Use Case

オークマ株式会社

CATEGORY:
物流
SOLUTION:
自社物流
オークマ株式会社

効率と同時に製品クオリティを守る製造業の「パーツピッキング」で「誰もが即戦力」の理想を実現した、AMR+人の協働作業

物流倉庫の改善を目指して協働ロボットの導入を検討されている企業担当の方々にとって、実際に導入を進めている企業の事例はとても参考になります。ここでは実際のラピュタPA-AMR導入事例について、インタビューを交えて「AMR導入のホントのところ」をご紹介していきます。


オークマ株式会社 パーツセンター

業種:製造業
AMR導入台数:24台
AMR稼働日:2023年5月~


今回AMRを導入した倉庫は、愛知県内にある、産業用工作機械のリーディングカンパニーであるオークマ株式会社のパーツセンター。複合加工機や旋盤、マシニングセンタなどの自社製品の組み立て製造に必要なパーツを扱う倉庫に、AMRを導入しています。
倉庫では、精密機器の組み立てに必要な約11,000個のアイテムを、製造ラインからのリクエストに応じて、ピッキングしてデリバリーしており、AMRは約650坪ほどの区画で活躍しています。
精密機械製造の部品供給を担う倉庫なので、配送時に傷が入らないように品質保持することはもちろん、完成品の信用失墜につながる部品の取り違えなどが許されない現場です。また、これまで紙ベースでの部品出荷では、経験豊富なスタッフが作業することが作業効率アップにつながっていましたが、昨今の人手不足でその確保も容易ではありません。そのため現在は、滞在期間が限られている海外からの実習生がスタッフの中心ですが、教育期間をいかに短くし、ミスを減らし、いかに即戦力化していくかが、クリアすべき課題でした。
そんな物流現場で24台のAMRを導入し、導入わずか数週間で高い生産性を実現しています。
今回は、検討段階から現場で導入に関わった担当者の方に、ラピュタPA-AMRの導入を、製造業の部品共有の現場でどのように進めていったか、その背景や気づきのポイントなどをQ&Aの形でお伺いしました。

<お話を伺った方>
加納 安城さん/オークマ株式会社 生産・物流管理部 物流統括センター

INDEX

  • 物流センターの特徴
  • 自動化機器を検討した背景
  • ラピュタPA-AMRを導入した理由と経緯
  • 従来のピッキング方式
  • 導入時にリクエストした独自の希望要件
  • 現場での反応
  • スタッフトレーニングについて
  • 運用の中で行った独自の工夫
  • AMR導入後の生産性を導入前と比較
  • 導入前後でのコスト感
  • ラピュタのサポート体制について
  • 今後AMRに期待する点

Q.こちらのセンターでの主要な取り扱い品目と、運用の特徴があれば教えてください。

こちらの倉庫では、弊社の工場で工作機械の完成品を組み立てるために必要な、おもに精密部品の供給を行っています。ストックしてあるのは、自分たちで鉄から削って製品にした自社加工品と、外部サプライヤーから供給された仕入品の大きくふたつの系統があります。製造計画に基づいて、ラインで必要とされる部品をピッキングし、製品を組み立てる工場へ送り込んでいます。

Q.御社がロジスティクス業務で自動化機器を導入しようと考えた背景を教えてください

鮮明になってきた労働人口の減少に備え、業務を効率化していくこと、というところは大きな課題でした。
我々の業務では、昭和のころからほぼずっと、紙ベースの「払い出しリスト」を使ってピッキングを行っていました。この作業は、棚のレイアウトを覚えたりどこに目的のパーツが格納されているかを知っておいたりすることが必要で、一定の経験が必要となります。そのため、労働人口が減る中で、即戦力のスタッフを育てにくいというデメリットがあります。またある一定のレベルに達するまではどうしてもピッキングミスが発生するのですが、ピッキング履歴も残せなかったので、ミスの傾向や原因を探り、改善を行うこともできませんでした。

また、現在のピッキングスタッフは、海外実習生で100%構成しています。彼女たちは日本に1年しかいられないので、ピッキングについての勉強時間が短ければ短いほど、実務ができる時間がより長くなります。そういった背景もあり、自動化機器の導入を模索していました。

Q.課題を解決するための選択肢はどのようなものがあったのでしょうか。また最終的にマストとなった要件をお聞かせください

選択肢としては、まずは自動倉庫を中心に考えていました。ただ、設置された棚の体系からすると、自動倉庫はマッチしないと感じていました。実は本社には以前、他メーカーの自動倉庫があったのですが、オリコンが目的の棚から帰ってくるまで、待ち時間のロスがかなりありました。また在庫の細かい管理ができないのも問題でした。例えば組み立てる製品の仕様が変わることがありますが、古い仕様の部品が同じコンテナに残っていても、取り出して入れ替えるなどの管理がしにくかったのです。人の目で見ながら出し入れすることが難しくなった結果、型落ちの部品のコンテナはそのままで放置せざるを得ないこともあり、“死んでいるスペース”が発生し、無駄が多かったのです。

そういった意味で、こちらの倉庫で導入する自動化機器のマスト要件としては、全自動ではなく、機械と人とが半々くらいで分担して仕事できるのがいいかな、とは考えていました。
あわせて労働人口の減少を補うための省人化の実現、作業の簡素化と導入後のランニングコストの抑制というところも重要な要素でした。 こうした必要な条件が見えてきた段階で、人の目と判断力を活かしながら、仕事を単純作業にしてくれる「協働ロボット」としてAMRを知り、具体的な導入検討を進めていきました。

Q.最終的にラピュタロボティクス社のAMRに決定した経緯と、決定理由をお聞かせください

実はきっかけとしては、ラピュタさんに直接お話を伺って、はじめてAMRというものを知りました。その後、実際のAMRのデモも静岡にある倉庫で見せていただきましたが、その時点ではまだ半信半疑でした。しかしその後,、2022年に開催された国際物流展で、さまざまな他社製AMRと比較してみた結果、「ラピュタPA-AMR」の動きが、ダントツに滑らかでスムーズであることがわかりました。このAMRがかなり高い精度の制御であることを感じましたね。

また、物理的なガイドが必要なく、マッピングデータだけで制御できることも判断材料になりました。既存のレイアウトや棚を大きく動かす必要がほとんどなく、しかも製品がアップデートしても対応できるので便利だなと思いました。

料金形態もサブスクでの導入が可能でした。初期投資を抑えてサブスクで利用できるのは、会社に承認を得る段階でも、投資効率的にも非常にありがたいものでしたね。

Q.従来のセンターでのピッキング方式はどのようなものでしたか?

紙で出力した「払い出しリスト」を使って、カートによるマルチピッキングを行っていました。効率よく業務を進めるには、棚のレイアウトを覚えたりどこに目的のパーツが格納されているかを知っておいたりすることが必要で、一定の経験が必要となります。

Q.AMR導入準備の中で、御社独自の開発要件などがあればお聞かせください。

AMR導入の検討開始から実際に導入を決定するまでは約半年ほどかけました。独自のカスタム要件などは特にはありませんでしたが、AMRが動きやすい通路幅などの微調整を、ラピュタさんと連携しながら行いました。そのほかは、オペレーションやロケーションの変更・調整などは、特に行っていません。WMSとのデータ連携も問題なく、スムーズに進みました。

Q.AMRの現場受け入れでの結果や、現場スタッフの方の声や感想などあればお聞かせください。

はじめはこれまでと作業方法が変わることにやや戸惑っていましたが、その日のうちに違和感はなくなっていたようでした。特にデジタルネイティブ世代の若い実習生なので、タッチパネルの操作などは違和感なく受け入れていた印象です。その後もスタッフどうしで教えあうなどする姿も見られ、吸収はかなり早かったと思います。

Q.現場スタッフへのトレーニングが、どのように行われたかをお聞かせください

スタッフが全員海外実習生なので、事前にラピュタさんからいただいた取扱説明書を、弊社のスタッフが母国語に翻訳し配布して、実地のOJTにてトレーニングを実施しました。

Q.導入後、運用の中で取り入れた現場独自の工夫などがあればお聞かせください。

もともとの棚の配置が、紙ベースのピッキングで効率が良くなるように並べていましたので、製品ごとによく使う部品を近い位置で固めるなどの配置をしていました。ただし、その状態でAMRが入ると、ピッキングの順番がかぶってしまうことが多く、混雑する箇所もちらほら出てきました。
そこで、ロボットの走行方向を一方通行にするよう、走行データを分析してプログラムの改善を行いました。同じ個所に左右からAMRが入って身動きが取れなくなることを防ぎ、一列に並んだとしても、先頭から処理していくようにすれば、次々と仕事がはけていきます。例えるなら、「割り込み禁止のスマートなビュッフェ形式」にして詰まりを解消したという感じですね(笑)。
また、PGS(ピッキングガイドシステム:次のピッキング先をAMRが指定する機能)を使いながらも、現在地の近くにピッキング対象がある場合などは、人の判断で先にピッキングしても良いことにしています。ルールをあまりAMR中心に固めすぎず、人の判断力も同時に生かすことで、生産性がより高くなってきていると思います。

Q.事前シミュレーションと、AMR導入後の生産性を比較して、現在どのような違いがでていますでしょうか

事前シミュレーションと比較しても、明らかに良い方向に効果が出ています。サブスクで24台を導入しましたが、稼働後1週間くらいから、早くも成果が出始めました。その時点では1時間あたり500件のピッキング数でしたが、現在は時間あたり800件です。
またAMRを導入した当時は22人のスタッフが作業していました。現在では、仕事量によって増減しますが、導入後は平均で9人ほどになりました。その分、別の手がかかる部署にまわってもらうことができるなど、副次的なメリットもでています。

Q.率直に、導入の前後で事業にかかる「コスト感」の違いはすでに感じていますか?

作業者を他の現場での業務にまわせるほどの作業効率アップで、導入前の予想よりもすでに上回っています。現在24台のAMRを導入していますが、サブスクが魅力的なのは、台数の微調整がしやすく、波動に応じたコスト抑制をやりやすいところなので、需要に応じてAMRの増減が気軽にできますね。
また、トレーニング時間が短縮できたので、新規で雇用したスタッフが即戦力で働けますし、ピッキングミスが従来比で90%も削減できました。ダッシュボードを使用してピッキング状況のリアルタイムで把握できるので、現場の即応力が格段にあがっています。またデータをモニタリングすることで、作業者個々の作業件数などのスキル把握が容易になり、適材適所の人員配置も可能になりました。
もうひとつAMRと人が協働できるメリットは、これまで作業が詰まる原因でもあった「例外処理」を、その日のうちに問題をすべて片付けられることです。例外処理は人の判断力が必要で、完全オートだとできない処理なので、AMRとの協働ならではの成果だと考えています。

Q.ラピュタ側からどのようなサポートがあったかをお聞かせください

導入サポートの担当からは、現場の状況にあわせて、多くのアドバイスをいただきました。例えば稼働前には、棚の配置で1列の中で数か所隙間を開けるとAMRが動きやすいことや、稼働後には、AMRの走行データを基に、AMRが混みあってしまう場所などのレポートを定期的に連絡してもらうなどです。
稼働後はアドバイスとともに、弊社側の改善要望なども出てきたので、毎週の定例ミーティングですり合わせをし、次週のミーティングでラピュタさんからの改善報告をフィードバックしてもらうなど、細かな改善を続けています。こちらからの要望はラピュタさんには100%聞いてもらっているのでありがたいですね。

Q.ラピュタAMRの導入プロジェクト全体のスムーズさは、結果的にいかがでしたでしょうか

導入については事前の打ち合わせが週に1度の頻度でリモート会議にて開催していましたので、現状把握や課題解決が週単位で管理できました。テストを経て稼働、運用まではかなりスムーズだったとおもいます。また動き始めてからも、軽微な仕様変更には迅速に対応してもらえるため、非常に助かりました。

Q.今後AMRに期待したい部分や、要望などがあればお聞かせください。

AMRにオプションで付けられる作業台がほしいなと感じています。
実は上下2段あるAMRの棚のうち、上の段を作業台として使っています。組み合った部品を棚から出したあとに分割する作業や、傷がつかないようにその場で梱包してラベリングまで行っています。製品組み立ての際に部品を取り違えて組み込んで、そのままお客様に納品すれば、製品への信用が失墜します。ラベリングはそのために欠かせない作業でもあります。
こうした背景から、AMRにはどうしても作業台が必要でした。現在はオリコンを2つ積めるところを1つにして作業台とし、マルチピッキングではなくシングルピッキングで動かしています。
もちろん効率を考えればマルチピッキングなので、ラピュタさんからも強くおすすめしてもらい、いっときは議論になりました。ただ製造業の部品供給は、ここから発送したら終わりではなく、ここから新しい製品の一部となっていく「スタート地点」です。そのため、ここでは効率よりも品質面を重視した運用で、作業台+シングルピッキングとさせてもらい、シングルでも最大効率が見込める体制で動かしています。
それでも、データを見る限り、まだこの倉庫内でもさらなる効率化が見込める余地があって、現在もAMRを10台ほどの追加しての協働エリア拡張を考えています。

導入事例