北海道全域の食の流通を支える国分北海道株式会社。札幌近郊を担うメインかつ道内最大規模の物流拠点、札幌ロジスティクスセンター(以下、札幌LC)では、約14,000SKUの食品・酒類を扱い、年間約630万ケースを出荷しています。一方、物流現場では人員確保の難しさが深刻さを増し、人の経験に依存した作業を続けることにも限界が見え始めていました。
そこで国分北海道 札幌LCでは、ラピュタロボティクスのピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」を導入。2025年7月14日に稼働を開始し、8月16日に本稼働へ移行しました。本記事では、国分北海道でのラピュタPA-AMRの導入背景から、既存センターへの実装経緯、そして稼働開始後どのような変化が生まれ、次の改善へどうつながっているのかを紹介します。

お話を伺った方:
- 国分北海道株式会社 物流・システム部長 島 淳二 様
- 同 物流・システム部副部長 兼 物流運営課長 藤田 直樹 様
- 同 物流・システム部物流運営課ロジスティクス営業担当グループ長 兼 札幌ロジスティクスセンター長 油谷 政勝 様
- 同 物流・システム部物流運営課グループ長 兼 恵庭流通センター長 加藤 義貴 様
- 同 物流・システム部物流運営課ロジスティクス営業担当 森 智紀 様
エグゼクティブサマリ
国分北海道 札幌LC:ラピュタPA-AMR導入概要
- 所在地:北海道札幌市西区(札幌ロジスティクスセンター)
- 事業内容:酒類・食品卸売業
- 主な取扱品目:加工食品・酒類
- SKU数:約14,000SKU
- 年間出荷量:約630万ケース
- 稼働開始:2025年7月
- PA-AMR対象エリア:約1,500㎡
- ラピュタPA-AMR導入台数:10台
- 作業人員数:8〜9名 → 4〜5名(荷降ろし含む)
- ピッキング生産性:41 LPMH → 93 LPMH
札幌LCでは、ラピュタPA-AMR導入後、荷降ろしを含む作業人員を8〜9名から4〜5名へ抑えながら、ピッキング生産性は41 LPMHから93 LPMHへ向上しました。今後も継続的に次の目標設定を行い、国分北海道とラピュタロボティクスのカスタマーサクセスを継続しています。
Chapter 1|人を確保し続けることを前提にしない。少ない人数でも安定運営できる物流センターへ
人件費よりも深刻だった「人が集まらなくなる」リスク

札幌LCが自動化へ具体的に動き始めたのは2024年末頃でした。背景にあったのは、人件費の上昇以上に「必要な人員そのものを、この先も確保し続けられるのか」という危機感です。物流は日々動き続けます。採用環境がさらに厳しくなってもセンターを止めないためには、人を増やすことで物量を吸収する従来の運営だけに頼らない体制が必要でした。

「少し先を見ると、もう人が確保できなくなる可能性があるという危機感がありました。とにかく継続的に運営していくために、少ない人数でもセンター運営ができる体制を作ろう、というのがきっかけでした。」
― 国分北海道株式会社 物流・システム部副部長 兼 物流運営課長 藤田様
人を採用できても、すぐ戦力になるとは限らない
もう一つの課題が、作業の属人化でした。札幌LCでは短期雇用やスポットワーカーの活用も増えていましたが、従来のハンディターミナルやリストを使ったピッキングには、ベテラン作業者の経験に依存する部分がありました。新しく加わった作業者が、同じ品質と生産性で仕事をこなせるようになるまでには時間がかかります。
つまり、課題は単に「人数が足りない」ことだけではありません。必要な人材を確保するという量の問題と、人が入れ替わっても安定して仕事を回せる仕組みをつくるという運営の問題。その両方に対応する必要がありました。加えて、労働人口の減少や従業員の高齢化を背景に、歩行や重量物の持ち運びといった身体的負担を減らすことも重要なテーマになっていました。
自動化前提ではない既存センターを、どう変えるか

札幌LCは、自動化設備の導入を前提として新設された物流センターではありません。センターの最も古い部分は築約40年、今回PA-AMRを導入した現場も築30年を超えています。既存施設を使い続けながら、少ない人数でも運営でき、経験による差が出にくい仕事へ変えていく必要がありました。
国分北海道が求めたのは、単なる人員削減ではなく「効率化」と「標準化」の両立です。その条件を既存センターの中で実現する方法として、ラピュタPA-AMRの検討が進んでいきました。
Chapter 2|なぜラピュタPA-AMRだったのか。既存センターで稼働させるまで
グループでの導入経験と、既存WMSとの接続実績

国分北海道では、ラピュタPA-AMR以外の選択肢も含めて自動化を検討しました。その中で大きな安心材料になったのが、国分グループ内ですでにPA-AMRの導入実績があったことです。国分関信越で先行して稼働していたため、実際の運用を参考にしながら、札幌LCでの使い方を具体的にイメージできました。札幌LCは国分グループで2拠点目の導入となります。

「やっぱりグループで導入した経験値があったというのが、一つのきっかけにはなっています。」
― 国分北海道株式会社 物流・システム部長 島 様
さらに、国分グループが各拠点で利用する独自開発WMSとの接続実績も重要でした。このWMSは10〜15年前から改善を重ねてきたシステムです。すでにグループ内でPA-AMRと接続し、実運用できていたことから、自社の既存業務に組み込める見通しを持って導入を進めることができました。

「実際にうちのシステムとつながって、使えているというのが一つの安心材料になりました。」
― 国分北海道株式会社 物流・システム部物流運営課ロジスティクス営業担当グループ長
兼 札幌ロジスティクスセンター長 油谷 様

築30年以上の現場でも、大掛かりなレイアウト変更は不要
今回の導入では、大規模な設備工事を伴うレイアウト変更は必要ありませんでした。ネットワーク環境を整え、PA-AMRが安全に動けるよう障害物を整理することで、既存の現場に稼働環境を構築しました。札幌LCとしては今回が初めてのロボット導入でしたが、「思っていたよりもお手軽で、距離感が近かった」と振り返ります。
一方で、PA-AMRを導入すれば何も変えなくてよいわけではありません。約1,500㎡の対象エリアには、バラ商品やオリコンへ格納できるサイズの商品など、PA-AMRが得意とする商品を配置するようロケーションを調整。従来、六輪カートを使って行っていたピッキングを、PA-AMR中心の作業へ移行しました。

ロボットではなく「一日のオペレーション」を設計する
稼働開始までには、出荷データをもとに要件定義やシミュレーションを行い、商品ロケーションだけでなく、オーダーの流し方も検討しました。札幌LCでは朝6時頃から出荷オーダーが入り、入荷・検品・賞味期限確認・格納を午前11時頃まで進めながら、出荷作業は19〜20時頃まで並行して続きます。途中で優先度の高いオーダーが入ることもあります。
そのため、オーダーをどのようなバッチにまとめ、どの順序でPA-AMRに処理させるのか、優先オーダーをどう割り込ませるのかまで現場運用へ落とし込みました。大切だったのは、ロボットを動かすことではなく、センター全体の一日の流れの中で継続的に使える仕組みにすることでした。


「1日中作業が継続できるように、タイムスケジュールというか、そういうものを作りました。プツンプツンじゃなくて、ずっと使えるものにしたかったんです。」
― 国分北海道株式会社 油谷 様
2024年末頃に具体的な検討を始めてから、およそ半年。国分北海道とラピュタロボティクスが現場条件や運用をすり合わせ、2025年7月に稼働を開始。8月には本稼働へ移行しました。
Chapter 3|「新しいロボット」への戸惑いはほぼなし。経験に依存しにくい作業へ
想定していたほど、現場定着は難しくなかった

自動化設備を導入するとき、管理側が気にするのが「現場の作業者に受け入れてもらえるか」という点です。札幌LCでも立ち上げ期にはトレーニングを行いましたが、実際に使い始めてみると、大きな戸惑いはほとんどありませんでした。

「これについては、ほぼほぼありませんでした。すんなりと皆さん入っていったと思います。」
― 国分北海道株式会社 藤田様
ラピュタPA-AMRの画面は大きく、作業指示も視覚的に確認できます。国分北海道からは、年配の作業者でも画面が見やすかったという声がありました。操作を覚えること自体が、新しい作業へ移行する際の大きな壁にはならなかったといいます。

ロボットから作業者に次の作業を視覚的に指示し、誰でもミスを防ぎながら高い生産性で作業できる。
スポットワーカーだけでも、初日から作業できた
立ち上げ期には、レギュラーのパートスタッフが休み、スポットワーカーだけで作業する日もありました。それでもPA-AMRの操作自体には問題がなく、作業を進めることができました。これは、Chapter 1で触れた「新しい人が戦力化するまでに時間がかかる」という課題に対する、大きな変化です。
PA-AMR導入後は、ロボットの画面や指示に沿って作業するため、作業者ごとに異なっていた仕事の進め方も共通化されました。経験者のやり方を見て覚えるのではなく、誰もが同じ基本フローで仕事を進めやすくなります。

「作業の仕方自体がほとんど共通になるので、各々のやり方というものは実際なくなる。非常に指導しやすいですね。」「これについては、ほぼほぼありませんでした。すんなりと皆さん入っていったと思います。」
― 国分北海道株式会社 油谷 様
「人をロボットに置き換える」のではなく、「人が担う仕事を、経験に依存しにくい形へ変える」あるいは「人依存から仕組み依存へとシフトする」。札幌LCでは、PA-AMRの導入によってピッキング作業の効率化と同時に、作業標準化の土台がつくられていきました。
Chapter 4|41から86 LPMHへ。生産性向上の先で始まったデータによる継続改善
作業人員を約半分にしながら、生産性は約2倍へ
現場に新しい作業方法が定着し始めると、数字にも変化が表れました。導入前、札幌LCのピッキング生産性は41 LPMH。PA-AMRの立ち上げ初期には、作業方法を説明しながらでも約50 LPMHまで上がる場面があり、その後の改善によって取材時点では86 LPMHまで向上しており、記事公開の2026年8月時点では93 LPMHまで向上しています。
ピッキング生産性の変遷
| 導入前 | 立ち上げ初期 | 取材時点 | 2026年8月現在 |
| 41 LPMH | 約50 LPMH | 86 LPMH | 93 LPMH |
同時に、荷降ろしを含む作業人員は8〜9名から4〜5名へ。人数を約半分にしながら、ピッキング生産性は41 LPMHから93 LPMHへと約2.26倍になりました。
導入前後の主な変化:
| 項目 | 導入前 | 導入後・取材時点 |
| 作業人員 ※荷降ろし含む | 8〜9名 | 4〜5名 |
| ピッキング生産性 | 41 LPMH | 86 LPMH |
| ピッカーの移動 | 六輪カートを使って広く歩行 | 歩行距離を大幅に削減 |
| カート作業 | カート置き場から取りに行き、作業後に戻す | カートの取り出し・返却が不要 |
| 持ち運び | ハンディや商品を持って移動 | 持ちながら歩く負担を削減 |
| 誤ピック | 発生あり | 取材時点では発生していないとの現場評価 |
| 作業方法 | 作業者ごとのやり方が残る | 共通化・標準化 |
| 残業 | 恒常的に発生 | 恒常的に減少 |
歩く、持つ、カートを取りに行く。ピッキング周辺の負荷も削減
数字だけでなく、作業風景も変わりました。導入前は六輪カートを置き場から取りに行き、商品ロケーションを回り、作業終了後にカートを戻す必要がありました。PA-AMR導入後はこうした付帯作業がなくなり、ピッカーの歩行距離は大幅に減少。ハンディターミナルや商品を持ったまま歩く負担も減っています。重量物を持つ作業も、主に荷降ろし時などに限定されるようになりました。
また、六輪カートなどで作業していたときに起きていた衝突による破損も減少。バーコードスキャンを伴うピッキングに変わったことで、導入前には発生していた誤ピックも、取材時点では発生していないという評価です。恒常的な残業も減り、「人繰り」の必要もなくなったといいます。
「目標LPMH達成で成功」ではなく、「どう改善し続けるか」
札幌LCの特徴は、目標生産性達成時点で改善を終えていないことです。現在の生産性は93 LPMHに達していますが、国分北海道とラピュタロボティクスのカスタマーサクセスは月次定例会を続け、「更なる改善のために何ができるか」を引き続き議論しています。
人に関連するデータを見て、より良いやり方を標準にする
PA-AMRでは、個人認証を通じて作業者ごとの生産性を確認できます。同じ作業でも人によって生産性に差があれば、高い生産性を出している人の作業方法を確認し、他の作業者の教育へ反映することができます。
Chapter 3で紹介した「作業方法を共通化する」という標準化から、さらに一歩進み、データをもとに標準そのものを改善する。国分北海道では、こうした改善の考え方が現場に根づき始めています。

ユーザーID単位での生産性など現場の継続改善に活用できる情報が確認できる。
改善するのは人の作業だけではありません。導入当初、PA-AMRは倉庫内に分散させて動かしていました。その後、実際の動作データを見ながらラピュタロボティクスと議論し、一定のエリアにPA-AMRを集約して作業する「フォーカスピック」へ変更。その結果、作業者の歩行距離をさらに大きく減らすことができました。
人の作業方法、PA-AMRの配置・動作、商品ロケーション、オーダーの流し方。どれか一つではなく、それぞれの組み合わせをデータから見直すことで、現場全体の生産性を引き上げていきます。

「効果が出るまでの過程の中でデータ取りができて、分析して、フィードバックして、改善につなげるというルーティンが、社内で出来上がってきています。」
― 国分北海道株式会社 油谷 様

「入れた後もラピュタがデータの見方を教えてくれたり、生産性向上のために議論もできて、うちのメンバーも勉強になりました。とにかく入れて良かったです。」
― 国分北海道株式会社 藤田様
Chapter 5|北海道の物流を持続可能にするために―本事例から得られる3つの学び
学び1:人手不足を「採用課題」ではなく「物流を維持できるか」という問題として考える
札幌LCで感じていた人材確保の難しさは、一拠点だけの問題ではありません。国分北海道によれば、札幌圏でも人を確保することが難しく、地方圏ではさらに厳しさが増しています。人口が減るほど配送効率も悪化し、北海道という広いエリアへ商品を届け続ける難易度は高まります。

「人が確保できないというのは札幌圏でもそうですから、地方圏なんかはさらに厳しさがあります。」
― 国分北海道株式会社 島 様
配送面では、札幌から地方へ運ぶ荷物はあっても、地方から札幌へ戻る「帰り荷」を確保しにくいといった課題もあります。国分北海道では、運送会社と納品時間を調整するなど、倉庫内だけに閉じない改善も続けています。人手不足は「採用できるか」だけではなく、これからも北海道各地へ商品を届け続けられるかという物流の持続性そのものの問題になっています。
学び2:新設と既存センターでは、適した自動化の方法が違う
国分北海道では、新規拠点や比較的シンプルな業務を行う専用センターでは、大型マテハンの導入も選択肢として検討しています。一方、実際には既存センターが多く、それぞれ建物や業務条件が異なります。

「やはり既存のセンターが多いので、そこに対してはラピュタさんのような、人を補助するというか、一緒に働くような提案を入れていくのが現実的かなと思っています。」
― 国分北海道株式会社 島 様
札幌LC自身も築30〜40年規模の既存施設です。今回、大規模なレイアウト変更をせず、既存WMSや現在の出荷業務とすり合わせながらPA-AMRを導入できた経験は、「既存センターだから自動化できない」とは限らないことを示しています。すべてを一度に置き換えるのではなく、現場条件に合った自動化から段階的に仕事を変えていくという選択肢があります。
学び3:自動化設備の「導入」ではなく「継続改善を重ねる仕組み」をつくる
札幌LCでは、ラピュタPA-AMRを導入して作業を標準化し、そこで得られるデータを見ながら、人とロボット双方の運用を改善するサイクルが動き始めています。導入前の41 LPMHから2026年3月には97 LPMHを記録しており、今後も高水準での安定と更なる改善を目指して向上を続けています。
国分北海道ではこのほかにも、TMSを導入してトラックやドライバーの管理をデジタル化し、従来の手書き情報からデータを取得できる環境づくりを進めています。さらに、AIによる需要予測を活用し、予測物量から必要な人員などを割り出す取り組みも検討しています。
ラピュタPA-AMRは単発のロボット導入ではなく、物流現場をデータで把握し、継続的に改善できる運営へ変えていく一連の取り組みの一つです。国分北海道は、そこで得られる知識を現場のメンバー自身が学び、将来的なDX人材の育成にもつなげようとしています。

人の確保が難しくなっても、物流は止められない。
だからこそ、既存のセンターをすべて作り替えるのではなく、人とロボットが協働する形から作業を標準化し、そこで得られるデータを使って改善を続ける。国分北海道の札幌LCで始まった取り組みは、既存物流を持続可能な形へ変えていく一つの現実的な選択肢を示しています。