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2024年問題以降の物流危機
第2回:物流危機をチャンスに変える「自動化」投資と基準

日付: 2024-04-04
カテゴリー: ブログ

働き方改革法によって2024年4月から施行される「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」。これによって生まれるさまざまな課題が懸念されています。この物流・運送業界の「2024年問題」を乗り越えるためのヒントを、欧州を代表する経営戦略コンサルティングファームである株式会社ローランド・ベルガー の小野塚 征志さんに伺いました。
「物流クライシスによっておこるこれからの日本」と「物流自動化への投資基準」という観点でお伺いしたインタビューを、3回にわたってご紹介していきます。前回は、2024年問題が物流業界に引き起こす「深刻な人材不足」が日本の経済危機を招きかねないというお話でした。
2回目となる今回は、これを踏まえて、2024年問題を乗り越えるための「物流の自動化」に投資するタイミングや、その判断基準について伺いました。


■小野塚さんプロフィール

profile
小野塚 征志
株式会社ローランド・ベルガー パートナー

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、日系シンクタンク、システムインテグレーターを経て現職。
サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。
内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員などを歴任。
近著に、『ロジスティクス4.0 −物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ −次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル −80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。


自動化への投資が生み出す「費用対効果+α」の価値

Q.小野塚さんの著書『ロジスティクス4.0:物流の創造的革新 』(日本経済新聞出版)でも予測されているように、人手不足に苦しむ物流業界は、ロジスティクス4.0(=装置産業化)へと進んでいくと思いますが、その前段階にある「ロジスティクス3.0」、すなわち「物流のシステム化」を進めることにも悩みを抱えている企業はまだ多いと考えられます。具体的に物流のシステム化や、自動機器を導入していく現場はどのように思考し、行動を起こせば良いのでしょうか? 
まずはコンサルタントとして見てきたご経験から、システム化・自動化の「投資判断基準」を教えてください。

小野塚 たとえば自動化への投資を行った結果、100人でやっていた仕事が50人になりました、とか、紙からデジタルで処理されるようになったことで事務作業者が30人から10人に減りました、となったときには、基本的にはまず人件費が削減されていきます。仮に、月当たりで20人分のコストが年間で1億円下がったとします。投資総額が10億円だとして、約10年で回収できそうだ…という考え方で意思決定をしていきます。5年がいいのか10年なのかは各社さまざまですが、ひとつの大前提として、投資に対して「一定期間で回収が見込めるものに関しては投資をすべきである」というのが基本のキとなる考え方です。
物流センターの自動化については、これに加えてさらにふたつほど考えておくべきポイントがあります。

まずひとつは、自動化によって労働環境が改善されるような現場では「自動化の副次的効果」が発生するということです。
重いものを運ぶつらい仕事はロボットで、人間は人間にしかできないクリエイティブな仕事ができる…となれば、無論、働く人のモチベーションも変わっていきます。その結果「この会社は労働環境が良い」というイメージが生まれ、採用率と定着率の向上につながっていきます。定着率が下がると新規採用を常に行わねばならないから、コストの面で見れば、人材会社への報酬や広告費などの「採用コスト」がかかっていくことになります。もし自動化して定着率が上がったことで採用コストが浮けば、ほかの有用な投資にまわすことができます。
もうひとつは、「人件費は上がり続ける可能性がある」ということです。先ほどの例でいう1億円×10年で投資を回収するというのは、あくまで「今の人件費」で試算したものです。ここで考えなければいけないのは、今後は「確実に人手不足になる」ということです。こうなると指数関数的に人件費が上がっていって、集めようと思っても人が集まらなくなっている可能性もあります。将来的には年間1億円は2億円になっているかもしれません。現実的には、人件費がどこまで上がるかは誰にもわからないですし、定着率も完全に計算できるわけではありません。
それでも極端な話で、設備投資分と人件費がアップすることを見込んだ回収分が、投資に対してプラマイゼロだとしても、「働く環境が大きく変わる」ことで得られる「副次的効果」の果実はほぼ確実に得られるわけで、回収想定期間を超えた分はプラスに転じる可能性が高いわけです。
先ほどお話ししたように、労働環境が最新設備となり定着率が上がることで見込まれるのは、採用コストと雇用コストの削減、PR効果といったものです。昔ながらの人海戦術で働く環境と、最新のロボットとともに働く労働環境を比較すれば、働き手がどちらを選択したくなるかは明らかですよね。

このように、長い目で見ても実際面の価値がほぼ確実に出てくるので、設備投資費用と数年分の人件費がトントンの試算であっても、投資する方向で意思決定しましょうというのが、私の意見です。

大手企業と中小企業で異なる「自動化機器」と「投資基準」

Q.大手企業と中小企業とで投資判断基準が異なるかと思います。これらの違いを教えてください。

小野塚 大型倉庫を複数持つ物流企業では、扱う荷物の量が多いため、GTP(商品棚搬送型ロボット)や自動倉庫など、大型の設備投資をしてもより早く効果を出しやすくなり、生産性を担保しやすくなります。さらに仮に3台の大型設備を導入した場合、トラブルで1台が動かなくなったとしても、残り2台でバックアップができるので、センターを止めずに稼働できます。

このように大手企業の物流センターだと、投資できる資金額が大きいため生産性を高めやすく、何かあったときに対応しやすいという特徴があるので、大型設備の投資でも意思決定が比較的スムーズだと思います。

一方、中小の物流倉庫では大型の設備を複数台導入するのが費用対効果の面から難しいケースが多く、また1台のメイン設備がストップすればバックアップがないため、センター全体が停滞してしまうリスクが出てきます。そのため、中小の物流倉庫では、トラブル時にバックアップが効きやすく、投資金額が小さくても生産性をある程度高められる、AMRのような小回りの利く小型ロボットをトライアルで複数台入れてから、判断されるのが良いと思います。

自動化で起きる地盤変化!物流業の未来とは

Q.3PLと荷主側での投資判断基準の違いを教えてください。

小野塚 日本では、3PLと荷主との契約期間は3年程度であることが多いです。また3年契約でも再契約になるケースがほとんどなので、長い目で見た設備投資も本来ならばできるはずです。しかし、ロボットの設備投資に対しての回収期間が「10年」となってしまうと、3PLとしてはどうしても二の足を踏んで導入しにくくなる実情があります。
そのため、短い投資回収期間で、一定の効果を出しやすいAMRのようなロボットを、セレクティブに導入していくのがおすすめです。またサブスクのような料金形態で利用できるサービスだと、よりコストを抑えた投資・運用も可能になりますし、現在そのようなロボットビジネスが増加していて活用できます。

投資への意思決定という点で言えば、荷主(商品の所有者=3PLへの発注者)の方が意思決定をしやすいということになります。物流センターの設備は荷主の所有物であることが多く、投資の是非を主体的に判断できます。そのため、長い目で見ても荷主側は早めに投資をしてくださいということが言えると思います。
しかも荷主としては、収益性を維持しようとすると、人件費の上昇分を売値に転嫁する必要があります。そのため設備投資をいち早く実行し、省人化できれば、その分だけコストの上昇を抑えられ、売値を維持でき、コスト競争力を相対的に高めることができます。

Q.これからの物流企業がどのようになっていくか、小野塚さんの未来予測を教えてください。

小野塚 これまでの倉庫業は、とにかく人が集められればビジネスになりました。現場で指示だしできるベテランスタッフさえ確保できれば、業務を遂行できたわけです。そして属人化したその仕事には再現性がないため、中小企業でも競争力を発揮できました。このような人海戦術でまわすやり方だったからこそ、日本には6千社を超える倉庫会社があり、運送会社に至っては6万社超もあるわけです。

一方で、物流を自動化するためには相応の費用を要しますが、大手企業は資本力があるだけではなく、スケールメリットを追求できるため、投資を意思決定しやすいです。一度自動化したオペレーションを確立してしまえばクローンのように横展開できます。結果として、現場の属人的スキルに依存した地場の中小企業は次第に競争力を失っていきます。

運送会社についても同じことが言えます。自動運転トラックも設備投資になるので、先行投資をしていく大手企業が優位です。本格的に実用化すれば、中小の運送会社の多くは、気が付けば自動運転トラックに仕事を奪われ、競争力を失っていくことが予想されます。

次回、最終回となる3回目では、物流の自動化を広めるカギを握っている不動産デベロッパーやマテハンメーカーの動向、そしてWMSなどのシステム連携についてお聞きします。

【この連載の記事】
2024年問題以降の物流危機 第1回:2024年問題以降に待ち受ける具体的な物流課題とは?
2024年問題以降の物流危機 第3回:物流「自動化」のカギを握る各業界の未来

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