[この記事はQiitaより再掲となります。] このブログ記事は、2019年6月23日にドイツのメッセフライブルクで開催されたRobotics:Science and Systems(RSS)2019ワークショップにて発表したクラウドロボティクスの将来に関するラピュタロボティクスのビジョンと展望についての詳細になります。 クラウドロボティクスの概要 クラウドロボティクスという用語は、2010年当時Googleの従業員だったJames Kuffner氏によって作られました[1]。この新しい概念はロボット工学とクラウドコンピューティングの統合によるロボットのための “拡張、共有された頭脳” について言及しました。ロボットが大量の計算処理をデータセンターにあるサーバへ委譲することで “頭脳を拡張” し、実世界の情報(環境やロボットの能力・行動の情報)収集および整理したデータベースを “共有”し、構築できるとしています。 一方、ヨーロッパでは2010年〜2014年の間、EUが資金提供したRoboEarth [2] が “ロボットのためのインターネット” を構築しようとしていました。これはロボット専用インターネットであり、クラウドにあるデータベースと計算処理能力によってロボットの拡張(データセンター内のサーバーによる)、共有された頭脳を実現します。 ラピュタロボティクスの設立メンバーは、元々RoboEarthプロジェクトのETH Zurichチームに所属していました。私たちのパートナーには6つの大学とPhilipsがいました。私たちの共通データベースとクラウドによる計算処理の結果は[3]や[4]、そして以下の動画をご覧ください。 我々の研究を通じて、幾つかのコラボレーションが生まれました。James Kuffner氏はRoboEarthのIndustrial Advisory CommitteeにBrian Gerky氏(Open Source Robotics Foundation(OSRF)のCEO[5])とともに参加しました[5]。 クラウドロボティクスの研究は90年代まで遡ることができます。外部頭脳ロボットに関する研究 [9] 、インターネットを用いたテレロボティクスに関する研究も行われています[8]。 ラピュタロボティクスのビジョン 課題 10年近くクラウドロボティクスを経験し、特に会社としての4年の経験より、クラウドロボティクスをより広く再定義すべきだと考えています。クラウドロボティクスを再定義する必要性は、次の二つの主要な理由が挙げられます。 技術より人とプロセスを優先する。技術を選択する前に、まず利用者に共感し、彼らの目標やプロセス、制約を理解しなければなりません。また、よく知られた技術への過剰な依存を伴う認知バイアスに注意しなければなりません。 個人の開発者または一つの会社よりもコミュニティを優先する。人々の繋がりには強さがあります。 クラウドロボティクス分野でよく見落とされるのですが、クラウドベースのロボットシステムの価値はコンピューティングだけではありません。ロボットの頭脳は、動作するためにセンサーやアクチュエーターといったハードウェアを必要とします。さらにロボティクスのユースケースの多くにおいて、複数台のロボットを用いたシナリオが含まれます。つまり複数セットのコンピューティングパワー、センサー、およびアクチュエーターが連携して動作するのです。そしてそれら上位に、従うべき人やプロセスがあります クラウドとロボットを接続する利点については異論はありません。私たちは頭脳を拡張、そして共有する利点を信じています。 最終的な目標は、クラウドロボティクスの範囲をクラウドだけでなくロボットのハードウェアや周辺環境を含めたものに拡張することです。それにより、クラウドを含めたロボットをより身近な存在にしたいと考えてます。 ロボットソリューションに関わる開発者、利用するエンドユーザから聞かれるロボティクスの課題は次の通りです。 技術的な複雑さ:ロボティクスソリューションは非常に高レベルな技術が求められ、専門家でない人が扱うのが困難です。 大規模な設備投資:ロボティクスソリューションを実現するにはかなりの資本が必要です。 柔軟性のないシステム構成: ロボティクスソリューションは特定の目的に対して構築され、環境やプロセスの変化に対して柔軟性はありません。 アクセス制限:ほとんどのシステムは現地からしかアクセスできず、そのことがシステムの運用や拡張に対して課題になっています。 独自のインタフェース:ソフトウェアやハードウェア間のAPIは標準化されておらず、イノベーションを阻害しています。 発見 旧来のサーバ操作と最新のクラウドコンピューティングに関する共通点を見いだした時、アイディアがひらめきました。詳しく紹介します。 クラウドコンピューティングが登場する以前はサーバとアプリケーションのインストール、構成、テスト、実行、保守などを行うのに専門チームが必要でした。大企業でさえ、その問題に頭を悩ませており、中小企業にとってはチャンスは皆無でした。 そして、クラウドコンピューティングが登場しました。…