
アジアで最大級の規模となる物流・ロジスティクスに関する展示会「国際物流総合展2023 第3回 INNOVATION EXPO」が、9月13日から3日間の日程で、東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催されました。
前編に引き続き、後編では、注目を集めていた自動倉庫を紹介していきます。
前編はこちら
自動化の最大効率ソリューション「自動倉庫」の最新事情
今回の物流展では、自動倉庫の大掛かりなデモンストレーションを多数見ることができました。
自動倉庫は、ピッキング商品が自動で人の方へと運ばれる「GTP(Goods To Person)」とも呼ばれる形式。ロボットが専用コンテナ(ビン)を取り出して、人間のオペレーターが待つワークステーションにビンごと運びます。基本的にオペレーターは定位置から動かず、運ばれたビンから、目的の商品をピッキングするだけです。そのため物流自動化の選択肢中では、トータルで見た場合にもっとも生産効率が高いソリューションだとも言われています。またフルフィルメントシステムとして、大手アパレルやECショップなどでもすでに導入されていてすでに高効率の実績を出しており、導入を検討するにあたっては自社との比較ができる情報も多くあります。また新設倉庫で構築されるケースが多いのも特徴です。
そんな自動倉庫の展示のなかで注目したブースをいくつかピックアップしましょう。
■自動倉庫のパイオニア「AutoStore」
ノルウェーに本社を置く自動倉庫のパイオニアが「AutoStore」です。倉庫の空間を縦横で目一杯に使って設計される、キューブ型自動倉庫が特徴。3サイズのビン(49㎥、75㎥、102㎥)をスペースの無駄なく収納でき、同スペースで比較して約4倍の在庫を高密度に保管できます。その中をロボットが動き回ってビンを取り出し、「ポート」と呼ばれるワークステーションに輸送します。
担当者によると、世界各地の1250ヶ所以上で導入されているとのことですが、現在は特注の構造部材をポーランド工場から船便で輸送しているそう。設置工事は平均して10~14週で、オーダーからは平均して1年ほどで稼働開始が可能とのことです。
■大手アパレルブランドも採用するフランス発のGTP「SKYPOD」
2015年にフランスで設立したEXOTEC社が開発する、3次元で走行するロボットを使った自動倉庫です。
AutoStoreとの違いはロボットの動きです。スーツケースほどの大きさのロボットは床面を動くだけでなく、高さ12mほどのシンプルな構造のラックの側面を上下に昇降し、ビンの出し入れを行います。
スタッフはステーションの前でビンの到着を待つだけで、ピッキングと梱包作業に集中できるというわけです。ロボットの可搬重量は30kgほど。
また上下の動きができるので、倉庫や空間の形状を問わず、保管容量の拡大なども容易です。
また固定ラックは電源が不要な設計なのも特徴です。
導入事例としては、ユニクロを展開するファーストリテイリング、ヨドバシカメラなどの大手EC倉庫でも採用。大手アパレルの直販ECからモール型ECまで、多くの国内実績がある、注目の自動倉庫です。
■AGVが棚を運んで高密度保管!ギークプラス「PopPick」
AMRの世界シェアでトップを走るギークプラスは、昨年発表した棚自動搬送システム「PopPick」のバージョンアップ版を展示していました。
AutoStoreやSkypodのような、棚を固定するタイプのGTPシステムに対して、PopPickは、商品を納めた大きな縦型棚の下に大型AGVが潜り込み、棚ごと下から持ち上げて移動。出荷対象製品が入った棚ごと作業者のもとへ運びピッキングを行います。
ロボットが棚を自動で整列し、コンテナ間距離20mmで保管ができるため、スペースを活かした高い収納性が特徴です。
ラピュタが自動倉庫の常識を覆す!
低コスト設営が可能な本格的な自動倉庫を展示
倉庫自動化の選択肢の中では、時間あたりの搬送パフォーマンスが最大化できると言われる固定ラック型の自動倉庫。採用する際は、新規の倉庫立ち上げ時に導入するケースがほとんどです。そのため、自動倉庫は既存倉庫への導入や、賃貸物件での導入は難しいとされてきました。
この弱点を解決した自動倉庫を、ラピュタロボティクスが今回の物流展で初めて実機展示しました。その名も「ラピュタASRS」。
最大の特徴は、ラックが簡単に設営できるモジュールを採用していること。たった3つの軽量&頑丈なパーツの組み合わせで、ラックの枠組が構成されていて、組み立てにはネジやボルトが不要。基部もアンカー固定が不要な設計で、短期間での導入が実現しました。
またポールとプレートを使って、L字形やコの字形など、運用形態に合わせた立体倉庫を自由な形状に構築することも可能で、あらゆる倉庫形状に対応します。またアンカー固定をしないので、撤収や再設置なども比較的容易で、既存倉庫や賃貸物件での設置も可能となりました。
簡単に設営できますが、組み上がったラックは耐久性抜群で、免震構造をとりいれた地震対策もなされています。
今回の物流展では、このラック内に、縦横無尽に動き回る薄さがわずか8cmのコンパクトな搬送ロボットが配置。3段階に調整できるビン(オリコンやダンボールを載せる運用にも対応!)を取り出し、ワークステーションまで搬送するデモを行いました。可搬重量も40kgまで取り扱い可能です。
またソフトウェア面でも大きな特徴があります。すでに各地の倉庫で導入し活躍している「ラピュタPA-AMR」で培った協調アルゴリズムが活用されており、300台以上の搬送ロボットと、ラック内のエレベーターでの協調制御も可能。複数ロボットを同時に制御することで、保管、ピッキング、仕分け、荷合わせといった幅広い出庫プロセスがスムーズに対応でき、効率的な倉庫内環境を簡単に作り上げることができます。
効率の最大化を図りながら、どんな倉庫にも形を変えて導入できるソリューションとして、中小規模の倉庫を自動化するうえでも、有力な選択肢になってきますね。