Text:Hiroshi Sakurai
2024年4月1日から、運送業と建設業、それに医師の3つの業種で、時間外労働の上限規制がスタート。物流業界では労働時間の減少によって、物流現場の業務に支障が生じるといわれている、「2024年問題」へどのように対応していくかが課題となっています。
こうしたタイミングのなか、「第5回 関西物流展」は、4月10日(水)~12日(金)の3日間、インテックス大阪で開催されました。今回は出展社、来場者ともに過去最大規模。カテゴリ別で見ると、搬送・仕分け・ピッキングなど、物流倉庫での自動化機器を軸に過去最多の出展数で、多くの来場者の注目を浴びていました。
そこで今回より3回にわたって、物流倉庫で注目されている、さまざまな最新の自動化機器や動向を、この関西物流展を取材したレポートとして紹介していきます。
第1弾は、倉庫内でのピッキング作業で活躍している自律走行型のピッキングアシストロボット「AMR」についての最新事情をお伝えいたします。
円熟に入ってきた機体技術と、サポート体制の充実をはかるAMRとピッキングソリューション
AMRのコア技術ともいえる走行方式は、第4世代であるSLAM(自己位置推定・環境地図生成)が標準化し、Visual SLAM(カメラ映像から3次元情報を推定する技術)やLiDAR SLAM(レーザーセンサーによる測距で2次元環境地図を生成)など高精度のナビシステムが搭載されるものが増えてきました。
各社AMRともに、ハードとしての技術は円熟に入ってきた印象ですが、大きく違いを出しているのは、導入後の運用支援や、カスタマーサポート体制など、AMR導入に伴うソフト面のフォロー体制。海外製のAMRも国内代理店とのパートナーシップを強化し、トータルソリューションでのシステムインテグレート(SI)や、アフターフォローの体制をしっかりと構築する方向がはっきりと打ち出しています。そのためそれぞれ得意とする分野で協業して、複数の協力会社での共同ブースとしての出展が多かったのも印象的でした。
Gaussy
さまざまなロボットを海外のパートナー企業から調達し、独自開発のシステムと融合させた走行ロボットサービス「Roboware」を提供しています。月額のサブスクサービスで、保守運用までサポートしています。この物流展では、立体型仕分け機器の「Omni Sorter」と「AMR」の2種類がデモ展示されていました。ForwardX社製AMRの2機種「Flex」は耐荷重300㎏、「Max」は600㎏と、これまでのAMRにはない高い耐荷重と積載可能面積が特徴的です。
Standard Robotics
AMR「Oasis」が、国内代理店となるウイルテック・GROUNDなどの共同ブースにて展示されました。低床型でカゴ車をリフトアップして搬送するタイプのAMRでデモンストレーションでは、アームロボット「ELITE」を組み合わせ、「移動+作業」する複合ロボットの提案も行っていました。
日本国内での代理店はテクトレ社で、保守をウイルテック社、SIをGROUND社が担うようです。
寺岡精工
創業以来培ってきた、高精度な「はかり」の技術を生かした「計量器内蔵ピッキングカート」が多数のバリエーションで出展。なかでも今回初お披露目となったのが、ボリュームのある商品に対応する大容量設計の「低床2マルチピッキングカート」です。こちらは手押しタイプですが、重量検品機能つきのAMRも開発している同社だけに、今後の動向にも注目です。
■国内のPA-AMR市場で67.4%のシェア!「ラピュタPA-AMR」が選ばれる理由
国内のAMR市場において、圧倒的なシェアを誇る「ラピュタPA-AMR」。デロイト トーマツ ミック経済研究所による調査で、ピッキングアシストロボット市場で、2年連続売上シェアNo.1(2022年度:67.4%)に認定されている実績を持っています。
人気の秘密は、柔軟性と生産性の高さを両立している面にあります。柔軟性に関しては、既存の倉庫のロケーションそのままで導入でき、さらに購入とサブスクが選べる点があげられます。自動化機器の中では、導入障壁はもっとも低い部類だといっていいでしょう。
生産性に関しては、物の搬送をAMRが代替することで人は人にしかできない作業に従事できること、AMRがAIによる群制御でもっとも効率がよい経路を自ら選んでくれることが挙げられます。
なによりうれしいのは、カスタマーサポートが充実していることです。専任の担当者が現場で綿密にサポートし、目標到達まで生産性向上にしっかりとコミットしてくれます。あわせて、数多くの国内実績を積んでいることで、より実際の運用に寄り添った具体的な提案ができるのも強みです。
■vol.1まとめ
制御技術やナビゲーション技術がここ数年で一気に発達し、ハードの性能は円熟に入りつつあるAMR。いま自社倉庫への導入のためにチェックすべきポイントは、ロボット群を制御するソフトウェアが洗練されているか、そして現場の運用方法と目標に寄り添ったカスタマーサポート体制と言えます。各社ともAMRのハードよりもソフトウェアとサービス部分に力をいれてきており、複数の企業でタッグを組んでの提案も多かったのが印象的でした。
そのなかでも、より多くの実績と経験を持ち、現場で鍛えられた運用実績と豊富なアイデアを持つ「実用的ソリューション」は絞られてきています。展示会や体験会などでは、この点を念頭に置いて情報を精査されるとよいかもしれませんね。
【この連載の記事】
・「2024年問題」を解決する最新の物流ロボットが集結!「関西物流展2024」レポートvol.2
・「2024年問題」を解決する最新の物流ロボットが集結!「関西物流展2024」レポートvol.3