
この記事を読むべき人
「倉庫自動化」という言葉は知っているものの、具体的に何を自動化するのかがまだよくわからない方
自社倉庫の課題に対して、自動化でどのようなことができるのか、まず全体像を知りたい方
この記事でわかること
- 倉庫自動化とは何を指すのか
- 倉庫のどこまでが自動化の対象になるのか
- 倉庫自動化には、どのような方法があるのか
倉庫自動化と聞くと、倉庫内を走るロボットや、商品を自動で保管・取り出しする大きな設備を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、自動化の対象はこうした設備やロボットだけではありません。商品の場所をすぐに確認できるようにする、次の作業をわかりやすく指示する、作業の進み具合を把握できるようにするといった仕組みも含まれます。
つまり倉庫自動化とは、倉庫内の作業と情報の流れを見直し、設備・ロボット・システムなどを使って、より効率よく安定して運営できるようにする取り組みです。
この全体像を知らないまま倉庫自動化を検討すると、「大きな投資が必要そうだから、自社にはまだ早い」と考えてしまうことがあります。一方、自動化の対象が広いことがわかれば、自社の課題に合わせて、どこから見直すかという最初の一歩を考えやすくなります。
前回の記事では、自社倉庫の改善ポイントを工程ごとに整理しました。次に考えたいのは、「その課題に対して、自動化で何ができるのか」ということです。
この記事では、設備や製品の細かな違いに入る前に、倉庫自動化の対象と方法を整理し、まず全体像をつかんでいきます。
倉庫自動化とは何を指すのか

倉庫自動化を理解するには、「何を対象にするのか」「どのような手段を使うのか」「何を目指すのか」の3つに分けて考えるとわかりやすくなります。
対象は「作業」と「情報」の両方
自動化の対象になるのは、荷物を運ぶ、商品を棚に入れる、取り出すといった作業だけではありません。
商品の場所や在庫数、次に行う作業、現在の進捗など、現場を動かすための情報も対象です。こうした情報を人が毎回探したり、確認したりしなくても把握できる状態をつくることも、自動化の一部です。
つまり倉庫自動化では、「モノの流れ」と、それを支える「情報の流れ」の両方を整えることが重要になります。
手段は、設備や機械、ロボットだけではない
自動化に使われるのは、搬送ロボットや保管設備だけではありません。
在庫を管理するシステム、作業者へ指示を出す仕組み、進捗を確認する仕組みなども含まれます。国土交通省の物流施設におけるDX推進実証事業でも、「システム構築・連携」と「自動化・機械化機器の導入」の両方が対象とされています。[1]
このように、倉庫の自動化を考える際には、設備やロボットだけでなく、システムや情報の流れもあわせて考えることが重要です。
必要な手段は倉庫の課題によって異なり、設備・ロボットを導入する場合もあれば、まず情報や作業指示を整えるところから始める場合もあります。
目指すのは「効率化・標準化・安定化」
倉庫自動化で目指す変化はさまざまですが、この記事では、作業時間を減らす「効率化」、経験による作業の差を小さくする「標準化」、忙しさや人員の変化があっても運営を維持しやすくする「安定化」の3つに整理して考えます。
処理量を増やすことや、人の作業を設備やロボットに任せることだけが目的ではありません。
倉庫自動化で何が変わるのか

では、効率化・標準化・安定化によって、現場はどう変わるのでしょうか。
効率化:人が時間を使っている作業を減らす
倉庫では、商品を扱う時間だけでなく、棚まで歩く、商品を探す、運ぶ、確認するといった行動にも時間が使われています。
商品を作業者の近くまで運ぶ、必要な商品や場所を端末に表示するといった仕組みによって、こうした時間を減らすことができます。
このように、人が移動や探索などに使っている時間を減らし、同じ人数でも作業を進めやすくするのが効率化です。
標準化:経験に左右されにくい作業にする
ベテランと新人で作業の速さや正確さに差が出る背景には、商品の場所や判断基準などが個人の経験に任されている場合があります。
必要な情報や作業手順を明確にし、経験が少ない人でも迷いにくい状態をつくることで、誰が担当しても一定の手順と品質で作業しやすくなります。
安定化:忙しさや人員の変化に対応しやすくする
出荷量が急に増えたり、予定していた人数を確保できなかったりすると、一部の工程に荷物がたまり、その後の作業まで遅れることがあります。
運搬や保管などの一部を設備やロボットが担い、進捗も把握しやすくすることで、こうした変動の影響を小さくし、倉庫全体の流れを維持しやすくします。
3つすべてを一度に実現する必要はありません。自社では何を一番改善したいのかを整理することが、必要な自動化を考える出発点になります。
倉庫のどこまでが自動化の対象になるのか

倉庫自動化の対象は、一部の工程に限られません。
入荷、検品、保管、補充、ピッキング、搬送、仕分け、梱包、出荷まで、倉庫内のほぼすべての工程に、自動化を検討できる部分があります。
対象になるのは、荷物を運ぶ、商品を保管・取り出す、数量を確認するといった作業だけではありません。在庫や進捗などの情報管理も含まれます。
さらに見落としやすいのが、工程と工程のつなぎ目です。
ピッキングした商品を梱包場所まで運ぶ、前の工程が終わったことを次の担当者へ伝えるといった、工程間の搬送や情報の受け渡しも自動化の対象になります。
そのため自動化を考えるときは、個々の作業だけでなく、「モノや情報が次の工程へどう移っているか」まで見ることが大切です。
具体的にどの工程で何を自動化できるのかについては、このシリーズの後の記事で詳しく取り上げます。
倉庫自動化の3つのタイプ

この記事では、倉庫を自動化する方法を、大きく「作業そのものを設備・ロボットに任せる」「情報と指示を整える」「現場の状況が見えるようにする」の3つに整理します。
どれかひとつを選ぶのではなく、実際には複数を組み合わせることもあります。
1. 作業そのものを設備・ロボットに任せる
人が行っている搬送、保管・取り出し、仕分けなどの一部を、設備やロボットに任せる方法です。
人が棚まで商品を取りに行く代わりに設備が商品を運ぶ、人が台車で運んでいた荷物を搬送ロボットが運ぶといった方法があります。
倉庫自動化と聞いて最もイメージしやすいタイプですが、これだけが倉庫自動化ではありません。
2. 情報と指示を整える
商品の場所や在庫数をシステムで管理し、必要な作業を端末などでわかりやすく伝える方法です。
情報が整理されていれば、作業者が商品を探したり、周囲の人に確認したり、自分で判断したりする場面を減らせます。
「探す・確認する・判断する」を減らし、迷わず作業できる状態をつくるのが、このタイプの役割です。
設備やロボットを動かす場合にも、「何を、どこから、どこへ動かすのか」という正しい情報が欠かせません。
3. 現場の状況が見えるようにする
作業の進捗や実績をデータで把握し、どこに作業がたまっているのか、どの工程に時間がかかっているのかを確認できるようにする方法です。
現場の状態が見えるようになれば、感覚だけに頼らず、実績をもとに改善する場所を判断できます。自動化設備を導入した後の効果を確認する際にも役立ちます。
この3つを組み合わせながら、倉庫の「モノの流れ」と「情報の流れ」をつなげていくことが、倉庫自動化につながります。
自動化で変わる人の役割

倉庫自動化は、人の仕事をすべて設備やロボットに置き換えることではありません。
決まったルートでの搬送や繰り返し作業などは、設備やロボットに任せやすい一方、想定外の状況への対応、優先順位の判断、品質確認、現場の改善などは、人の判断や経験が必要です。
国土交通白書2025でも、省人化・省力化技術の活用について、技術が「人を代替する」だけでなく、「作業効率を高める」「人の作業能力を補完する」といった役割があると整理されています。[2]
つまり、自動化によって人の役割がなくなるのではなく、人と設備・ロボットが、それぞれ適した仕事を分担するように役割が変わっていくと考える方が近いでしょう。
移動や繰り返し作業に使っていた時間を減らし、判断や改善など、人の判断や経験が必要な仕事に時間を使いやすくすることも、自動化の目的のひとつです。
全体像をつかんで、課題と結びつける
倉庫自動化とは、大きな設備やロボットを導入することだけではありません。
作業を機械に任せる、情報と指示を整える、現場の状況を見えるようにする。こうした方法を組み合わせながら、倉庫の「モノの流れ」と「情報の流れ」を整えていく取り組みです。
大切なのは、いきなり「自動化するか、しないか」を決めることではなく、自社のどの課題に、どのような自動化が使えそうかを考えることです。
前回の記事で整理した改善ポイントを振り返り、歩行や搬送に時間がかかっているなら作業の機械化、確認や判断が多いなら情報や指示の整備、進捗が把握しにくいなら状況の可視化、といったように結びつけると、自社に必要な方向性が見えやすくなります。
すべての工程を一度に自動化する必要はありません。まずは見直したいところを整理し、その課題に合った方法を考えるところから始めてみましょう。
倉庫自動化の全体像がつかめたら、次に知っておきたいのが、その手段のひとつである「自動倉庫」です。
次の記事では、自動倉庫の仕組みや種類、導入によって何が変わるのかを、初めての方にもわかりやすく整理します。

この記事のおさらい
Q. 倉庫自動化とは何を指しますか?
A.倉庫の中の作業と情報の流れを、設備やシステム、ロボットなどを使って、効率よく、誰がやっても同じように、安定して回るようにしていく取り組みです。 モノを動かす作業を機械に置き換えることだけでなく、作業指示の出し方や、在庫や進捗の情報を整えることも含まれます。また、何かを入れたら終わりというものではなく、課題を整理して、対象を決めて、効果を確かめながら続けていく取り組みです。
Q. 倉庫自動化の対象になるのは、どのような業務ですか?
A.入荷、検品、保管、ピッキング、搬送、仕分け、梱包、出荷といった各工程に加えて、在庫管理や進捗管理のように工程をまたぐ部分も対象になります。 見落としやすいのは、工程と工程のあいだです。前の工程が終わったのに次に伝わらない、仮置きされたまま時間が過ぎるといった滞りは、それぞれの工程を速くしても解消しないことがあります。
Q. 倉庫自動化には、どのような方法がありますか?
A.大きく3つのタイプに分けられます。作業そのものを機械に任せる方法、情報と指示を整える方法、状況が見えるようにする方法です。 この3つはどれかを選ぶものではなく、組み合わせて使います。機械を入れる場合でも、情報と指示が整っていないと思ったように動いてくれません。順番としては、情報を整えるほうが先になると思っておくと現実的です。
Q. 倉庫自動化と自動倉庫の違いは何ですか?
A.倉庫自動化は取り組み全体のことで、自動倉庫は保管と入出庫を自動で行う設備、つまり倉庫自動化の手段のひとつです。 自動倉庫を入れることは倉庫自動化のひとつのかたちですが、倉庫自動化は必ず自動倉庫を伴うものではありません。自動倉庫の情報を見て自社には難しそうだと感じた場合でも、倉庫自動化そのものが自社に関係ないということにはなりません。
Q. 自動化すると、現場の人の仕事はなくなりますか?
A. なくなるのではなく、中身が変わります。 決まった移動や単純な繰り返しの比重は下がりますが、想定外のことが起きたときの対応、判断が必要な仕事、品質の管理、業務の見直しといった部分は、これからも人が担います。こうした仕事に時間を使える状態を作ることも、倉庫自動化の目的のひとつです。

- Vol.1: 「まだ人で回せる」はいつまで続く?いま、倉庫自動化が必要と言われる理由
- Vol.2: 自動化を考える前に確認したい、自社倉庫の改善ポイントの見つけ方
- Vol.3: 倉庫自動化とは?できること・対象業務・3つのタイプを整理
- Vol.4: 自動倉庫とは?仕組み・種類・メリットをわかりやすく解説(9月上旬公開予定)
出典
[1] 国土交通省「物流:物流施設におけるDX推進実証事業」
[2] 国土交通省「国土交通白書2025|2 省人化・省力化技術の利活用」