「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線
第2回:日本の物流クオリティと世界の物流標準

書籍「ロジスティクス4.0 -物流の創造的革新」(日経文庫)の著者であり、ロジスティクスやサプライチェーン分野の知見が深い小野塚 征志さんに、変わりゆく物流ロボットを取り巻く世界についてお話を伺うインタビュートークの第2弾をお送りします。

・「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線 第1回:ロジスティクス4.0の起源と最新事情

小野塚さんはドイツを本拠地とする、欧州最大の経営戦略コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」のパートナーです。
第2回目となる今回は、ラピュタAMRのような国産のAMRが、世界で活躍できるか、について教えていただきました。

・第6回 もはや自動化&ロボット化は必然の流れに! 物流の新たな世界「ロジスティクス4.0」を読み解く

国産物流ロボットは世界で通用するか?

Q. 日本の倉庫では生産性と効率性を極限まで突き詰めた結果、世界屈指の物流品質を実現していると言われています。そんな日本の物流倉庫で研鑽された協働ロボットのオペレーションシステムや技術は果たして世界で通用するのか否か、率直なところをお聞かせください。

小野塚 日本発の協働ロボットが世界で通用しそうな場面で言えば、まず思いつくのが飲食店ですね。すでに豊田自動織機(TOYOTA L&F)などが、飲食店で実証実験を行っています。

タリーズコーヒーの商品をテーブルまで運ぶ配膳ロボットの実証実験

物流倉庫のAMRと同じテクノロジーで、給仕ができる。今現在、ラピュタAMRは、シンプルに物流分野に限って展開していますが、フードコートでテーブルまで運ぼうと思えばできてしまいます。安全面など細かな調整は必須ですが、必要なノウハウは既にありますし、それほど大きな障壁はないのではないかと考えています。
物流で培った技術が、倉庫の外で活躍する…。これが一番想定される未来です。実はこれができるようになれば、世界への進出がしやすいと思います。

たとえば、新興国の物流センターに限ってしまうと新規の大型倉庫を建てることが多いため、AMRよりも、棚ごと動かせるGTPがいいとなってしまいます。一方で、欧州、米国では物流分野での事業展開の可能性はあるものの、すでにLocus Robotics(ローカス・ロボティクス)など、米国企業が一定のシェアを得てポジショニングしており、それなりにハードルがあります。
その点、飲食店をターゲットにすると、世界中どこでもいけますよね。

再配達は日本だけ!? 海外の物流事情とは

Q. 日本の物流業はクオリティが高いのに、なぜ海外で成功できていないかについては、属人的なプロセスが足かせになって標準化できず、再現性に乏しいからという意見もあります。自動化・標準化すると、利点は減るものの、海外マーケットに進出するチャンスとなるのでしょうか?

小野塚 それは、半分ノーで半分イエスです。ノーの理由は、海外ではそこまで高い物流クオリティを求めてないという背景があるからです。例えば日本の家電物流の現場で、梱包の状態が悪いときは、配送センターでストップがかかります。日本の物流センターには、必ずダンボールのストックがおいてあって、箱をきれいなものにしてから配送するんです。中身がちゃんとしていても、外箱が歪んでいてクレームが入るのは、世界でも日本とシンガポールくらいですよ。
誤出荷率や欠品もしかり。日本はゼロに近いけど、海外では確率が高いです。特に海外は、誤配達や遅延・紛失が多いので、クリックアンドコレクト(店舗で受け取るシステム)が流行っています。顧客が宅配を信用していないし、再配達もしてくれないからです。

クリックアンドコレクトについて

だから、どこまで高度な物流品質が必要かという課題は、海外では非常に悩ましいところです。
「再配達が当たり前」の国は日本しかありません。日本人の品質に対しての価値観の高さは稀有なんです。
例外としては、ヤマト運輸や佐川急便が、海外では「クール便」で成功しています。「ハーゲンダッツ」が普及した国は、クールの性能が問われるという例があります。「アイスがとけたら、店で凍らせればいいじゃん!」という国民性の国もありますが(笑)、やっぱりハーゲンダッツの美味しさが完全に維持されたものを配達できるほうがいいに決まってます。さらに最近ではバイオ医薬品など、高度な温度管理が求められるものも輸送されているので、物流品質は自然と問われることになるかもしれません。
また物流品質が、属人的な技ではなく、ロボットやデジタル的なもので担保されるなら、世界でも受け入れられる可能性はあります。欠品率や誤配達が、システムでチェックされるようになれば、これまでの当たり前だった顧客の感覚自体を覆せるかもしれませんね。

テクノロジーの導入では全体のやり方を変えることが必須

Q. 物流ロボットの分野で、この2年のコロナ禍の影響を受け、大きく変化したところはありますか?

小野塚 AMRもGTPも活躍する場所が、BtoBの卸向けとともに、個人向けのEC用倉庫など小口輸送のところで大きく伸びましたね。この2年で巣ごもり需要が激増して、ECは右肩あがりで、もう5年分くらい普及のペースが加速させてしまった感覚です。ただでさえ人手が不足していたところで、この需要増だと現場がもう、耐えられない。だから「ロボットを導入しよう」となるし、「非接触を導入しよう」となってきます。トラックのバース予約システムの導入もコロナ禍で増えました。紙の伝票のやりとりが減少したことも大きいですね。明確にイノベーションが加速したと思います。国としても、この機に物流DXをあと押ししようとしています。
ただ、注意しなければならないのが、これまでのやり方を維持したままロボットを導入すると、かえって人間が処理することが増え、ただ単に歯を食いしばるだけになる、ということ。進化スピードを上げるとき、全体のやり方を変えることで2歩も3歩も先に進めるのです。



【この連載の記事】
・「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線 第1回:ロジスティクス4.0の起源と最新事情
・「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線 第2回:日本の物流クオリティと世界の物流標準
・「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線 第3回:物流ロボットへの投資判断

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