Use Case

株式会社Rise UP

CATEGORY:
物流
SOLUTION:
自社物流

ロボットとの協働作業で「日本一働きやすい倉庫」を目指す!
多品種&多品目の倉庫を支える、AMR+人のハイブリッド運用

物流倉庫の改善を目指して協働ロボットの導入を検討されている企業担当の方々にとって、実際に導入を進めている企業の事例はとても参考になります。ここでは実際のラピュタAMR導入事例について、インタビューを交えて「AMR導入のホントのところ」をご紹介していきます。


株式会社Rise UP
ロジスティクス千葉第1センター

業種:EC事業・卸事業
AMR導入台数:15台
AMR稼働日:2023年1月~


今回ご紹介するのは、主にコンタクトレンズの通販や卸を手掛ける、株式会社Rise UPの物流センターで「ラピュタ PA-AMR」を導入した事例です。
カラーコンタクトレンズや、クリアコンタクトレンズを小売店に卸すBtoB事業では、お客様への安定供給が事業継続の重要なポイントとなるため、常に4万SKUもの品目とロットを保持しています。2年半前に立ち上がったばかりのこのセンターでは、WMSとハンディターミナルを使った人力でのマルチカートピッキングを行っていました。
ただ、近年の採用難で採用率がスタート時の50%にまで落ち込み、安定的な事業継続の面で大きな課題を抱えていました。
そこで15台のAMR導入に踏み切り、既存のカートピッキングも稼働させながら、短期間で高い生産性と効率性の向上を実現しています。
そこで、検討段階から導入まで、現場で陣頭指揮にあたった担当者の方に、ラピュタPA-AMR導入の進め方や、導入してわかった運用のヒントなどを、Q&A形式でお伺いしました。

<お話を伺った方>
西原良和さん(写真上)/株式会社Rise UP ロジスティクス本部 執行役員
竹下佳輝さん(写真下)/株式会社Rise UP ロジスティクス本部 AMR導入プロジェクトリーダー


INDEX

  • 物流センターの特徴
  • 自動化機器を検討した背景
  • ラピュタPA-AMRを導入した理由と経緯
  • 従来のピッキング方式
  • 導入時にリクエストした独自の希望要件
  • 現場での反応
  • スタッフトレーニングについて
  • 運用の中で行った独自の工夫
  • AMR導入後の生産性を導入前と比較
  • 導入前後でのコスト感
  • ラピュタのサポート体制について
  • AMR導入で見えた新たな気づき
  • AMRが活躍できそうな倉庫環境とは

Q.こちらのセンターでの主要な取り扱い品目と、運用の特徴があれば教えてください。

西原さん:小売り向けのBtoB業務がメインの倉庫となります。取り扱い品目としてはコンタクトレンズ並びにコンタクトケア商品がメインです。
ブランド、カラー、度数で1SKUとなるため、センター全体では4万SKUと非常に多く、ここからさらにロットが多種に渡っており、先入先出の徹底も必要となります。保管方法は効率重視のフリーロケーションで運用しています。

Q.御社がロジスティクス業務で自動化機器を導入しようと考えた背景を教えてください

西原さん:2年半前にこちらのセンターが立ち上がり、WMSを使ってのハンディピッキングを開始し、生産性と品質は高水準で担保できていました。しかし我々は物流会社ではなく、あくまで事業会社ですので、「安定供給」こそがお客様へのサービスを維持し、ひいては事業継続をしていくうえでの重要なポイントでした。
特に、この千葉のセンター周辺での採用率は、拠点を立ち上げた2年半前より50%ほど落ちている状況から、今後の見通しとしても、省人化や省力化が、サービス維持のためにも必要だと考えていました。これが導入決断の大きなきっかけでした。
ハンディピッキングでも生産性が高い現場ではあったものの、将来的に作業の属人性をなくす動きを、組織課題として実施する必要があったのです。

Q.課題を解決するための選択肢はどのようなものがあったのでしょうか。また最終的にマストとなった要件をお聞かせください

西原さん:もっと大掛かりな完全自動倉庫も当初は検討しましたが、商品が細かい分、取り扱いのSKUやスキャンの回数などを考えると「人でピッキングするほうが早い」という結論にたどり着きました。我々の目的との兼ね合いを考えても、完全自動倉庫では、商材とマッチせず、生産性も悪化するという見通しだったのです。
特に医療機器の特性上、ロット番号のトレーサビリティを確保する必要です。そのロットを含んだ2次元コードのスキャンが必要で、スキャンのレスポンスや精度など、特殊な運用や処理が必要でした。

Q.最終的にラピュタロボティクス社のAMRに決定した経緯と、決定理由をお聞かせください

西原さん:自動倉庫以外での選択肢を考えていたときに、国際物流展などで各社のAMRを実際に触れてみたら、これはかなりフィットするんじゃないかという手ごたえをもちました。そのあとに実際のトライアルなども行うなかで、AMRであれば現状フローの大幅な変更もなく、作業者にもより早くフィットし、大きなトラブルなども回避できるとわかってきました。もともと、ハンディピッキングでもマルチオーダーをしていたので生産性はかなり高いものでしたが、AMRを採用することでより高い生産性を生み出すことが見えてきました。
実は当初の印象は、どの会社のAMRも大差がないように見えていましたが、ラピュタにお話を深く聞いていく中で、見えてきた違いがありました。海外から輸入したAMRのシステムを、決まったやり方&ロジックで…というやり方だと、現場で起こる課題に柔軟に対応することができませんよね。ラピュタさんは、実際に国内の現場で導入しながら生まれた課題を着実に解決し、そこで培われた独自のロジックをAMRの開発に生かしていました。「現場のリアルな生産性向上」という観点で、強みを感じました。
もうひとつは、ラピュタさんの「スピード感」を大事にして情熱をもって仕事をする企業文化が、当社とフィーリングが合っていた、という点です。同じ目的を共有し、一緒に課題を解決し、ともに成長し、世界最高の生産性を共に目指しましょう! と高い目標で握り合えたことが一番の理由かもしれません。

Q.従来のセンターでのピッキング方式はどのようなものでしたか?

竹下さん:上位のWMSと連動したハンディターミナルをつかったマルチオーダーピッキングです。

Q.AMR導入準備の中で、御社独自の開発要件などがあればお聞かせください。

竹下さん:弊社の商品特性上、4万SKUと多品種で、出荷もそれに伴って細かいロットで出荷します。そのためテスト時には、データ行数がとても多くなる日があると、出荷データ量が膨大になり、AMR側に連携ができないという問題が見られました。ラピュタさんもこんなにデータ多い事例が初めて、ということだったのですが、すぐに改修に着手していただき、1ヶ月ほどで解決しました。現在では繁忙期のデータ量にも対応できるようにバージョンアップされ、問題なく連携ができるようになっています。
これに関連して、WMS側ではラピュタのダッシュボードへ連携するために、API機能の実装と連携データを決定する画面追加を行いました。逆にラピュタのシステム側では、弊社で導入している、QRコード内部のデータをもとに商品判別する仕組みを受け入れるために、個別の改修をしてもらいました。

Q.AMRの事前準備から現場受け入れでの結果、現場スタッフの方の声や感想などあればお聞かせください。

竹下さん:最初は皆が「なんかきたぞ」と身構えていましたね(笑)。これまでハンディでのカートピッキングが当たりまえだった環境なので、びっくりするのは当然でしたね。でもいざ動かしてみれば、これまで通りの4トートでのピッキング作業をそのまま引き継ぐなど、ハンディと比べて大きくフローを変えることがないし、操作も簡単。違和感なく受け入れられた印象ですね。
また稼働前の事前準備では、ハンディ運用時と変わらない棚間1200mmでの運用を想定していました。しかし実際に複数台を走らせてみると、一部の箇所ですれ違うと少し狭い部分も散見されました。そこで、ラピュタPA-AMRの1台が走行できる最低限の幅が900mmであることから、AMR同士ですれ違えるよう、棚間1600mmへとレイアウトの微調整をおこないました。
また運用面では、週明けに注文が多くなるなど、曜日によって出荷ピース数の波動が大きくなります。そのため、AMRの稼働と並行して、従来のハンディを使ったピッキングもできるようなオペレーションを採用しています。

Q.現場スタッフへのトレーニングが、どのように行われたかをお聞かせください

竹下さん:最初はピッキングスタッフを対象にして、ラピュタのカスタマーサクセス(CS)チームに、一連の動作を初期トレーニングしていただきました。その後は、1日当たりのAMRが稼働するオーダー量を制限しながらOJTを行って作業者も増やしていき、2か月ほどですべての現場スタッフが協働作業を実地で体験しました。こうしてAMRが担当するオーダー量を少しずつ増やしていきました。
このセンターは派遣スタッフの方も多い現場なのですが、初めて来られる方でも、操作や運用フローが難しくないので、慣れも早かったと思います。また以前はハンディをもって庫内をぐるぐるとまわって作業していたのですが、いまはAMRが動いているところを渡り歩くというイメージで動いています。そのため、歩行距離もかなり削減されて、1日の疲労感もかなり違ってきています。
あわせて、カート作業では自分のもったオーダーが終わらないと抜け出せませんでした。そのためトイレ休憩や緊急作業などの「途中抜け」がやりにくかったのですが、今はAMRが作業進捗や抜け漏れを管理しているから、気軽に途中抜けや途中参加がしやすいです。台車とハンディから解放された身軽さも含め、作業者としては精神的に楽になりました。

Q.導入後、運用の中で取り入れた現場独自の工夫などがあればお聞かせください。

竹下さん:最近始めたことなんですが、ピッキング前にスタッフのIDをAMRにかざして、個人認証をしています。最初は無駄なワンアクションかもしれないなと思ったのですが、始めてみると、誰がいつ何をやったかの細かいデータが取れるようになりました。管理者としては、想定以上の動きをしているスタッフを評価できますし、逆にうまくいっていないスタッフを、明確な改善点をもってフォローアップできます。しかも難しい分析など必要なく、レポート結果が当日終業時刻には出て、現場を運用しているメンバーがチェックして、翌日の作業前には担当スタッフにアプローチできるので、簡単でスピーディなんですね。この“難しくないデータドリブン”は、かなり効果的だなと思いました。

Q.事前シミュレーションと、AMR導入後の生産性を比較して、現在どのような違いがでていますでしょうか

竹下さん:たとえば、ピッキングが早いときと遅いときがありました。その違いがなぜ生まれているのか、AMRの動きやさまざまなデータを照らし合わせて分析すると、どこで詰まっているのが明確にわかるようになりました。こういった細かな改善点を見つけてデータで分析できるから、小規模単位での改善に着手しやすくなりました。
数字の話をすると、実は事前に想定していた理想値は、とっくに超えているんです。今は、さらに先へと行くために、大きめの目標を掲げていて、そこに向けて常に分析と改善を続けています。

Q.率直に、「導入のスムーズさ」と事業にかかる「コスト感」の違いはすでに感じていますか?

竹下さん:導入はとてもスムーズに進められたと思います。もともとあったWMSとの連動を調整する段階で少しハードルはあったかと思いますが、CSや導入担当の方が常に伴走して前向きにさせてくれたので、私達も受け身にならず、常にやりたいことを見据えて取り組むことができました。導入スケジュールも遅れることなく、費用対効果も早期に出たので、結果としてコスパはよかったと感じています。

西原さん:導入して2ヶ月の安定稼働するまでの間、AMRの待ち時間を変更するなど、随時ロジックをいじってもらっています。私達は、「瞬間最大風速」の生産性よりも、どれだけAMRを使って出荷できたのかというスループットを重視して見ていたので、総出荷量が徐々に増やしていけたというところが大きかったです。合わせて、AMR投入の現場ではめずらしい形かとは思いますが、我々はAMRとハンディピッキングを共存させたまま動かしています。この形にたどり着くまでが試行錯誤でしたが、結果としてこれをうまくなじませることができたこともあって、より高い費用対効果が出ているのだと思います。

Q.導入後にカスタマーサクセスレポートや、データダッシュボードなどで得た「データの見える化」は、どの程度効果がありましたか?

西原さん:まさにAMRとハンディピッキングの共存では、AMRに関するデータが見える化されている効果が大きかったです。ダッシュボードのデータは日々見ているから、課題の発見が早く、改善も早いです。またCSによるレポートも精緻な改善に役立ちました。我々が見ている数字と、ラピュタのCSスタッフが見ている数字は、当然視点が違っています。これを週次ですり合わせてディスカッションし、目指したい部分をお互いに明確な数字を見ながら議論できたことも、成果につながっている理由だと思います。

Q.ラピュタ側からどのようなサポートがあったかをお聞かせください

竹下さん:要望はたくさん言わせていただきましたが、いつも建設的に会話ができたのがとてもよかったです。システム改修の規模にもよりますが、翌週や翌々週の定例までにレスポンスはもらえていました。
また、AMRが1台だけ止まってしまった、など比較的軽微なトラブル対応でもCSの方が来てくれて対応していただけるなど、素早い対応も大変助かっています。
我々は生産性に関しては、目標達成をしたらゴールではなく、さらに一歩上を目指しているので、改善は常にやっている状態です。導入から序盤の2ヶ月ベタ付き常駐していただいたのもありがたかったですね。

Q.AMRを導入したことで、新しい気づきはありましたか?

西原さん:私が今掲げているスローガンは「日本一働きやすい倉庫を実現する」です。これ、みんなの前で言うの、けっこう恥ずかしいんですよ(笑)。それでもあえて言い続けていますし、AMRはそのための武器でもあるのだということがわかりました。
AMRがあることで生産性が向上すれば、より残業を少なくできてワークライフバランスを改善できたり、体力的にも余力を持って働けたりします。その結果「ここは働きやすいよね」ということにつながり、より多くの新しい方々に働く場として選んでいただける可能性は高くなると思うんです。

これは私自身の考えですが、倉庫で梱包してお客様に届けるというのは、お送りする商品に「現場の活気やスタッフの心の状態もいっしょに乗る」と考えています。AMRを使って働きやすい環境を作ることは、私達一人ひとりがお客様にちゃんと向かい合うために必要な「心の余裕」を生むことにつながります。我々がAMRとの協働をフィットさせたことで、この考え方が証明できるような気がしています。

Q.導入を経験した立場から見て、
「AMRが活躍できると考えられる倉庫環境」のポイントを3つ教えてください。

ポイント1.協働ロボットは、完全無人ではないから人も一緒に成長しなければならない。柔軟性をもってAMRと協働することで、人間側に成長機会を与えたいと考えているような倉庫

ポイント2.熟練者と新規の人とのギャップが大きい倉庫。AMRがハブ的な動きをするから、知識や経験のギャップがすぐに埋まる。特に商品や棚を覚えないとピッキングができないような倉庫に最適。

ポイント3.完全にアナログな倉庫よりは、すでに第1ステップとしてハンディやWMSは導入していて、第2ステップとしてAMRを考えているような倉庫。ある程度基本の運用がシステム化されつつあるところでは、スタッフの受入速度も含めて、早期に効果が出やすそう。

導入事例