷準備の後工程に円滑な連携を行うことで倉庫全体の出荷能力を向上させ、将来更なる悪化が予想される人手不足の中でも、安定して今以上の物量を出荷できる倉庫づくりを目指すべきだと考えています。
”自動倉庫がカバーする「保管」「ピッキング」だけでなく、出荷準備までの円滑な連携により倉庫全体の出荷能力を向上させ、更なる人手不足の中でも安定して今以上の物量を出荷できる倉庫づくり”
ピッキング後のプロセスを出荷方法に合わせてカスタム
ラピュタASRSを「自在型自動倉庫」たらしめているのは、自由自在に組み合わせてレイアウトが行える独自のブロック構造や免震機能に由来するアンカーレス設計だけではありません。ラピュタASRSが高密度保管と高生産性を両立できる理由にもなっている、全フロア全スペースにロボットが直接アクセスできること。これも「自在型自動倉庫」にとって非常に重要な要素です。
ラピュタASRSの中では、高さ方向のスペースを必要としない業界最薄のロボットが縦横無尽に走り回ります。すべての階層のすべてのポイントにロボットが商品を格納したビン(専用コンテナ)を直接搬送あるいは取りに行くことができるというこの設計により、取り回しが早く処理能力を高水準で維持することができます。そしてこれにはもう1つ違った側面があります。つまり、全フロア全スペースにロボットが直接アクセスできるということは、ロボットの制御次第でラピュタASRS内で如何ようにも商品を取り回すことができるということです。更に、そのロボットが走り回るステージとなるラピュタASRSの形状すらも、必要に応じて自由自在な形状にレイアウトすることができるのです。
この特徴を活かして運用が可能になるのが、保管に使用するビンとは別の「出荷用ビン」です。この出荷用ビンを運用することで、ピッキング作業は『保管用ビンからピックした商品を出荷用ビンに移す』作業となり、出荷用ビンの中にはオーダー毎に商品が集められていきます。

そして、オーダー毎の出荷用ビン(オーダービン)をラピュタASRS内でロボットたちが出荷先毎に仕分けをして出庫したり、仕分けるだけでなく順立てを行ったりと、あらゆる取り回しが可能になります。しかしこの機能は、どんな出荷方法が必要かという点から逆算して出荷準備や梱包で何を行うのか、そこに直接連携するラピュタASRSからはどういう形で出庫して連携するのが良いか、という点を定義する必要があります。私たちラピュタロボティクスでは、そうした倉庫全体の視点を持ってお客様と要件定義を行い、詳細を詰めて行きます。
場合によっては従来の自動倉庫同様に、ピッキング時にそのまま出庫し、ラピュタASRSから出庫した後に仕分けと荷合わせを行う方が効率が良いというケースもあれば、上で触れた通りラピュタASRSの中で仕分けと順立てまで行って出庫した方が良いというケースもあります。
倉庫というものは、とかく「労働集約型」等とネガティブな表現をされる傾向にありますが、これはお客様たる各出荷先の要望に丁寧に応じてきた努力の積み重ねです。運用が特殊になってしまうのも、お客様の細やかな要望に応え、その点も含めてお客様から評価をいただいているからです。ラピュタASRSでは、ロボットを自在に制御できる特徴を活かし、その特殊な運用にも対応することができるのです。

全体の効率化は「後工程への円滑な連携」から
製造業には「自分の後の工程のことを考えて仕事をしろ」という考え方がありますが、これはシンプルに全員が自分の後の工程が仕事をしやすいようにしてやれば、全体がより円滑に進んで行くからです。倉庫内作業においても、そして倉庫自動化においてもこれは全く同じで、「後工程との連携をより円滑にするにはどうすべきか」を常にテーマに掲げることが重要で、もっと言えば最終工程である「出荷」をどんな荷姿でどれだけの物量を、どんな形で出荷するのか、という最後の工程を定義して逆算しながら前工程に遡ってプロセス設計を行うのが本来あるべき姿でしょう。
ラピュタASRSは、このように後工程である出荷準備のプロセスに円滑に連携し、出荷準備まで効率的がおこなえるように、出荷準備の業務量を減らしたり梱包時のミス発生を防ぐような運用を実装する等を組み込むことで、倉庫全体の出荷能力を向上させられるよう開発が行われました。今以上に人手不足が悪化すると見込まれる将来でも、今以上の物量を安定的に出荷し続けられる現場、引いては事業成長を支える基盤となる現場を、私たちラピュタロボティクスは目指しています。

ラピュタ製品の実機に触れる
私たちラピュタロボティクスでは、定期的に皆さまに実機に触れていただき、詳細な要件への対応可否などを直接ご質問いただける機会を設けております。弊社オフィス内ショールームや全国出張での実機デモ、そして物流展などの展示会など、お客様の個別デモから各種イベントまで、これらの機会を是非、情報収集やご検討を前に進める機会にご活用ください。