Text:Hiroshi Sakurai
![](https://www.rapyuta-robotics.com/ja/wp-content/uploads/sites/10/2024/05/P4120177-1024x683.jpg)
インテックス大阪で4月10日(水)~12日(金)の3日間開催された「第5回 関西物流展」。2024年4月以降ではじめての物流展で注目されるこの展示会を3回にわたって、取材レポートとしてご紹介しています。
第2弾は、無人での荷物の積み下ろしが可能な「無人搬送フォークリフト(AGF)」の最新事情をお伝えいたします。
2024年問題の影響で注目度高まる!高機能な無人搬送フォークリフト(AGF)のトレンド
今回展示されている自動化機器の中で、注目度がもっとも高かったもののひとつがAGF(Automated Guided Forklift=無人搬送フォークリフト)。
従来の有人フォークリフトは免許が必要であり、少ない専門の作業者に業務が偏りがちとなります。その結果、長時間労働や事故のリスクを高めてしまうことから、物流倉庫の2024年問題では特に必要性が高まっています。
またAGFなら人を集めづらい夜間作業でも少人数で稼働ができ、24時間稼働も可能になります。
さて現在AGFに期待されている役割としては
・定点間搬送
・トラックへの積み込み
がありますが、現時点で確実に実用レベルに達しているのは「定点間搬送」となります。メインの用途としては、入出庫・保管格納・パレットピッキング、工程間搬送など、パレットなどを無人で搬送することです。
ちなみにAGFによるトラックへのパレットの積み込み機能は、トラックドライバーの大きな負担となっている荷待ちを解消するのにひと役買うことが期待されています。ただ、荷積みするスピードや、トラックの停止位置、トラック内にパレットをぴたりと重ねていく設置位置などに高い精度を求められます。そのため現在ではいまだ有人フォークリフトでの運用が一般的です。今回の展示では数社のAGFがトラック積み込みのデモを行っており、AGFの実用化も近いところにあると感じられました。
Vision Nav Robotics
香港の大学で教授を務める会長が、研究室の卒業生らとともに創業したAGF専業のスタートアップ企業。世界各国に拠点を構えており、グローバルに事業を展開しています。4t、6t、10tと、搬送重量にあわせて運用できるAGFラインナップを持ち、これらを組み合わせて群制御できる技術も研究開発。会場でも現場適応性の高いAGFソリューションを紹介していました。映像では3000平米のフロアに28台のAGFが群制御している事例も。入庫作業やトラックの積み下ろしは、屋外向けのカウンターバランス型AGFが働き、屋内での水平搬送をSLAM型AGFが担いながら、無人の倉庫で連携して動いていました。
また国内代理店となった岡谷鋼機グループとの協業により、周辺のマテハン機器の導入・配置も合わせ、物流倉庫のトータルソリューションを提案できるのも強み。ロボットとIT活用を一元化して取り扱えるエンジニア人材もそろい、走行距離や使う電気量など、AGFの膨大なデータをリアルタイムでクラウド上にあげ、一元管理できるソリューションも構築しているそうです。
Multiway Robotics
中国深センに本社のあるAI・ロボット関連のスタートアップ企業で、トラック積み込みが可能な出入庫用AGF「スタッカー」と、地上搬送を担う小型AGF「パレットフォーク」の2台を連携させてのデモを行っていました。より精度の高いセンシングとコントロールを必要とするトラック積み込みを実現しているとあって、多くの来場者がその動きに注目していました。
中国での生産となり、日本製カメラや高性能なLiDARに変更するなど日本向けにカスタムも可能で、稼働までには半年ほどのリードタイムがかかるそうです。
また、-25℃での冷凍倉庫での作業が可能な、コールドチェーン業界向けのAGF「MW-SE12」もデモ出展。低温下でのバッテリー保護機能、センサーカメラの結露除去技術など、多様なニーズに応えるラインナップの多さも同社の強みです。
日本国内での代理店はテクトレ社で、保守をウイルテック社、SIをGROUND社が行い、各分野に長けた数社のタッグで、日本での展開を目指しています。
■1台でいくつものタスクをこなすマルチ性が魅力のAGF「ラピュタAFL」
そんななか、ラピュタロボティクスのブースにも国産AGF「ラピュタAFL」が展示され、多数の来場者が訪れていました。
中国メーカーのようにAGF機体ラインナップを何種類も持つと、選択肢の幅は広がります。その一方、日本の倉庫での現状を踏まえ、ラピュタAFLは1機種ですが「汎用性」の高さをもたせています。
定点間の反復搬送はもちろん、棚入庫&格納、パレットピックなど、1台でたくさんのプロセスを担うことができ、マルチな運用をできるのが強みです。しかもその操作はタブレット端末で簡単にできるほか、WMSとの連携も可能です。AGFの生産性や現在地の把握、新たな指示だしも簡単に行えます。
また専用パレットが必要ないなどの「柔軟性」も大きな特徴。推奨はあるものの、木製でも樹脂製でも、現在使っているサイズのパレットがそのまま使えるので導入がスムーズなのです。またAGFでありがちだったパレット間のクリアランスがとれないだとか、曲がって設置してしまうことも対策済みで、段積み段バラシにも対応可能。2段目3段目のパレットの穴を自己認識し、自分でツメを差し込むことができる高い精度を持っています。
多くのラピュタPA-AMRを国内で導入した実績で鍛え抜かれたLiDAR方式を用いる「自己位置認識技術」や、複数のロボットを群制御するプラットフォーム「rapyuta.io」などの技術力で、柔軟性と生産性を兼ね備えています。
「生産性」は1台当たり最大毎時30パレットの搬送が可能。夜間稼働に対応しているので、夜間に動かし続けて早期に投資回収を実現させることもできます。あわせて、目標の生産性にたどり着くまで、カスタマーサクセスの担当がしっかりと伴走。67.4%のシェアを持つPA-AMRで培った導入後のサポート体制も万全です。安田倉庫様、TOTO様、鈴与様、SBSロジコム様など、さまざまな条件・特徴の倉庫での導入事例も豊富なのも安心です。
■vol.2まとめ
ある出展ブースの担当者によると、フォークリフトの資格者の採用が厳しく、事業継続が危うくなる中で、「もういまは費用対効果などを言っていられない」という顧客からの問い合わせがかなり多くなってきているそう。これから需要が本格的となるなかで、確かな導入事例を持っているメーカーや、スムーズな導入サポートや、明確な成果を出せるソリューションを提案できるメーカーを選ぶことがポイントになってきそうです。
今回の物流展では、AMRと同様に、中国のAGFメーカーと日本の代理店がタッグを組んで、国内での導入サポートやアフターサービスを手厚くするなど、導入と運用サポートに重点を置いたサービスをつくっていたのが印象的でした。ロボット導入で終わり…なのではなく、導入をスタートとして目標の生産性到達まで伴走することが、真の物流自動化を実現するための「核心」なのかもしれません。
【この連載の記事】
・「2024年問題」を解決する最新の物流ロボットが集結!「関西物流展2024」レポートvol.1
・「2024年問題」を解決する最新の物流ロボットが集結!「関西物流展2024」レポートvol.3