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自動倉庫の評価点 #1:既存倉庫/工場への導入時に見るべきポイントは?

日付: 2024-09-24
カテゴリー: ブログ, プロダクト

グリーンフィールド vs ブラウンフィールド

これまで自動倉庫は、主に新たな倉庫や工場を新規で建設する際に導入されるのが一般的でしたが、近年では自在型自動倉庫ラピュタASRSのように既存の現場にも導入できるものも登場しています。工場や倉庫、あるいはインフラ建設などでは「グリーンフィールド(Greenfield)」や「ブラウンフィールド(Brownfield)」という用語がありますが、前者はまだ整地されていない手付かずの土地という意味で、後者は既に整地・建築が為された跡地という意味で用いられていましたが、現在では様々な分野で「何も手が付けられていない状態」をグリーンフィールド、「既存施設やシステム内、またはその跡」をブラウンフィールドと呼ばれています。

本記事では、その自在型自動倉庫「ラピュタASRS」のようなブラウンフィールド(既存現場)への導入にも対応する自動倉庫を選定する際に見るべきポイントをまとめていきます。

ラピュタASRS 高さ空間の活用で保管効率を向上

ポイント1:現場に応じたレイアウトが可能か

自動倉庫は例外なく、ある程度以上のスペースが必要となるためブラウンフィールドプロジェクトとして既存現場に導入する場合は、柱型や梁型などを含めた倉庫/工場の内部形状、既設の設備機器の配置、人や物の動線、現場オペレーションなど様々な制約を考慮してレイアウトを決定することになります。

自動倉庫には現在、様々な方式のものが存在し、レイアウトの柔軟性も各製品ごとにかなりの幅があります。上述のように建物の内部形状や既設の設備、オペレーションに応じたレイアウトが可能かどうかは比較的簡単に見極めることができるでしょう。以下では、もう一歩踏み込んだ評価ポイントをご紹介します。

空間を有効活用する「保管効率」の前提条件

自動倉庫導入の背景として、多くのお客様が挙げるのが「空間を有効活用したい」という点です。一般的には、空間の活用効率を阻害するロスとして以下の3種のロスが挙げられます。

  • 平面ロス:平面図に表れるロス。レイアウト上の無駄や通路スペースなどによるロス。
  • 高さロス:文字通り高さ方向のロス。棚最上部と天井の間に存在する活用できていないスペース。
  • 山欠けロス:主に商品が出荷されたり在庫が減少することで棚の内部で発生する空間ロス。

多くの自動倉庫は、製品によって程度の差はあるものの、上記3種の空間ロスすべての削減に役立つものと位置付けられます。ところが、ここで留意すべきポイントは「きれいに自動倉庫が配置できた前提での保管効率」と「現実の現場形状に即したレイアウトを行った場合の保管効率」に大きな差がないか、ということです。自動倉庫の中にはきれいな直方体形状に構築する前提の製品や、一定の制約条件に基づいて専用棚を配置する必要がある製品が存在し、必ずしも現場の内部形状に高水準でフィットするとは限りません。そのため、自動倉庫を設置したいスペースに障害物となるような柱型・梁型、あるいは中2階(メザニン)などが無ければ製品のコンセプト通りに設置できる可能性は高くなりますが、そうでない場合は「理想と現実の差」が実際の保管能力・保管効率の阻害要因となってしまいます。

ラピュタASRSは柱型、梁型、中2階などに応じて現場に完璧にフィットする。

自在型自動倉庫「ラピュタASRS」では、独自のブロック構造によって既存現場の内部形状に合わせて平面上も立体上も自由な形状にレイアウトが行えるため、単なる自動倉庫製品内での保管効率ではなく、その倉庫や工場の内部空間全体の中での、実際の保管効率を向上させることが可能です。

フロアや防火区画をまたいだ設置

また、ラピュタASRSの大きな特徴の一つに、フロアをまたいで設置して1台の自動倉庫として運用できる、という点があります。2024年7月に稼働を開始した株式会社ホビーリンク・ジャパン様の現場では、天井高2m70cm程度の一般的なフロアで1階と2階の両方にラピュタASRSを設置し、更に隣接する吹き抜けスペースにも設置し、それら全てを連結することで断面図でコの字型となるような1台の自動倉庫として運用されています。加えて、このようなケースでは当然、防火区画をまたいだ設置となりますが、ラピュタASRSでは「ロボットは通過できるが防火シャッターは通す」という特殊な部材を開発し、防火区画をまたいだ設置にも対応。消防検査にも合格しています。詳細はこちらの記事にてご確認いただけます。

ポイント2:床の状態とレベル

自動倉庫の導入検討を進める際に、意外と見落としがちなのが現場の床の状態です。多くの自動倉庫はアンカー工事をはじめとした床工事を要するため、床面もフラットで凹凸がないことが望ましいのですが、製品によっては床面に対する要求事項が非常にシビアなものも存在します。この要求事項に現場が適合しない場合は、別途要求事項を満たすための床工事を行う必要があり、当然その分のコストと工期がプラスアルファで必要となります。

自在型自動倉庫「ラピュタASRS」では、開発当初から既存倉庫や工場への導入を視野に入れており、この床面状態への要求事項を緩和する仕様が自動倉庫の基礎となるベースブロックに施されています。

ラピュタASRS 床レベル調整機能
ラピュタASRSではベースブロックのゴム足内に金属製のシムを入れることでレベル調整を行う。

ラピュタASRSのベースブロックはゴム製のカバーを履いていますが、上画像のようにゴム足内に金属製のシムを仕込むことで床レベルの調整を行います。この機構により、設置場所全体で±20mm以内であれば対応可能という自動倉庫としては破格の床レベル対応性能を実現しています。

ポイント3:天井高と建築基準法

自動倉庫は高さ方向の空間を効果的に活用する点が最大の利点の1つではあるものの、現場要件によってはそもそもの天井高が3メートル程度しかない等といったケースも多く見られます。中にはメザニンを設置しているスペースがあり、その部分の天井高はもっと低いという場合もあります。

このようなケースではまず、「設置できるかできないか」というよりも「ROI(投資対効果)が合うかどうか」という点が焦点となるでしょう。自動倉庫は高さを含めた空間を最大限有効活用しながら従来以下の人数で同等以上の生産性を得ることがキーとなりますが、天井高が低い現場ではそもそもの保管能力に制約があるため、自動倉庫の投資に見合った導入効果が得られるか、あるいは社内で規定されている回収期間内に投資回収が行えるか、という点が論点となります。

ラピュタASRSは自由な形状にレイアウトが行えるため、技術的には3メートル未満の天井高であっても問題なく設置することができますが、上述のように投資対効果の観点でお客様がどの程度のメリットを得られるかという点がキーポイントとなるでしょう。また、真逆の高さ上限については、部材の強度という意味では20階層(630mmの通常ポール使用時)まで積み上げることが可能です。一方で、マッチ棒のように細長い形状で建ててしまうと、特に地震発生時などを想定した際の安定性に懸念が出てしまうため、実際には現場の床耐荷重なども考慮した上で一定のバランス基準を満たした躯体構成をご提案する形となります。

ポイント4:電源

殆どの自動倉庫は、工場等で使用される三相200Vで運用します。そのため既存現場で三相200V電源を使用されていない場合は200V電源用の追加の電気工事が必要となり、300万円~となるキュービクルの設置工事も併せて必要となる場合があります。また、ボルテージの問題だけでなく電気容量の問題もあるため、自動倉庫の設置には殆どの場合何らかの電気工事が必要となります。場合によっては屋外の幹線からの引き込み工事や電力会社との契約変更も必要となるため、イニシャルコストだけでなくランニングコストにも影響があることは覚えておきましょう。

ラピュタASRSは、多くの自動倉庫と違い、家庭用コンセントと同様の単相100V電源のみで稼働します。現場の現状やプロジェクトの規模によっては従来の自動倉庫同様に電気容量の拡幅工事が必要になる場合がありますが、三相200V電源を使用する場合と比べて導入時のイニシャルコストにおいてもランニングコストにおいても、多くの場合でメリットがあります。

ポイント5:地震対策

自動倉庫には海外メーカーの製品が多くなっていますが、日本には特有の懸念事項があります。地震です。日本企業であるラピュタロボティクスは、この自在型自動倉庫ラピュタASRSを開発する際に、当初から地震に対してどのような対策を講じるかの検討を重ねてきました。地震対策と言えば、かつては躯体の剛性を可能な限り高くすることで地震の揺れエネルギーに耐える「耐震」の考え方が主流でした。柱と梁の交点にブレースを設置する耐震工事は有名です。

しかしこと自動倉庫に関しては、地震から守るべきは躯体だけではなく、自動倉庫内に保管されている商品も(場合によっては躯体以上に)重要です。そのためラピュタASRSでは、アンカー工事が不要なアンカーレス構造とし、タワーマンション同様の「免振」機能を採用しています。その背景には先述の通り地震のエネルギーを躯体全体で共揺れして逃がすことで、ラピュタASRS内に保管されている商品をも守るという点を重視しているからで、これは地震大国である日本メーカーならではの視点ではないかと考えています。

ラピュタASRSはタワーマンションと同じ免震構造で、躯体の損傷だけでなくラピュタASRS内の商品を守ることを第一に設計されている。

地震への備えもその一環ですが、自在型自動倉庫「ラピュタASRS」には中長期的なリスクを低減する工夫が随所に施されています。大掛かりな工事を行って固定設備として導入する従来の自動倉庫とは違い、アンカー工事が不要な「据え置き型」の自動倉庫であるラピュタASRSは、単に自由な形状にレイアウトできるというだけでなく、外部環境の変化に対応すべく他拠点に移設することも可能です。お客様へのご提案時には、ラピュタロボティクスのエキスパートが投資対効果も試算してご提示していますが、ROIとは別の観点で、中長期的なリスクにも配慮した設備投資という意味で、自在型自動倉庫「ラピュタASRS」には、他の自動倉庫にはない強みがあるのです。

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ラピュタロボティクスでは、自動倉庫やそれに準じる倉庫自動化ソリューションの導入にあたって、無料個別相談を承っております。数多くの方式が存在する自動倉庫の客観的な特徴や現場ごとの向き不向きによる選定支援など、自動倉庫導入や倉庫自動化ソリューション選定の際にはお気軽にご相談ください。

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