Use Case

導入して終わりではない。ラピュタPA-AMR活用と現場改善でピッキング生産性を2.5倍に。

Category:

お話を伺った方:

  • 株式会社アクタス SCM本部 ロジスティクス部 部長 南 栄一 様
  • DHLサプライチェーン・ジャパン株式会社 コンシューマー&リテール事業本部 オペレーションマネージャー 杉浦 郁美 様

Chapter 1|はじめに


変化し続ける事業を支えるために、物流も「変え続けられる」必要がある——

市場や顧客ニーズの変化は、いまや一部の企業だけが向き合う課題ではありません。とりわけファッションやインテリアなどのライフスタイル系小売では、市場トレンドや商品構成、販売チャネル、物量が短期間で移り変わり、商品開発から販売、物流まで、事業のほぼすべてがその変化に対応しながら前へ進む必要があります。

では、事業が変わり続ける中で、物流は具体的にどう変わり続ける必要があるのでしょうか。自動化は生産性を高めるための有力な手段である一方、自動化設備に現場が合わせ続けなければならない状態をつくれば、将来の変化に対する制約にもなり得ます。

事業成長を支える物流基盤をつくる

アクタスは、家具やインテリア雑貨、アパレル、グリーンなどライフスタイル全般を扱い、直営店やEC、卸売など複数のチャネルを展開しています。ラピュタPA-AMRの導入検討時には、今後の事業成長や新規出店を支える一方、従来オペレーションの延長では数年後に出荷能力の上限へ達することが予想されていました。店舗・ECを支える物流基盤の強化、出荷リードタイムの短縮、人員確保が難しくなる中での作業標準化などが、自動化検討の背景にありました。

今回の神奈川県相模原市の物流拠点では、荷主であるアクタスが物流全体をディレクションし、DHLが3PLとして現場オペレーションを担っています。株式会社アクタス SCM本部ロジスティクス部長の南 栄一様と、DHLサプライチェーン・ジャパン株式会社 コンシューマー&リテール事業本部 オペレーションマネージャーの杉浦 郁美様を中心に、現場の改善を継続してきました。

WMSとラピュタPA-AMRを組み合わせ、導入後も改善を続ける

ピッキング支援には、75Lオリコンに対応するラピュタPA-AMR 大容量モデル(導入時名称:ラピュタPA-AMR XL)を採用。すでに導入されていた株式会社ダイアログのWMS「W3 sirius」とAPI連携し、作業指示やピッキング実績をつなぐ仕組みを構築しました。プロジェクトには荷主としてアクタス、3PLとしてDHLサプライチェーン・ジャパン、WMSメーカーのダイアログ、そしてラピュタロボティクスが参画し、現場オペレーションとシステムを一体で設計しています。

ラピュタPA-AMRとWMSの連携により、帳票オペレーションや梱包工程への連携円滑化などを行う。

また、もう1つのポイントは「稼働開始=完成」としなかったことです。運用開始後も現場の課題を拾い、ラピュタとの月次定例会、データ分析、WMS連携の活用、機能改善を重ねながら、荷主であるアクタス、3PLであるDHL、そしてテクノロジーベンダーであるダイアログとラピュタロボティクスが一体となり、導入効果をさらに高めてきました。

本記事では、なぜこの自動化方式を選んだのか、稼働直後に何が起きたのか、現場へどう定着させ、その後どのように生産性を伸ばしたのかを、実際の取り組みとお客様の声から紹介します。

Chapter 2|エグゼクティブサマリ


相模原の物流拠点では、従来のカートピッキングから、小物商品をラピュタPA-AMR、大型商品をカートで処理するハイブリッド運用へ移行しました。すべてをロボット化するのではなく、商品特性やオペレーションに応じて人とロボットを使い分ける設計です。

アクタス|DHLサプライチェーン・ジャパン:ラピュタPA-AMR導入概要

  • 所在地:神奈川県相模原市(DHLサプライチェーン・ジャパン 相模原ロジスティクスセンター)
  • 事業内容:インテリア・家具・雑貨の小売・卸売等
  • ラピュタPA-AMR稼働開始:2024年9月
  • 主な取扱品目:インテリア雑貨・家具等
  • 対象エリア面積:約1,200㎡
  • 採用モデル:ラピュタPA-AMR大容量モデル
  • ラピュタPA-AMR導入台数:10台
  • 現場人員構成(導入前):レギュラー19名+スポット20〜25名/週
  • 現場人員構成(現在):レギュラー19名+スポット0名/週(2026年7月時点)
  • ピッキング生産性(導入前):46 LPMH
  • ピッキング生産性(稼働開始時):98 LPMH
  • ピッキング生産性(現在):115 LPMH(2026年7月時点)

導入前にはレギュラーメンバー19名に加え、週20〜25名程度のスポットワーカーを必要としていました。現在はレギュラー19名を中心に現場を運営し、スポットワーカーに依存しない体制へ変化しています。これは単純な人員数の変化だけではありません。都度の採用・教育負荷を抑え、業務に精通したレギュラーメンバーを中心に品質と生産性を高められる現場づくりにもつながっています。

画面上で視覚的に次の作業を指示するピッカーガイドシステム(PGS)。

ピッキング生産性は、導入前の46 LPMHから稼働開始時に98 LPMHへ大きく向上し、その後の継続改善によって現在は115 LPMHまで伸びています。重要なのは、この46→115 LPMHを一括して「ロボットを導入した効果」と捉えないことです。稼働開始時点ですでに大きな効果が得られ、その後さらに現場運用、データ活用、WMS連携、機能改善を重ねることで効果を伸ばしてきました。

Chapter 3|比較検討から稼働開始まで


「変化がないことがない」現場に、固定された自動化は合わない

(左)株式会社アクタス SCM本部 ロジスティクス部 部長 南栄一氏、(右)DHLサプライチェーン・
ジャパン株式会社コンシューマー&リテール事業本部 オペレーションマネージャー 杉浦郁美氏。

アクタスの物流では、商品サイズも出荷先も一様ではありません。店舗向けのB2BとEC向けのB2Cではオペレーションが異なり、出荷量によって日々の優先順位も変化します。DHL側でも、ラピュタPA-AMR導入以前から物量や現場状況に合わせて運用を変え続けていました。
そのため南様が重視したのは、「どこまで自動化できるか」だけではなく、「導入後も現場を変えられるか」という点でした。将来の業務変化が見えている中で、設備に現場を固定してしまえば、事業の変化に物流が追随しにくくなるからです。

選定思想:

すべてを自動化するのではなく、人・WMS・ラピュタPA-AMRがそれぞれ得意な役割を担い、状況に応じて運用を変えられることを重視。

歩行だけでなく、身体的負荷と付帯作業も改善したかった

ラピュタPA-AMRでは、ピッキング作業時に手ぶらでピッキングが行える。
これは作業効率向上だけでなく身体的負荷低減という現場では非常に意味のある利点。

導入前は、小物・大型商品を問わずスタッフがカートを押し、倉庫全体を一筆書きのように歩きながらピッキングしていました。導入前の計測では、作業時間の約34%が歩行、約10%が作業前準備に使われていました。

インタビューでは、ピッキングした商品を梱包ラインへ運ぶまでの身体的負荷も課題として語られています。腕にサポーターを着けながら働くスタッフもおり、「仕事は好きだが体力的には大変」という声があったことから、南様は早い段階からDHLへ自動化を相談していました。

導入前シミュレーションで投資判断の確実性を高める

南様は、ラピュタPA-AMRへの投資を検討する際、投資効果と中長期の運用を念頭に置いていたと言います。その中で、ラピュタが実施した導入前シミュレーションによって効果の確実性を高められたことが、導入を後押ししました。

選定では、導入前の丁寧なフォローだけでなく、導入後も改善を続けられるサポート体制を重視。加えて、店舗向けとEC向けでオーダーの割り当て方式を使い分けられる柔軟性や、75Lオリコンを搭載できる大容量モデルがアクタスの現場条件に合致しました。

「全部をロボットに任せない」仕組みをつくる

今回のシステムでは、すべての注文をラピュタPA-AMRへ自動的に流す設計にはしませんでした。WMS側で、どの注文をロボットへ流し、どの注文を人が処理するかを現場が判断できるようにしています。店舗やトラック単位の優先順位、切り戻しまで想定し、現場に「逃げ場」を残しました。

立ち上げ時は一度に大量のオーダーを流さず、1日30バッチ程度まで細かく区切りながら慎重に運用しました。柔軟な製品を選んだだけでなく、現場側でも「何か起きたときに戻せる」運用を設計したことが、安定稼働への土台になっています。

Chapter 4|現場定着までの苦労


現場は最初からロボットを拒否していたわけではない

自動化設備の導入では、「現場の作業者がロボットを受け入れてくれるか」が懸念されがちです。実際にこの現場でも、ロボットを「面白い」と受け止めてくれるスタッフがいた一方で、これまでの作業との勝手の違いに戸惑うスタッフもいました。しかし、アクタスの南様が掲げるビジョンの下、DHLの杉浦様はロボットを活用する現場への変化を進め、気が付けばシステム調整で一時的に止めた際には「ロボット動かないんですか」と聞かれるまでに現場は変わっていました。

「今ロボットがなかったら、逆にもうみんな辞めていっちゃうんじゃないかっていう状況にまでなっていますね。」

― DHLサプライチェーン・ジャパン 杉浦 様

現在はそこまで現場に定着しています。

「一言でいうと不便」―従来運用との差が現場のストレスに

現場が感じていたのは、ロボットそのものへの拒否感ではなく、従来の運用ではできていたことが、新しい仕組みではできなくなったことへの違和感でした。杉浦様は当時を「一言でいうと不便」と振り返ります。

代表的な課題が、ケース・ボール単位の商品で発生する数量ミスです。たとえば6個入りの商品を30個ピックする場合、導入初期には作業者が必要ケース数を自分で計算する必要がありました。1人が1日に何百ラインも処理する中で計算を繰り返すことは、大きなストレスとなり、数量ミスにもつながりました。

数量ミスに対し、マルチステップスキャンを実装

そこでラピュタロボティクスへ現場の声を伝え、ラピュタではこの問題が他の現場でも広く起こり得るものと判断。商品バーコードと数量バーコードを組み合わせて必要数をカウントできる「マルチステップスキャン」を開発し、実装しました。過不足があれば作業を完了できない仕組みにすることで、作業者が頭の中で数量を計算する必要を減らしています。杉浦様は、計算が不要になったことで誤出荷とストレスも減り、その結果として生産性も上がる「好循環」につながったと評価しています。

現在ラピュタPA-AMRに実装されている様々な生産性向上機能は、このようにカスタマーサクセスチームがお客様現場より伺ったご要望を起点に開発が始まったものも数多くあり、これがラピュタPA-AMRの独自性にもつながっています。

トート誤投入は「確認の1アクション」で減らす

もう一つの大きな課題が、上下2段の75Lオリコンを使う大容量モデルでの投入先トートの間違いでした。表示だけで作業者に注意を求めるのではなく、現場とラピュタで複数の改善案を検討。最終的には、画面上で投入先トートを点滅表示し、作業者自身がその位置を一度タップして確認してから投入する仕様へ変更することで、現場での「指差し確認」同様の効果を想定しました。

ピック商品は画面内で指定されるトートに投入し、指差し確認の要領で投入先トートの位置を
画面上でタップする必要がある。画像は上段のトート「A」に投入した図。

「あれね、本当に減ったんですよ。自分で1アクション入れるので、トートAで良いんだよねって意識できます。作業効率じゃなくて、確実性を1アクション入れたんですよね。」

― DHLサプライチェーン・ジャパン 杉浦 様

効率だけを考えれば、操作は一つでも少ない方がよいように見えます。しかしこのケースでは、あえて確認の1アクションを加えることで確実性を高めました。現場の実態から機能を見直した象徴的な例です。

設備側だけでなく、現場の時間軸も組み替える

現場定着には、ラピュタ側の機能改善だけでなく、DHL側のオペレーション変更も必要でした。ラピュタPA-AMRが稼働する時間帯はフォークリフト作業との干渉を避けるため、在庫補充やメンテナンスを遅番へ移し、まず全員で出荷を終わらせる。その後に全員で棚入れへ移るというように、作業の時間軸を大きく組み替えました。

「設備に現場を合わせる」のではなく、設備の特性を理解したうえで倉庫全体の仕事の組み方を見直す。こうした運用側の適応も、ラピュタPA-AMRを日常業務へ根付かせるうえで欠かせませんでした。

Chapter 5|ピッキング生産性の変遷


46 LPMHから98 LPMHへ。そして現在は115 LPMH

ラピュタPA-AMR導入前後の変化を時系列で見ると、この事例の特徴がよく分かります。時系列に応じた集計値では、ピッキング生産性は導入前の46 LPMHから、稼働開始時には98 LPMHへ向上。その後の継続改善を経て、現在は115 LPMHまで伸びています。次の目標は130 LPMHです。

導入前稼働開始時現在次の目標
46 LPMH98 LPMH115 LPMH130 LPMH

導入前から現在までを一本の矢印で結ぶのではなく、46→98 LPMHと、98→115 LPMHを分けて見ることが重要です。前者はラピュタPA-AMR導入による初期効果、後者は導入後に現場で「使いこなしてきた」ことで生まれた追加効果だからです。

導入時点|46→98 LPMH:歩く・探す・準備する時間を減らす

従来は作業者がカートを押して広い倉庫内を移動し、紙のピッキングリストを見ながら商品を探していました。ラピュタPA-AMRでは、作業者の担当範囲を限定し、次に向かうロケーションを画面で指示。複数オーダーを同時に処理し、ピッキングリストの印刷や配布といった準備作業も減らします。

インタビューでは、稼働初日から80 LPMH台後半が出ていたという現場の記憶も語られています。正式な比較値は集計値の98 LPMHを使用しますが、導入直後から効果を体感できたことが分かります。

98→115 LPMH:「同じAMRを入れても同じ結果にはならない」

しかし、この現場はそこで改善を止めませんでした。DHLは、同じラピュタPA-AMRを導入しても、オペレーションが伴わなければここまでの効果は実現できなかったと捉えています。そこで取り組んだのが、在庫配置、作業工程、スタッフの作業方法、WMSの情報活用まで含めた継続的な改善です。

改善1|在庫配置と作業工程を、ラピュタPA-AMRに合わせて磨く

ラピュタPA-AMRの走行ログやピッキングが発生したロケーションのデータを使い、出荷頻度や商品カテゴリーと突き合わせながら在庫配置を継続的に見直しました。ラピュタPA-AMRの走行距離を減らすだけでなく、倉庫全体としてどこに商品を置くべきかをデータで検討できるようになります。

また、Chapter 4で触れたシフト変更も「現場定着のための工夫」から、次第に倉庫全体の生産性を高める運用へ磨かれていきました。入荷、在庫メンテナンス、在庫補充の時間帯をずらし、出荷を優先。ラピュタPA-AMRの稼働終了後に全員で棚入れを行うなど、作業工程そのものを再設計しています。

改善2|データを「人の評価」ではなく、原因発見に使う

ラピュタPA-AMRでは、ユーザーIDごとにLPMH、棚前作業時間、歩行時間などを確認できます。数字を見ると、作業者ごとの生産性差は明確に表れます。しかしDHLが行ったのは、単純に「遅い人を指導する」ことではありませんでした。

まず実際の作業を観察する。すると、棚を整えていたり、トート内を丁寧に整理していたり、ロケーションで迷っていたりと、数字だけでは見えない理由が分かります。生産性が低いからといって、本人が怠けているとは限りません。むしろ、良かれと思って担当外の仕事までしているケースもありました。

改善3|「最速の人」ではなく、「誰でも再現できる人」を基準にする

杉浦様が「成功した」と感じている取り組みの一つが、作業を「型」にしたことです。ただし、最も速い作業者の動きをそのまま標準にしたわけではありません。複数の商品を器用に持ちながら素早くバーコードを読むような、個人の技能に依存するやり方は基準から外しました。

代わりに、誰でも無理なく再現できる方法を抽出し、トートへ入れる順番、バーコードを読む順番、ボタンを押す順番、一度に持つ量まで細かく標準化。まず必要最小限の作業に集中し、習熟したら次の作業を加えるという段階的なトレーニングも行いました。

「ワーカーさんたちがいかに考えることなく作業に集中できるか。その環境づくりが私たちの仕事かなっていうふうに思っています。」

― DHLサプライチェーン・ジャパン 杉浦 様

1つの実例としては、長期間70 LPMH前後で伸び悩んでいた作業者が、その後は100 LPMHを超える水準を安定して出せるようになったというエピソードもお話いただきました。個人に頑張りを求めるのではなく、迷いにくく、再現しやすい環境へ変えた結果です。

改善4|WMS×ラピュタPA-AMRで、判断そのものを標準化する

アクタスが扱う商品には、液体商品や小物など、ピッキング時に追加対応が必要なものがあります。液漏れ防止のため袋へ入れる、オリコン内でばらけないよう緩衝材を使う、といった作業です。

当初はこうした対応を作業者個人の判断に委ねていたため、「自分は対応しているから遅い」「あの人はやっていないから速い」といった違いが生まれていました。そこでW3 siriusの商品マスターに作業条件を登録し、その情報をラピュタPA-AMR側へ表示するよう連携。画面に表示されたら行い、表示されなければ行わない、というルールへ変えました。

杉浦様は、この改善によって「思考が1個減った」「ストレスが減った」「標準化された」と振り返っています。WMSとロボットの連携価値を、単なるデータ交換ではなく、現場の判断を減らして作業をそろえるところまで活用した例です。

改善5|月次定例で、課題を次の改善へ変える

アクタス・DHLとラピュタとは月次定例会を実施し、現場で起きている課題や要望、稼働データを継続して確認してきました。マルチステップスキャンや投入先トート確認UIのように、現場から出た具体的な課題を製品機能へ反映した例もあります。

課題を把握する。原因をデータと現場で確認する。運用または機能を変える。そして効果を見る。このサイクルを繰り返すことで、「保守」だけではなく、導入効果を最大化するためのカスタマーサクセスを実践してきました。

改善はピッキング工程の外にも波及する

効果はLPMHの数字だけに表れているわけではありません。以前はピッキング後の商品が後工程前に滞留する場面がありましたが、現在はB2B向けを中心に、ピッキングから後工程へスムーズに流れる状態がつくられています。ピッキングだけでなく、その次工程の梱包まで生産性向上が拡大しており、BtoBの梱包では当初50LPMH程度だった生産性が、現在は100LPMH程度まで向上しています。

実はこの現場では、店舗やディーラー向けのBtoBの出荷で梱包時検品を取り止めることで梱包工程での滞留、つまりボトルネックを解消する取り組みが行われています。ピッキングで生産性が向上しても、次工程との工程間で滞留が発生してしまうとボトルネックが工程間へ移動しただけで倉庫としての能力は変わりません。実際に梱包時の検品で何かしらの問題が検知されるのはコンマ数パーセントだったため、ラピュタPA-AMRでのピッキング時点で殆どのミスは潰せていたのです。

しかし、理論としては正しいとわかっていても、誤出荷のリスクなどを考えるとなかなか踏み切れない施策のようにも思えます。ラピュタロボティクスでアクタス案件をカスタマーサクセスとして支援する延澤は、荷主であるアクタスの南様の印象として、「課題解決に向けた暫定対策やご提案した新機能の試験も含め、まずやってみようという形で非常に柔軟でフットワーク軽く、動いていただける」と話しています。

「検品レスの運用にしても品質を落とすわけにはいきません。品質を落とさないために確認の1アクションを追加するという考え方もすぐに受け入れていただき、他のお客様にも展開できる好事例にもなっています。」

― ラピュタロボティクス カスタマーサクセス 延澤 雅史

こうした取り組みが奏功し、この現場ではピッキング生産性だけでなく、梱包工程の生産性も大きく向上しています。

Chapter 6|成功要因と本事例から得られる学び


成功要因はラピュタPA-AMR単体ではない

この事例を「高性能なロボットを導入したから成功した」と結論づけると、本当に重要な部分を見落としてしまいます。46→98 LPMHという初期効果にはラピュタPA-AMRの機能が大きく寄与しています。一方、そこから115 LPMHまで伸ばし、スポットワーカーに依存しない現場をつくった背景には、荷主、3PL、テクノロジーベンダーがそれぞれの専門性を持ち寄った継続改善がありました。

共通目標:生産性を高め、事業の変化と成長を支え続けられる物流現場をつくる
荷主|アクタス 方向づけ・事業判断・現場へのコミットメント3PL|DHL リテール物流知見・現場運用設計・改善の実行テクノロジー|ダイアログ+ラピュタ WMS・ロボット・データ・機能改善・継続支援

荷主:アクタス|3PLへ「丸投げ」せず、改善の当事者になる

アクタスとDHLには、ラピュタPA-AMR導入以前から、生産性をオープンに共有し、改善によって得られた成果を双方で分かち合う文化がありました。南様によると、改善への貢献に応じてゲインシェア率を考えるなど、「生産性を上げる」という方向だけでなく、その成果まで共有する関係を作っていたといいます。

南様自身も倉庫現場で働いた経験を持ち、現場作業者が何に困っているかまで深く把握しながらプロジェクトへ関与しています。それに加え、常に新たなソリューションに対するアンテナを高く張り続けて自社現場の改善に役立ちそうなものを探し続けています。本記事の取材時に驚いたのは、ラピュタPA-AMR導入前に手作業でピッキングを行っていた頃は、重量のあるものの運搬もあり身体的負荷もありました。南様はある女性スタッフがそうした業務でサポーターを付けて作業に当たっていることまで把握されており、身体的負荷の軽減も自動化検討の理由の1つになったそうです。

自動化に限らず、物流が事業の収益インフラとして機能する成功事例の成立に最も重要なことは、荷主が目標だけを提示して3PLやベンダーへ任せきるのではなく、改善の当事者として現場へコミットし続けていること自体が、継続改善の土台になっています。

「3PLに物流を委託される企業で、カスタマーサクセスの現場定例会に必ず毎回出席される荷主様は多くありません。南様は毎回出席されるだけでなく、現場の細かな運用や作業者の方1人1人のことまで把握されており、1つの目標が達成されれば次の目標を設定し、プロジェクトに関わる全社を引っ張るリーダーシップを発揮されていると感じます。」

― ラピュタロボティクス カスタマーサクセス 延澤 雅史

3PL:DHL|リテール物流の知見を、現場の改善へ変換する

DHLの現場には、リテール物流の経験を持つメンバーが多くいます。商品特性、店舗向け出荷、B2B/B2C、物量波動といった小売物流特有の条件を理解していることが、アクタスの現場に合わせた運用設計を進めるうえで一つの強みになっています。

その価値は、一般論としての「物流知識」ではなく、実際の改善行動に表れています。在庫配置、シフト、作業順序、教育方法まで細かく見直し、数字が低い作業者がいれば現場を観察して理由を探る。改善案を考えるだけでなく、現場で再現できる形へ落とし込み、チーム全体へ定着させました。

一般的には、工程ごとに役割分担を行い、各作業者が自身の担当領域に集中した方が生産性は上がると言われています。しかし杉浦様によると、少なくともこの現場では役割分担を明確にした場合と全員が流動的に動く場合と、どちらが目立って残業時間が長くなるという統計データは得られていないことから、1つの工程でのタスクが完了した際に別工程がまだ作業中であれば、全員でそれを終わらせるという現場としての一体感を重視する方針を採用しています。

「ここではすべてのタスクが他人事じゃない、というマインド的なところです。Eコマースが終わってなければ全員でEコマースを終わらせにいくというマインドを持った組織を作る。マネジメント側としてはいい形になってるなと思っています。」

― DHLサプライチェーン・ジャパン 杉浦 様

入荷・出荷を別々の仕事として分けてしまうのではなく、必要に応じて全員で一つの工程を終わらせる運営へ変えたことについて、杉浦様はチームマネジメント上も良い形になったと評価しています。

テクノロジーベンダー|現場を設備へ固定しない

ダイアログのW3 siriusとラピュタPA-AMRは、現場から判断をすべて奪う設計にはしていません。どの注文をラピュタPA-AMRへ流すか、どこを人で処理するか、店舗向けとEC向けをどう使い分けるかを、現場状況に応じて変更できる余地を残しました。

そしてラピュタは、稼働開始を支援の終点にせず、月次定例、データ確認、改善提案、UI変更や機能開発を通じて、導入後も効果を伸ばす側に立ち続けました。アクタスが導入時に期待していた「機能のアップデートや生産性向上のための施策」が、実際の運用の中で継続されています。

本事例から得られる3つの学び

1つ目は、変化を止めない自動化を選ぶことです。事業が変われば、物流も変わります。物流が変わるなら、自動化設備もその変更を受け入れられる必要があります。

2つ目は、稼働開始を完成ではなく改善のスタートと捉えることです。ラピュタPA-AMRの導入時点で一定の効果は得られますが、現場データと実運用を使った改善によって、その効果をさらに伸ばす余地があります。

3つ目は、自動化をベンダーへ任せきらないことです。荷主、3PL、テクノロジーベンダーが同じ数字を見て、同じ目標へ向かい、それぞれが自分たちの専門領域から改善責任を持つ。今回の成果は、その関係が機能した結果といえます。

この3つの学びを象徴する、少し面白いエピソードがあります。先述の通り、アクタスの南様は現場の作業者1人1人のことまで把握されていますが、実は生産性の継続的向上における大きな課題の1つは「人」でした。ピッキング時に棚前作業を行うこの現場では、特に棚前作業時間において個人差が大きく、人員教育に非常に力を入れているDHL杉浦様が苦労されてきた点にもなっています。

ラピュタロボティクスのカスタマーサクセス定例会資料には「課題人員の生産性推移」という、一見すると少し怖いページがあります。しかし、これは相対的に低い生産性を記録している作業者を責めるためにあるものではなく、荷主・3PL・テクノロジーベンダーの3社が協業し、具体的にどういうトレーニングをすべきか、そしてその成果に関係者全員で取り組むためにあるものです。その結果、本記事内でもいくつか触れているような人員教育の成果が得られています。

自動化の現場定例会で多くの時間を割いて議論されるのが「人」に関するトピックであることは、意外なことでもありますが、こうした南様のコミットメントと杉浦様の継続的な改善を続ける強固な意志、そしてそれを支えるテクノロジーベンダーが三位一体となって機能している証拠なのかも知れません。

115 LPMHは完成値ではなく、次のスタート地点

現在のピッキング生産性は115 LPMH。現場はすでに130 LPMHという次の目標を見ています。

本事例の価値は、115 LPMHという数字だけではありません。導入した設備を使い倒し、現場・システム・ロボットを継続的に変えながら、さらに上を目指せる仕組みそのものを作ったことにあります。

変化が常態となった事業環境では、物流自動化も一度つくった完成形を守り続けるのではなく、事業と現場の変化に適応し続けられることが重要です。アクタスとDHLの取り組みは、そのために必要なのが「柔軟なテクノロジー」だけではなく、共通目標に向かって改善を続けるパートナーシップであることを示しています。

荷主のオーナーシップとそれに応える3PL

アクタス南様は、自社の中期経営計画で掲げられた将来の目標売上達成を下支えする収益インフラを整備するため、他社任せにするのではなくDHL杉浦様をパートナーとしながら、ダイアログやラピュタロボティクスのようなソリューション提供会社から現場を向上する解決策を引き出し、オーナーシップとリーダーシップを示しながら、関係者が1つの同じ目標に向かって進み続ける「チーム」を作ってきました。

それは「自動化の成功」という各論で捉えるのではなく、中期経営計画実現のための企業としてのビジネスゴール達成という総論で捉えられています。ラピュタPA-AMR導入の成功は、より大きな事業としての成功への道筋の通過点です。倉庫自動化は、そうしたより大きな流れの中から見る視点も重要です。

導入事例

日本出版販売株式会社

Category:
SOLUTION

株式会社アルプス物流

Category:
SOLUTION

東和薬品株式会社

Category:
SOLUTION

ホンダロジコム株式会社

Category:
SOLUTION