フォークリフトが行き交う物流センターでも安全に稼働
ラピュタPA-AMR導入で効率化を実現した
食品卸物流センターのピッキング
物流センターの改善を目指して協働ロボットの導入を検討されている企業担当の方々にとって、実際に導入を進めている企業の事例はとても参考になります。ここでは実際のラピュタPA-AMR導入事例について、インタビューを交えて「ラピュタPA-AMR導入のホントのところ」をご紹介していきます。
国分関信越株式会社
茨城総合センター
業種:食品卸売業
AMR導入台数:10台
AMR稼働日:2023年1月~
今回ラピュタPA-AMRを導入した物流センターは、食品、酒類、菓子など約1万アイテムを扱う国分関信越株式会社の茨城総合センターです。2015年8月に稼働した同センターでは、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯の商品を取扱っており、ラピュタPA-AMRは4200坪の常温センターの一画で活躍しています。大手スーパーから、地元の酒販店まで、多様な業態のお客様と取引を行っていますが、取引先の納品形態・リードタイムが統一されていないため、複雑で自動化の難易度が高い現場です。合わせて需要と供給のラグをなくし、需要に合わせた人員配置を行うこともクリアすべき課題でした。
そのような中で10台のラピュタPA-AMRを導入し、さまざまな運用改善を重ねながら、導入から8カ月経過した今、高いパフォーマンスを発揮しています。
今回は、検討段階から現場で導入に関わったお二人の担当者の方に、ラピュタPA-AMRの導入をどのように進めていったか、その背景や気づきのポイントなどをQ&Aの形でお伺いしました。
INDEX
- 物流センターの特徴
- 物流ロボット(ラピュタPA-AMR)を検討した背景
- ラピュタPA-AMRを導入した理由と経緯
- 従来のピッキング方式
- 導入時にリクエストした独自の希望要件
- ラピュタPA-AMR導入で行った現場での変更・調整
- WMSとのシステム連携について
- 現場での反応
- スタッフトレーニングについて
- 運用の中で行った独自の工夫
- ラピュタPA-AMR導入後の生産性を導入前と比較
- ラピュタのサポート体制
- 運用で感じたAMRの課題点
- ”AMRが活躍できる倉庫環境”3つのポイント
- 別拠点などでのラピュタPA-AMRの導入拡大について
Q.こちらのセンターでの主要な取り扱い品目と、運用の特徴があれば教えてください。
こちらの物流センターは、2015年8月に稼働した、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯の商品を取扱う食品卸売業の物流センターです。センター全体の面積が約6000坪あるなかで、ラピュタPA-AMRがカバーするのは常温センター4200坪の中で約550坪を占める「バラエリア」です。常温センターでの取扱品目は、食品、酒類、菓子など約1万アイテムほどで、大手スーパーから、地元の酒販店まで、複数の業態のお客様へ納品を行っております。
Q.御社がロジスティクス業務で自動化機器を導入しようと考えた背景を教えてください
業界全体での人手不足が問題となっていますが、物流センターがあるこの石岡周辺の地域でも、人手不足は大きく進行しており、2019年頃からは、すでに既存業務にも支障をきたし始めていました。そのような社会情勢の中でも物流業務は維持継続しなければなりません。そこで、今後の省人化、省力化に向けてのアクションをはじめ、機械化、自動化といった部分がどのように弊社の業務とマッチするのかを考え始めたのが、導入のきっかけでした。
Q.課題を解決するための選択肢はどのようなものがあったのでしょうか。また最終的にマストとなった要件をお聞かせください
卸売業における、物流業務の維持・継続という観点で自動化の検討を始めた当初は、自動倉庫のような大型のソリューションの検討を行いました。しかし、自動倉庫は数十億円という導入費用がかかり、また既に稼働している物流センターが多く機械設置のために長期間業務を止めることになるため、大型の設備導入は難しいという結論に至りました。
また弊社の場合は、取扱アイテムや得意先の変更が多く、拠点の統廃合も頻繁に起こるため、移設が難しい大型の固定設備を導入するのが難しかったという要因もあります。そのため「増設しやすく、移設しやすい」という要件も必要でした。
Q.省力化に必要な要件が見えてきた段階で、ラピュタPA-AMRを導入するに至った経緯を教えてください。
物流センターでのピッキング作業の時間を計測すると、歩く時間が全体の半分を占めています。そのため自動化で検討すべきポイントは、歩行時間をいかに少なくして効率化ができるソリューションであるか、という点でした。こちらの物流センターでは、多様な業態のお客様へ、それぞれの細かな注文に応じて出荷をしていますので、まとまった「ケース品」よりも「バラ」での注文が多いのが特徴です。分析すると、このバラの注文に対するピッキングにかなりの人員と時間がかかっているという現状があり、同時にその分の歩行時間と負荷がかかっていました。そうなると、やはりAMRを使った協働の形を選ぶのが必然、という流れでした。
もうひとつのポイントは、ラピュタPA-AMRはどんな方が扱っても短いトレーニングですぐに使えるようになる、という点です。人手不足という状況下では、シルバー人材や外国人の方なども含め、多様な人材を採用する必要があります。さらに短期で実用化できるよう、教育期間も短縮せねばなりません。ラピュタPA-AMRなら操作が簡単で習熟時間も短くて済むということも重要な点でした。
Q.最終的にラピュタロボティクス社のAMRに決定した経緯と、決定理由をお聞かせください
2019年当時に、国内でAMRを導入できるベンダーは3社ほどでした。いくつか情報を集めていましたが、調べるうちに我々の業態がBtoBなので、50Lの折り畳みコンテナ(オリコン)を搭載できるスペックをもったAMRが必要であるということがポイントになりました。当時はBtoCのEC向け倉庫をターゲットにしたAMRが多かったのですが、ソフト面も含めてBtoBの要件に対応できそうなのが、ラピュタロボティクスでした。過去の導入事例を拝見し、同じBtoBでの対応をされていた京葉流通倉庫さんに実際の物流センターを視察させて頂くことで、導入のイメージが非常に明確になり、導入における大きな後押しになりました。
Q.AMR導入の検討開始と、実際に導入を決定した時期についてもお聞かせください
BtoB向けのAMRということでラピュタに絞った後は、導入担当の方とも密にやり取りを行い、運用のイメージを固めていきました。ただ2021年当時は、卸売業の物流センターで対応するためには、技術的な面でいくつかのカスタマイズが必要ではありました。例えば、パレットを格納できるラックと背が低いラックが混在している場所では、自己位置認識や場所の測定で、AMRがエラーを起こしやすいという課題がありました。しかし、2022年にAMRマーカーの技術を導入することで、AMRの行動精度が高まり、当初の課題を解決することができました。導入を検討したのが2020年初め頃でしたが、そこから2年かけて卸売業の物流センターの環境条件に技術が追いついてきた、という印象を受けました。
その後は社内稟議を経て導入を正式決定し、2022年8月~11月の間でテストを繰り返して、2023年1月に本稼働を開始しました。
Q.従来のセンターでのピッキング方式はどのようなものでしたか?
基本的にはハンディターミナルと6輪のカートラックを使用して、店別にピッキングを行うオーソドックスな運用を行っておりました。AMR導入後は、酒類などの大型ケース品(ダンボール、一升びんなど)以外はAMRに特化し、荷姿に合わせた効率的なピッキングを行っています。
Q.ラピュタPA-AMR導入準備の中で、御社独自の開発要件などがあればお聞かせください。
ほとんどはラピュタPA-AMRの基本機能をベースにしているので、大きなカスタマイズはありませんでした。ただし、店舗名の情報が入った【個別ラベル】を発行できるようにお願いしました。ラピュタPA-AMRの通常機能であれば、ピッキング明細はリストで発行ができるのですが、さまざまなお客様へ個別に配送をするうえで、リストではなくラベルで店舗情報の印刷を行い、オリコンに貼り付けて作業できるのがもっとも効率が良いためです。
弊社の場合はオリコン毎に届け先をわけて梱包し、1台の車両にて複数の届け先への配送を行う必要があります。オリコン毎にピッキング明細が分かれば1店舗分のオーダーが明確にわかりますし、1台のAMRで2店舗分のピッキングを行うことができます。
Q.ラピュタPA-AMR導入準備にあたって、オペレーションやロケーションの変更・調整などはどの程度ありましたか?
まず導入の事前準備としてAMRの作業に適したリードタイム、規模、作業量に見合う得意先の選定から始めました。最終的には、バラでの出荷が多く、かつ作業短縮が見込める得意先に絞り込み、倉庫内でも2つのエリアに絞って対象商品のロケーションを変更していきました。
また当社ではピッキングだけではなく、出荷待機エリアまでの搬送もAMRで行っておりますので、搬送作業中にフォークリフトとぶつかってしまう懸念がありました。そのため衝突が起きにくいように、標識や、バリケードを設置しAMRの導線上で、より安全に荷積みができるように整備しました。
Q.WMSとのデータ連携はスムーズに進みましたか?
従来のWMSは外部システムに対しバッチ単位での作業指示の送信しか対応できておらず、外部システムとのリアルタイムな送受信などのデータ連携はできませんでした。対してAMRは、データ連携を行わずに単独で動かすことも、高頻度でリアルタイムにデータ連携を行うこともできます。今回は今後の倉庫運営を考え、リアルタイムなデータ通信処理も可能になるような改修をWMS側で行いました。またWMSには新たにデータの送受信の際に外部サーバ(AWS)と連携するための仕掛けも構築しました。
一定の時間とトライ&エラーの作業が伴いましたが、物流センターのシステム構成を大きく変えたことは、今後にとっても大きな一歩だったと考えています。
Q.ラピュタPA-AMRの現場受け入れでの結果や、現場スタッフの方の声や感想などあればお聞かせください。
現場スタッフからは1日の作業が楽になったという声が大きいです。最初は「ロボット=難しそう」というイメージがあり、とまどうこともありましたが、実際に使ってみると画面操作はとても簡単で、すぐに慣れることができました。またハンディでの作業の時には6輪カートを引っ張りながら片手で作業を行っていましたが、AMRを導入してからは完全に両手が使えるようになったことで作業がしやすくなりました。特にこの物流センターではバラ品の出荷が多いので、ダンボールを開梱して取り出すなどの作業は、かなりやりやすくなりましたね。もちろん歩行距離は格段に短縮され、体力的・精神的にも確実に負担が減っています。
ピッキング人数とAMRの台数の割合ですが、いろいろ試してみて、今はラピュタPA-AMR10台に対して3人位の配置となっています。この割合だと、先回りして到着したAMRに、人間が軽く急かされているくらいの状態ですが(笑)、この割合くらいが弊社の物流センターでは適切なバランスだと感じています。
Q.現場スタッフへのトレーニングが、どのように行われたかをお聞かせください
本番稼働の1週間前からトレーニングを始めました。操作が簡単なので、初回講習を10~15分程行った後は、すぐに実際にピッキングをしてもらいながら感覚をつかんでいってもらいました。操作が簡単なメリットは、初回のトレーニングは短くても、何かあれば現場のスタッフ同士で教えあうことができるところです。新規スタッフや年輩の方でも、習熟がかなりスピーディに進む印象ですね。今ではほとんどのスタッフが扱える状態となっています。
Q.導入後、運用の中で取り入れた現場独自の工夫などがあればお聞かせください。
かなりの台数のフォークリフトが動いている現場ですので、フォークリフトとAMRとのバッティングが一番の懸念でした。接触を防ぐ対策として、導線が極力重ならないようにバリケード、標識など、フォークリフトの運転手がわかりやすいような環境を整備しました。また、AMRの前面にレーザーを装着し、AMRが近づいたらレーザーの光で視覚的にも分かるように工夫もしました。AMRの導入がきっかけではありますが、搬送導線を整理することで、結果として倉庫全体の安全運用にもつながっていると思います。
Q.事前シミュレーションと、ラピュタPA-AMR導入後の生産性を比較して、現在どのような違いがでていますでしょうか
導入初年度の目標生産性は、一人が時間あたり90~100行で、現在は平均して80行ほどです。初年度の生産性目標にはまだ到達していないものの、今も少しずつ伸びていますし、まだまだ伸びしろがあると考えています。
また生産性の分析を進めると、荷下ろしや搬送通路が混んでタイムロスが起きている箇所がみられました。そのため搬送通路をもう一本増設するなど、細かい現場の改善を進めています。
Q.ラピュタ側からどのようなサポートがあったかをお聞かせください
導入前からカスタマーサクセス(CS)のご担当が現場に入って頂き、運用調整からエラー対応まで、細かな対応を誠実に行って頂きました。また稼働後も生産性や実績データなどの分析や施策の提案など、毎週現地までお越し頂き細かなサポートを頂きました。導入したら終わり、ではなく、導入してからが本番なので、このアフターフォローの体制をとって頂けたというのは初めての導入であった弊社にとっては非常に重要だったと思いますし、安心して継続的にお仕事をお願いできますね。一緒に伴走してくれるスタンスは、弊社にはとても心強いです。
Q.ラピュタPA-AMRの導入プロジェクト全体のスムーズさとコストパフォーマンスは、結果的にいかがでしたでしょうか
ラピュタさんのウリは「スピーディな導入ができる」という点だったのですが、複雑な要件がある卸売業への対応はスムーズにいかない部分もあり、運用面、システム面ともに時間はかかったのではないかなという印象です。ただ、ラピュタさんにはとても粘り強く対応してもらい、トライ&エラーを繰り返すことで課題を解決し、卸売業の物流センターでもAMRが活躍できる土台ができあがってきたと思います。
Q.今後ラピュタPA-AMRに期待したい部分などがあればお聞かせください。
現在AMRはピッキングを行う担当者の「位置情報」は把握せずに作業指示を出しています。今後、ピッキングを行う担当者の「位置情報」を分かるようにし「位置情報」を加味した作業指示が出せるようになれば、よりAMR自体の待機時間が減り、作業効率が上がるのではと思っております。
また、当日の作業指示データを受信後に、日々の出荷物量に応じて、ピッキングを行う作業者の「適正人数」を自動的に出してくれると、需要に合わせた人員配置を行うことが可能になるではないかと期待しております。
Q.導入を経験した立場から見て、
「AMRが活躍できると考えられる倉庫環境」はどのようなものだと思いますか?
・既に稼働しているセンターで、大型の機械の設置が難しい物流センター
・作業のリードタイムが長く、ピッキングの時間が長く取れる物流センター(例えば夜間作業など)
Q.今後ほかの拠点などで、AMRの導入拡大は検討されていますか?
もともと汎用センターにマッチするものとしてAMRを選択していますので、この導入ケースを横展開していくことは当初から構想にありました。今後は今回の実績を検証し、別の物流センターへ導入することも検討していきます。