物流ロボット

「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線第3回:物流ロボットへの投資判断

日付: 30 Aug 2021
カテゴリー: ブログ, 物流ロボット最新トレンド

「ロジスティクス4.0 物流の創造的革新 (日経文庫)」の著者であり、ロジスティクスやサプライチェーン分野の知見が深い小野塚 征志さんに、変わりゆく物流ロボットを取り巻く世界についてお話を伺うインタビュートークの第3弾をお送りします。

・「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線 第1回:ロジスティクス4.0の起源と最新事情
・「ロジスティクス4.0」×協働ロボット最前線 第2回:日本の物流クオリティと世界の物流標準

小野塚さんはドイツを本拠とする、欧州最大の経営戦略コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」のパートナーです。
第3回目となる今回は、投資判断について重要な、中長期的な視点と、ロボットの普及で変わりゆく社会の姿について教えていただきました。

・第6回 もはや自動化&ロボット化は必然の流れに! 物流の新たな世界「ロジスティクス4.0」を読み解く

ロボットへの投資、意外な視点

Q. 協調型ロボットの導入・投資について、「短期での投資回収を前提としないこと」と「導入による波及的効果を評価する」という提言が書籍でもありました。ただ実際の現場ではどうしても「投資回収の期間」を見ることが多く、ロボット導入のROIをどのように考えるべきかと聞かれることも多いと思います。「中長期の視点」をどのようなステップで考えるべきでしょうか?

小野塚 意外と見落としがちなのですが、導入する側は、賃金だけではなく、求人費用などの採用コストも見るべき、ということです。ここが意外に中長期で見ると大きな額になります。当たり前ですが、ロボットだと採用コストはいりません。
もちろん導入時は初期投資が結構かかります。全体設計とか、運用のトライ&エラーで思うような効果出ないなど、ですね。ところが、ひとつ目の拠点で苦労した分、2カ所目、3カ所目は知見がたまっているため、早い段階でスムーズに動き始めるから、導入コストがかなり下がります。そのため、ひとつの場所のROIで判断するのでなく、複数拠点への展開を前提としたROIを考えることも重要です。10の物流センターで導入することを前提にROIを見れば、十分な投資対効果を見込める可能性が大いにあるからです。

「バージョンアップサービス」の効果

Q. 逆に既存の物流ロボットのサービスで、ここが良ければもっと費用対効果があがるのに…というポイントなどはありますか?

小野塚 ユーザー目線で考えると、サブスクリプションモデルの費用形態であっても、バージョンアップがあったらロボット自体を更新できるオプションサービスがほしいですね。通常は、一度バージョン1で導入したら、当然ながらずっと1のままです。これを、月額の範囲内でバージョンを更新してもらえると顧客側にメリットがあります。これはベンダー側にとっても、旧世代のものでのトラブルやクレームも減りますし、どのようにロボットが使われたかデータのフィードバックがあり、次の開発に活かせます。
ラピュタAMRの場合、定期的にではなく、リアルタイムで情報が送られるプラットフォームがすでに稼働しているので、ほかのロボットとも繋がる状況にいち早くもっていけるといいですね。

物流ロボットが普及すると倉庫ビジネスが変わる

Q. ロジスティクス4.0の中では、「物流の装置産業化」のフェーズまでがいったんのゴールだと認識しています。物流倉庫はロボット化していきつつありますが、特に日本の倉庫では、これからどのような形の「装置産業化」が進むとお考えでしょうか。

小野塚 極端に言えばですが、まずオペレーション面では、もともとすべて人が作業していたところが自動倉庫になったり、足元では、フレキシブルに導入が可能なAMRやGTPが動き回っていたりします。その先には人なしで出荷や在庫管理ができるセンターが登場する。このイメージが、ロジスティクス4.0の前半部分です。そのようになった瞬間、例えば、物流センターの立地条件が変わってくると思うんです。

ECの集荷センターがある場所は、都心よりも千葉の市川や埼玉の国道沿いなど、交通の便が比較的良くて、住宅地が近く、主婦層を中心に人を多く集められるところが多いです。それだけに地代や賃料も高い。それを物流コストにのせて提供しているわけです。例えば全作業の95%超をロボットに任せられるようになったら、地代の高い場所にセンターをつくる必要がなくなりますね。極端な話、交通の便はいいけど人はあまり住んでいない場所など、地代がかからないところに作れてしまう。
こうしてセンターを作る場所が変わってくると、デベロッパーのビジネスも変わっていきます。建物を建てて貸すだけでなく、そこにロボットも一緒に置いて貸し出すようになるかもしれない。やがては「貸す」のではなく、「入出荷料をもらう」というビジネスに変貌しているかもしれません。究極的には、物流施設のデベロッパーが倉庫事業者になっていることも考えられるのです。

IT革命同様「普及したものに対するサービス」はロボット社会でも

小野塚 ロジスティクス4.0の前半は、ロボット、自動運転が普及するのですが、テクノロジーが当たり前になった瞬間、その先で戦い方がガラリと転換します。業界の垣根や立地条件が変わってくるのです。

わかりやすい例は、インターネットです。Windows95が発売された1995年は、日本の「インターネット元年」だったと言われています。当時、インターネットがつかえた人は、全体の5%もいませんでした。同じ年の阪神淡路大震災で、携帯電話をもっていた方はほとんどいなかった。でも持っていた方は、固定電話が寸断されていたときに電話がつながって、大活躍したと聞きます。今、大震災があったら、その携帯電話は絶対つながらないですよね。当たり前のように普及したものが、今度は真逆の立場になっているんです。
2005年になってインターネットの利用率が7割になった。するとこの後多くの通信サービスが始まります。iPhoneが日本で売り出されたのが2008年。その後に普及するのが、Twitter、Facebook、LINE、インスタといったSNSです。インターネットの普及によりスマホが登場し、スマホの利用を前提としたビジネスが広がったわけです。

そう考えると、物流のロボティクス化というのも、同じような展開が想像できます。
これから5~10年は、ロボット自体がどんどん普及するステージ。徐々に装置産業化していくプロセスです。2030年からの10年は、ロボットがたくさんあることが前提のビジネスが間違いなく広がります。「複数の規格や役割のロボットを同時にコントロールしますよ」などのソリューションは、まさにその最たるものになるでしょう。

インターネットでも、実際に便利さを享受できるようになったのは、2005年以前ではなく、以降なんです。光ファイバー網をひいて、メールが使える便利さが広がる一方で、一部ではFAXを使っているという世界が今でもあります。とはいえ、今はスマホがないと待ち合わせができないどころか、新型コロナウイルスのワクチンすらもLINEを使って予約する。こんなことは10年前には考えられませんでした。

同様に、物流でも変化が実感できるようになるのは、2030年以降。そこから第2ステージがはじまる、というのが私の認識です。

2030年までは、再配達とかは変わらないけれど、それ以降は、ドローン配送が当たり前になり、家はもちろん、キャンプ場にも食材を直送してくれるような世の中がやってくるんじゃないでしょうか。


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