Use Case

京葉流通倉庫

CATEGORY:
物流
SOLUTION:
3PL
KR Overview

小売業を支える流通倉庫が
協働ロボットとのピッキングで生産性を上げる秘訣

物流倉庫の改善を目指して協働ロボットの導入を検討されている企業担当の方々にとって、実際に導入を進めている企業の事例はとても参考になります。実際のAMR導入事例について、各企業の導入担当者にインタビューを行い「AMR導入のホントのところ」をご紹介していきます。


京葉流通倉庫株式会社

京葉流通倉庫株式会社

業種:3PL
スタッフ数:100名/日
AMR導入台数:20台(一部の区画に対して適用。AMRと働いている作業スタッフは8名程度)
AMR稼働日:2020年12月~
導入形態:購入型


ご紹介する導入事例は、京葉流通倉庫。関東一円に多くの物流倉庫をもち、製造業の物流業務から、スーパーやコンビニなどの流通系のロジスティクスまで、幅広い分野のジャンルで3PL(Third Party Logistics サード・パーティ・ロジスティクス)を手掛けています。同社はAMRのほか、計量カートや、電動式移動棚なども複合的に採用しており、積極的にDX推進を行っています。今回お話を聞いたのは、その中心で戦略を統括している、同社執行役員でDX推進室室長の飯塚雄一さん。導入の検討背景から、導入後の現場スタッフとの連携構築まで、AMR導入のリアルな部分を伺いました。

現在協働ロボットを導入し運用している拠点は、主に近隣の大型スーパーなどへ、ペット用品を供給している岩槻倉庫。ラピュタロボティクスの国産ピッキングロボットが20台、2020年の12月から、本格稼働しています。

導入事例インタビュー動画はこちら

Q. 物流ロボット(AMR)導入に至った背景を教えてください。

まず、やはり年々厳しくなる人手不足の問題が一番に挙げられます。この拠点のある埼玉エリアは物流拠点に適しており、競合他社が非常に多いです。その影響で、人材獲得も年々難しくなっていていますが、それでも地場で勝ち抜かねばなりません。省人化、省力化をいち早く進めるためにも、現場の物流機器は率先して導入しようと考えていました。

Q. 導入背景に関して、最低賃金が年々上がっていることはどれほど影響していますか?

物流業界の人手不足は各地でも深刻化していますが、この地域は前述したように激戦区。スタッフは皆、近隣在住で、車で通える方がメインです。埼玉南部の川口市や越谷市などは、ベッドタウンとして東京に通う人も多く人口も多いのですが、国道16号線を境にした北部は人口も減少傾向で、スタッフの確保もより厳しい状況です。そのうえ、周辺には新しく大型倉庫がいくつもできていて、人材獲得コストもどんどん上昇しています。そのため、時給相場が毎月上がっていくようなイメージですね。しかし弊社のような中小企業だと、時給は簡単に上げられないのです。そんな背景から、5年後には働き手がこれ以上確保できないであろうと予測、確保できた少数のスタッフで、どうパフォーマンスを維持するか…を考慮し、現実的な省人化の選択肢としてロボット導入を決断しました。

Q. 導入検討の経緯を教えてください
検討を始めたのは、コロナ禍の前2019年ごろからです。当初はGTP(棚搬送型ロボット)を中心に検討していて、AMRについては情報自体がかなり少なかったです。「AMRというのがあるらしい」というウワサ程度で。
紆余曲折を経て最終的にラピュタロボティクスのAMRに決定したのは、2020年5月で、そこから導入準備を行い、2020年12月から運用がはじまったという流れですね。

GTP参考事例:物流現場の人手不足を解消する「物流ロボット」の正体とは?

Q. そのほかに検討していたベンダーは何社ほどですか?
当初GTPは国内ベンダーのものに絞り込んでいましたが、やはり大型投資となるためコストの問題がありました。導入するためには、倉庫を、一度空っぽにして、専用の棚や電気工事が必要で、さらに柵をつくって、ロボット専用エリアに区切らねばならないのです。こうなると補助金を活用しても、大幅にコストがかさみます。計算上、大幅な人員削減をしても、コスト回収が長期間かかるため、悩みながらもギリギリでキャンセルしました。
その後、別の切り口として、協働ロボットの情報収集を行いました。当時はAMRベンダーといえばほぼ中国製だったのですが、細かいカスタマイズに対応出来ない等大きな制約がありました。我々の希望としては、50Lのオリコンを載せられるものが欲しかったのですが、そもそもカスタマイズに対応しておらず、BtoB向けではありませんでした。そんなとき、ある倉庫の内覧会で、ラピュタロボティクスのAMRに出会い、導入を検討するようになりました。

Q. 最終的に「ラピュタPA-AMR」に決定した導入の理由をお聞かせください
まず、国産のAMRでサイズも大きく、前述した50Lのオリコンを搭載するカスタマイズが可能という点です。実は他のメーカーにもいくつか提案をお願いしたのですが、50Lが乗るという絶対条件に答えてくれたのが、ラピュタロボティクスだけでした。
また、もうひとつが、人とロボットを効率よく動かすためのソフトウェアです。複数のロボット同士が連携する「群制御」など、これまで見たシステムと根本的に考え方が異なっていました。検討を進めた結果、弊社のような中規模倉庫の中で、人と協働して生産性を上げるには、ラピュタロボティクスのソリューションがベストだという結論に至りました。

Q. 事前のシミュレーション(rapyuta.io)で実際に感じたAMR導入のメリットや感想などをお聞かせください
シミュレーションで見たピッキング効率は、1時間あたり130行(※)ほど出ていましたね。
今の現場では、4オーダーのマルチピッキングカートを使ってのピッキングで、早い作業者だと1時間あたり140行をこなす人がいます。その人力の最大生産性とほぼイーブンくらいに、全体生産性の平均が出せるのであれば導入しようと考えていました。逆に、今より生産性が上がらなければ、導入の意味がありません。そのあたりはシミュレーションで事前に近い数値が出てきたことで、導入後も現実的な目標値として捉えることができましたね。

(※)ピッキングを担当するスタッフが一定時間内にピッキングを行う伝票の枚数(行数)のことで、ピッキング効率を表す。出荷データ行数÷ピッキング時間で算出

Q. 実際の導入後、シミュレーションしていた時のイメージと、現実ではどのようなギャップや課題がありましたか?
テスト稼働が2020年12月で、年が明けた1月から本格的に動かしはじめました。導入準備からちょうど半年くらいでのスタートですね。その頃には現場のスタッフもAMRの存在に慣れてきて、ある程度ストレスなく、スムーズにピッキングができる状況にはなりました。
ただ、この岩槻の倉庫は、午前中のピッキング&出荷作業が忙しいのが特徴です。リードタイムがあまりなく、1便は正午には出発するので、100名ほどのスタッフを大量に投入して、一気に作業してしまうのです。こういう時間帯では、いまのところAMRを動かしづらいところがあります。フォークリフトが高速で動いている場所や、人が集中するエリアにはAMRをいれず、午前中動かす場合はピッキングエリアを分けて作業しています。
そのためAMRをメインにした作業は、午後の翌日納品分を中心に使用しています。今のところ急ぎのものは人力でやっていますが、最終的には、午前中も稼働するのが目標ですね。

Q. 稼働後半年経ちますが、現場でのパフォーマンスをどう評価されてますか?
稼働から約半年で、少しずつ効果を実感し始めたところです。
人が慣れたというのもあるし、細かいチューニングが随時施されて、動きもどんどん良くなってきています。その結果数字で見てもAMRの生産性が上がってきていますね。このあたりはまだ半年で、現場でも改善を繰り返している最中ですから、徐々に成果が出てくればと考えています。

Q. 細かいチューニングとはたとえばどのような内容なのでしょうか?
協働作業(ロボットからの指示性能)、渋滞回避、通路での走行スピードなどですね。ナビゲーションも、障害物の認識精度が上がっています。そういったところの積み上げが効いてきています。
要望に対してのアップグレードはこれからも次々と用意しているようなので、さらに生産性が上がっていくのが期待できます。

Q. AMRとの協働作業で生産性を上げるキモは、どのあたりになりそうでしょうか?
理想的には、20台のロボットを、なるべく少ない人数で効率よく動かす、というところですね。エリアごとに人を配置してしまうと、ロボットを入れても生産性の向上は望めません。
実はAMRを運用しながら見えてきたのは、「少なく配置したスタッフを休みなく動かす」というところに運用のコツがあるな、というところでした。
ロボットも人も効率よく動くのがベストです。たとえば、早く終わらせようとおもったら、20台のロボットに、20人いれば、作業としては早く終りますが、そうすると、20人分のコストがかかります。省力化というと、どうしてもロボットを休みなく動かす方向に考えがちですが、狭い倉庫であれば少ない人数で、人を滞留させない運用にシフトすることが生産性アップにつながるんですね。
導入検討をした際に他社製のロボットが、ゾーンピッキングでAMRを動かしていたのですが、これでは生産性がマイナスになると思います。来るか来ないかわからないロボットを人が待受けている…というのは、時間のロスが大きいですよね。

Q. 実際にロボットと働いた現場スタッフの方の感想やご意見をお聞かせください。
ロボットと一緒に働くのに、まずは「存在への慣れ」。がありました。人間は、1方向からしか来ないのですが、ロボットは最短ルートでやってきて、逆方向からもくるので、最初はその動きにびっくりしていましたね(笑)。実際には避けてくれたりして、ぶつかることはないのがわかると徐々に慣れていきました。
同じ職場にAMRがいるんだ、という存在自体の認識には、短時間の作業者さん含め、人数が多いので、全員に認知してもらうのに数ヶ月かかりました。ロボットの動かし方を知り、特性が理解できると、人の動きもスムーズになっていきます。ロボットにどう振る舞えばいいかがわかってくるんですね。

Q. 目下の課題は?
実際のAMRの動き自体は、障害物がなければ非常にスムーズで、最初のシミュレーションの値に、最終的には到達できるだろうと思っていました。ただ、実際の現場では、非常に混み合う時間帯などで、倉庫内の障害物が多くなり、タイムロスを生んでいました。また通路幅は広く、充分すれ違えるのですが、1つの棚に注文が殺到してしまうと、その手前で、待ちが発生します。こうした部分なども、課題は全て吸い上げて改善している最中ですので、解決できれば目標以上にいく可能性もあると思っています。

Q. 実際に運用してきた中で、現在達成しているレベルと、これから達成したい具体的な数値などがあれば合わせて教えてください。
現在1時間当たり平均100行くらいの生産性が出ていますが130行が基準だと考えています。ベンチマークとして見ている、4オーダーのマルチピッキングカート(京葉流通独自開発の半自動化ソリューション)の生産性が平均100行くらいです。

AMRの動きにはまだロスがあると見ています。当初、輸送費の削減のために、積載効率を重視したオーダー割当を行っていたのですが、このバランスを見直すことで、AMRの待ち時間と、導線の最適化ができると思っています。今、まさにラピュタロボティクスさんに改善の作業を進めて頂いています。(注:コンテナへの積載率を上げる行為と動線を短縮する行為はトレードオフの関係になる場合があるため)

<まとめ>
今回の事例は3PLの中でも、小売業の流通を支える中小規模倉庫でした。ときにマンパワーを投入しての大量出荷があり、狭小なロケーションで素早くピッキングすることが必要で、臨機応変な対応を求められる現場です。
また、什器類、人数、フォークリフトとそれぞれが多く稼働し、さらにベルトコンベアラインがぐるりと周囲を回っており地形が複雑な環境でもあります。この岩槻の倉庫はそういった部分で言えば、「日本のスタンダードな流通倉庫」であるとも言えます。
従来、こうした現場ではAMRをアジャストさせて生産効率を高めるのは難しいと言われていましたが、ラピュタロボティクスのソリューションは現場で柔軟に対応し、日々生産性の向上に貢献しています。ラピュタPA-AMRもシステムも、日々現場からのフィードバックを、細かなチューニングに反映させ、さらなる機能の底上げを実現しているのです。

導入事例