北海道の医薬品・医療機器の業界で初導入!
業界特有の課題をクリアしながら省人化・効率化を実現
物流倉庫の改善を目指して協働ロボットの導入を検討されている企業担当の方々にとって、実際に導入を進めている企業の事例はとても参考になります。ここでは実際のラピュタPA-AMR導入事例について、インタビューを交えて「AMR導入のホントのところ」をご紹介していきます。
株式会社ほくやく 札幌支店
業種:医療用医薬品・一般用医薬品・医療機器等の卸売
AMR導入台数:13台
AMR稼働日:2023年11月〜
今回ご紹介するのは、北海道全域に拠点を構え、医薬品や医療機器等の卸売をする「株式会社ほくやく」札幌支店で「ラピュタPA-AMR」を導入した事例です。
人の命にも関わることのある医薬品・医療機器の業界では、安定した物流の確保が最優先。災害時でも医薬品を確実に納品することが求められます。
札幌支店ではこれまで時に約10Kgにもなるカートを押しながら人力でピッキング作業を行ってきました。しかし、新築移転することが決まり、倉庫のフロアが従来より3倍近く広くなることに。従来のやり方でピッキングを行うことが難しいことは目に見えていました。
そこで、スタッフの身体的負担の軽減や業務の効率化を目指しAMRの導入に踏み切りました。そして現在では旧社屋から3倍近くの広さになった新社屋にて、目標通りスタッフの負担や効率化を叶えることができたそうです。
今回は、検討段階から導入まで、プロジェクトの中心として動いた担当者お二人に、医薬品業界ならではの課題やラピュタPA-AMR導入の進め方・結果などを、Q&A形式でお伺いしました。
<お話を伺った方>
高尾 伸一さん(写真上)/株式会社ほくやく 管理本部 物流部 部長
秋田 実次さん(写真下)/株式会社ほくやく 札幌支店 次長 兼 管理1課 課長(2024年10月取材時)
INDEX
- GS1コードへの対応
- 自動化機器を検討した背景
- ラピュタPA-AMRを導入した理由と経緯
- 北海道の医薬品業界で初のAMR導入
- 現場からの声
- スタッフのトレーニングについて
- ラピュタのサポート体制について
- メリット・デメリット
- AMRが活躍できると考えられる倉庫環境
Q.医薬品・医療機器業界で自動化機器を導入する際の必要条件について教えてください。
高尾さん:医薬品・医療機器は人の命にも関わってくるものですので、まずは安定した物流の確保が最優先です。特に災害時でも医薬品を確実に納品できる体制を整える必要があります。次に、医薬品は見た目(パッケージ)が似ている商品が多いため、誤った商品を納品しないためのピッキング精度も重要。さらに医薬品の保管には温度管理が必要な商品もあるため、こちらへの対応も必要です。
そして業界全体の課題としては、労働人口減少に対応し、属人化しない体制を整えることが必須と考えています。
秋田さん:医薬品の現場ではGS1コード※はほぼ必須のようなもので、あらゆるメーカーがGS1コードで商品を管理しています。今回の導入は、GS1コードに対応できるようにラピュタさんがカスタマイズしてくれたことが非常に大きいです。GS1コード対応ができなければ、ラピュタのAMRは採用されていなかったと思います。
※GS1コード・・・医薬品業界で、製品の一貫性、トレーサビリティ、安全性を確保するために重要な役割を果たすバーコード。日本の薬機法などにより、GS1コードの使用は義務化されている。
Q.自動化機器を検討した背景についてお聞かせください。
高尾さん:当社グループの企業理念として「北海道に根ざした総合ヘルスケア企業グループとして、健康を願う人々を支えつづける」という使命があります。私たちは道内に19の拠点を構えており、それぞれの拠点で業務を平準化することが課題でした。また、将来的な人手不足を見越して、労働人口の減少に対応し、人に依存しない省人化を進める必要がありました。労働人口の確保に関しては、勤務日を選択しやすい環境を整え、採用の幅を広げるなど工夫をしていましたが、それでも物流業務は人手が必要なため、いつも人員確保に苦労していました。
そんな中、札幌支店が新築移転することが決まり、倉庫のフロアが従来よりも3倍近く広くなることになったため、労働環境の改善が急務となったのです。
Q.ラピュタPA-AMRを導入した理由と経緯についてお聞かせください。
高尾さん:もともと弊社は年に数回、東京や札幌で開催される物流展に参加し、様々な企業や業者とのつながりを通じて情報交換をしながら自動化機器をはじめ様々な情報を集めていました。その物流展でラピュタさんのAMRに興味を持ったのが最初のきっかけです。その後はラピュタさんのホームページを見たり、YouTubeで導入企業の事例を確認しながら、弊社の物流倉庫に導入できるかを検討していました。そして2022年8月にラピュタさんの本社でデモ機を拝見させていただきました。ここから本格的に導入の検討が始まりました。
Q.社内で稟議を進める際に、苦労された点はありましたか?
高尾さん:社内ではAMRの導入に反対する声はありませんでしたが「本当に大丈夫なのか?」という不安の声はありました。当時、道内では医薬品業界でのAMR導入実績がなく、比較対象もなかったため、理論上でしか説明できず、エビデンスを提示することが難しかったのです。
そこで、ラピュタさんと相談し、現地での実機検証を実施。この実機検証で得たデータが説得材料となり、エビデンスとして活用することで、役員にも納得してもらうことができました。
Q.ラピュタのAMRを導入することになった決め手についてお聞かせください。
高尾さん:先ほどお話ししたGS1コードへの対応は大前提として、それ以外に決め手は大きく分けて3つあります。1つ目がオンプレミスではなくサブスクリプション形式で、事業環境に応じて導入台数を柔軟に変更できる点。2つ目がマルチピッキングが可能で、作業効率の向上が期待できた点。そして3つ目がアップデートにより常に最新バージョンを利用できる点です。
また、AIロボットなので倉庫毎の特徴(物流波動 =閑散期/多忙期、倉庫面積の広狭/ 棚の配置など)を学習しながら、時間と共に個々の倉庫に最適な物流動線に合わせた成長をするロボットである点も、重要な評価ポイントとなりました。
Q.従来のピッキング方式はどのようなものでしたか?
秋田さん:弊社の従来のピッキング方式は、時に約10kgほどになるピッキングカートを押しながらスタッフたちがハンディターミナルに入力しつつピッキングしていくというものでした。しかし、新築移転により倉庫フロアが3倍近く広くなると、スタッフの身体的負担が増大し、作業効率にも影響がでることは明らかでした。
AMR導入後は手ぶらで作業できるようになり、身体的負担が大幅に軽減されたという意見が多かったです。特に女性社員からの喜びの声が多かったですね。
Q.AMRのスタッフトレーニングは、どのように進めましたか?
秋田さん:導入直後は「AMRを操作する際のタッチパネルに慣れるのに少し時間がかかる」という声が現場から上がってきました。そこで1ヶ月ほど、社員が現場に慣れていないスタッフに操作方法をレクチャーしました。その際、操作に慣れているスタッフが慣れていないスタッフにレクチャーするという選択肢もありましたが、弊社では教育の統一性を図るために社員が直接教えるという方法を採りました。
Q.ラピュタのサポート体制について感じたことをお聞かせください。
高尾さん:まずAMRの導入が非常にスムーズだと感じました。要件定義の際にもこちらの要望に応えていただきましたし、トラブルがあっても担当者が真剣に向き合い、解決してくれましたので、導入までそれほど時間がかからなかったという印象です。
そして弊社の要望に対して、柔軟にシステムをカスタマイズしてくれる点が非常にありがたかったです。実際にこれまで「無理です」と言われたことはほとんどありません。ラピュタさんのこの対応力は非常に助かっています。
海外メーカーの場合、国内に開発部門がないことが多く、トラブルが起きるとそのまま放置されるという話も聞きます。国内メーカーであるラピュタさんは北海道にもサポートチームが駐在し、必要な時には現場に直接サポートに来てくれるため、トラブルを想定した際にも非常に心強いです。
Q.ラピュタAMRのメリット・デメリットについてお聞かせください。
秋田さん:メリットはシステムの柔軟性ですね。弊社の使い方に応じて常にカスタマイズしてくれる点が非常に助かっています。当初はGS1コードの読み取りに苦労しましたが、それについても常に対応していただき、スムーズに読み取りできるようにしていただきました。また、ロット・期限の読み取りにも対応してくれたことで、ピッキングの精度が飛躍的に向上しました。作業者ごとの実績データが細かく取得できるため、データを分析し、改善の検討や現場への反映が可能になっている点もメリットですね。
実際に導入してから気づいたメリットとしては、ガイド機能とダッシュボード管理による可視化が、想定以上の効率化をもたらしました。従来は人的采配が業務指示の主な手段でしたが、AMRのガイド機能で作業を自動化し、ダッシュボードで業務の進捗状況を一括管理できるようになったため、全体を把握しやすくなりました。これにより大幅な効率化が実現できたと思います。
デメリットというほどではありませんが、強いて言えば人をロボットに置き換えることで、人員の配置や作業のタイムスケジュールを抜本的に再構築する必要があった点です。ただ、労力はかかりましたが全体の業務を見直しする良い機会になったと考えています。
Q.導入を経験した立場から見て「AMRが活躍できると考えられる倉庫環境」のポイントについてお聞かせください。
秋田さん:倉庫の広さが前提になると考えています。ある程度広い倉庫であれば、AMRのメリットが十分に発揮されるのではないでしょうか。弊社ではAMRを走行させるための通路幅を確保しながら、ロボットの作業効率を上げるために、頻度の高い商品の配置を工夫するようにしています。
高尾さん:冒頭でもお話しましたが、弊社では物流拠点19カ所の業務の平準化が大きな課題だと考えています。以前、自動倉庫化も検討したことがありますが、19拠点に対応できるものを優先し、結果的にラピュタさんのAMRが最適と判断しました。現在、函館支店でのラピュタAMRの導入準備を進めており、2024年11月の稼働を目指しています。