【ラピュタではたらく vol.10】若手エンジニアから見た、様々なカルチャーが融合するロボティクスベンチャーで働く魅力

日付: 15 Dec 2022
カテゴリー: people, ブログ, ラピュタではたらく

ラピュタではたらく魅力や裏話を紹介する「Work at Rapyuta -ラピュタではたらく-」シリーズ。
社員インタビューを通じて、会社情報には載ってない「リアル」をお届けしていきます。

Work At Rapyuta – ラピュタではたらく- vol.10
藤原 格 (Itaru Fujiwara) フィールドアプリケーションエンジニア

オランダで生まれ育ち、12年間を過ごす。その後カンボジア、アメリカで学生時代を過ごし、在学中にインターンシップとしてラピュタロボティクスへジョイン。約半年間のインターンを経て、2021年4月に新卒で正社員として入社。コンピューターサイエンスやソフトウェア開発の知識、語学力を活かしてプロダクト開発やオペレーション、導入サポート業務などに従事。入社2年目、若手ながら卓越したコミュニケーション能力とハツラツとした明るさで日々楽しみながら業務に取り組んでいる。

グローバルな環境で育ち、エンジニアを目指した少年時代

ラピュタロボティクスに入るまではずっと海外で生活をしていました。生まれも育ちもオランダで、12年間暮らしていました。それからカンボジアに2年、高校から大学まではアメリカで過ごしました。結構珍しがられますが、特に変わった生活をしていたわけでもなく、普通の子ども時代でした。
唯一違うところといえば、ずっとインターナショナルスクールに通っていたので、幼少期からいろんな国の人とコミュニケーションを取ったりいろんな考え方や文化の違いに触れていたことくらいでしょうか。小さい頃からゲームが大好きで、中学生の時には自分でゲームを作って遊んでいました。高校生になる頃にはパソコンにも興味を持って、それも自分で作ったりして。ソフト面だけではなくハードウェアにも興味を持ちはじめ、大学でもその延長という感じでソフトウェア開発やコンピューターサイエンスの研究をしていました。

そして、在学中にインターンシップ先を探している中でラピュタロボティクスと出会いました。生まれ育った環境もあって日系企業よりは外資のようなカラーを持つ企業、さらにスタートアップ企業に興味があったのですが、その中でコンピューターサイエンス、ソフトウェアエンジニアとなると選択肢がほとんどなくて。検索していくうちにラピュタロボティクスを見つけ、事業内容が面白そうだったのはもちろん、創業者がスリランカ人であったり、メンバーが非常に多国籍な部分にも関心を持ち、応募しました。

インターンから正社員へ 社内のメンバーと対等に渡り合いながら切磋琢磨する毎日

インターンとして入社した時は、シミュレーションの手伝いをしたり、プロダクトの開発やそのサポートを行っていました。また、僕は日本語も英語も話せたので、日本企業のお客様と海外メンバーであるエンジニアの間に立ってコミュニケーションを取るような立場も担っていました。
そしてインターンとして半年間ほど従事し、大学卒業と共に新卒で正社員として働き始めました。2022年からは、協働型ピッキングアシストロボットラピュタPA-AMRのロボットオペレーションズチームに配属されました。現場のサポートチームと開発チームの間に入り、地図の作成やコンフィグレーションの設定などお客様先へのプロダクト導入、また稼働後のサポートまで様々な業務を行っていました。そこで現場と開発側、双方とのコミュニケーションが大切になる仕事を経験し、現在はラピュタPA-AMRのさらなるバージョンアップを見据え、解析ツールを新たに作るなど、今後の導入をできる限りスムーズに実施していけるよう事前準備を進めています。

仕事はもちろん楽しい。そして何より、人が優しい。だから僕はラピュタで働きたい

たまたまインターンシップサイトで出会ったラピュタロボティクスではありましたが、入社してからの大きなギャップはなく、ジョインした当初から正社員として働きたいと思っていました。理由としては、純粋に仕事自体が楽しいことです。今まではソフトウェアの開発をしてもコンピューターの画面上でしか動きが見られない状態でしたが、ロボティクスの開発だと目の前でロボットが動いてくれます。もちろんうまくいかないこともたくさんあるのですが、意図した通りに動いてくれた時はソフトでは感じられない喜びがあって、その部分が一番楽しいと感じます。

そして何より、一緒に働く人がとても優しいです。CEOを含め、みんながフラットでコミュニケーションがとても取りやすいと感じています。僕はまだわからないこともたくさんあるので、仕事を進めるにあたっては、一人でずっと悩んでいるよりもわかる人に質問することが大事だと思っているのですが、その分野の専門家のメンバーたちが快く教えてくれるんです。仕事がスムーズに進むというのはもちろんですが、まわりからインスパイアされ自分自身の知識が増えて成長を感じることもできるので、その点は本当に良いところだなと感じています。僕自身も開発に関わるものも多くなってきたので、逆に質問された時には気持ちよく答えていきたいなと思っています。
今後は、個人的にはどんどん新しいプロジェクトを遂行したいと思っていますが、ラピュタPA-AMRの品質を安定させて高めていき、より効率よくピッキングできるようにしていくことが目標です。

多国籍だからこそ生み出せる面白いものがあり、そのためのコミュニケーションは惜しまない

ラピュタロボティクスの一番の良さは、やはり多国籍なところだと思います。いろんな国籍の人がいて、いろんな経験があって、そこで醸成されたさまざまな意見があるというのは、ものすごく強みだと思いますし、他にはない面白いものが作れると考えています。その分、コミュニケーションが大変なこともありますが、僕は人と話すことが大好きなのでこの環境はすごく楽しいです。
しかもみんなものすごくフラットに考えていて、どのメンバーも平等なんです。マネージャークラスのメンバーとも対等に話せますし、若手の僕の意見を「むしろ聞きたい」と言ってくれて、その上で判断をしてもらえるところがとても嬉しい。年齢や国籍、役職などにとらわれず、本当に誰とでも気軽に話せるし、わからないことをすぐに聞けるというのは素晴らしい環境だなと感じています。これは仕事だけに限らず、プライベートでも同じです。この前もCEOと一緒に、僕がもんじゃ焼を作って食べる機会がありました。笑

ラピュタの「フラットさ」と「優しさ」のルーツとは

ラピュタロボティクスにはコアバリューと言って、それぞれ意思決定を行う際の6つの指針があるのですが、僕は中でも【Empathy】という考え方が一番好きです。【Empathy】は、「相手のことを思いやり、ニーズや感情を汲み取る努力を惜しまない」という意図なのですが、外資系の企業や海外の企業だとこのような考え方はあまり見ないなと個人的に感じています。
お客様が困っている時はもちろんですが、社内のステークホルダーとの関わりの中でもとても大事にされていて、日本らしい考え方も混ざり合っているのがいいなと思うと同時に、この概念をこんな多国籍な社内で共有できていることがすごいなと感じています。

ラピュタのエンジニアにとって大切な考え方

僕自身、中途採用の面接をさせていただく機会があるのですが、知識や技術の面はもちろん、お客様とのやり取りを通してエンジニアとしての本当のスキルが問われると思っていて、お客様先でどんな対話をしているのかという部分をよく観察しています。面接では、前半で技術的な話をして、後半はその人の考え方みたいなところを聞くようにしているのですが、相手の考え方をしっかり把握して、それに寄り添いながら対応する力はエンジニアにとってとても大事だと考えています。

僕たちは専門家なので細かい知識がある上で話すわけですが、お客様はわからない部分もある。そういう時に、相手がどんな説明やサポートを求めているのかを考えた上できちんと理解できるように説明し、望まれているスタンスで関わっていくことが大切だなと。これから一緒に働く仲間も、その部分の考え方が一致していると嬉しいです。
気持ちの面でいうと、ベンチャー企業なのでまだまだチャレンジの連続です。様々なことが変化していく中で、問題が起こった時にどう対処して解決できるかを自分で考えられることが大切だと感じます。
あとは海外のエンジニアとたくさん仕事をする中で、コミュニケーションの部分をどのように捉えるかで仕事を楽しめるかどうかが変わるかなと思います。語学的な意味ではなく、良いことも厳しいこともストレートに伝える人が多いので、それをどう受け止めるか、どう解釈して、どう対処していくかをポジティブに考えていけるかがとても重要です。言葉を素直に受け取り、これからどうしていくのかを前向きにディスカッションする。そういったところのコミュニケーションが取れるかが非常に大切なので、この部分も得意だったり、共感して努力していける方だととても楽しく働けるんじゃないかと思います。

いろんな面でチャレンジングな環境ではありますが、それを楽しめる方はとてもマッチすると思います。ロボットが好きで、いろんな国の人といろんな考え方の中で働くことに興味がある方はぜひ応募してください!一緒に楽しみながら働きましょう!

ラピュタロボティクスでは、一緒に働く仲間を募集しています!
採用ページはこちら


最近の記事

ブログ
/ 10 Apr 2024
2024年問題以降の物流危機
第3回:物流「自動化」のカギを握る各業界の未来
働き方改革法によって2024年4月から施行される「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」。これによって生まれるさまざまな課題が懸念されています。この物流・運送業界の「2024年問題」を乗り越えるためのヒントを、欧州を代表する経営戦略コンサルティングファームである株式会社ローランド・ベルガー の小野塚 征志さんに伺いました。「物流クライシスによっておこるこれからの日本」と「物流自動化への投資基準」という観点でお伺いしたインタビューを、3回にわたってご紹介していきます。前回までは、2024年問題の先に日本の経済衰退が引き起こされる可能性や、これを踏まえた課題解決として、物流の自動化にあたって、設備導入の投資に関するノウハウをお話いただきました。最終回となる3回目は、物流の自動化をより広めるためにカギを握る、不動産デベロッパーやマテハンメーカーの動向、そしてWMSなどのシステム連携についての未来像をお聞きします。 ■小野塚さんプロフィール profile小野塚 征志株式会社ローランド・ベルガー パートナー 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、日系シンクタンク、システムインテグレーターを経て現職。サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員などを歴任。近著に、『ロジスティクス4.0 −物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ −次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル −80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。 不動産デベロッパーが「物流企業化」する未来がより現実的に Q.物流企業に賃貸ビジネスを展開している不動産デベロッパーが今後どのように変化するかについても教えてください。 小野塚 物流デベロッパーは利便性の良い場所に物流施設を作って企業に使ってもらい、賃料を得るビジネスを展開しています。昨今では、1つの大型物流施設を複数のテナントが共用する「マルチテナント型物流施設」がトレンドです。2000年に物流REIT(投資家からの資金で不動産を購入し、賃料や売却益を投資家に配当する仕組み)が解禁になってから、大手の不動産デベロッパーは右肩上がりで売上を伸ばしてきました。しかし、足元、関西圏では空室率が若干上昇傾向にあり、関東でも同様の動きが見えつつあります。物流施設が今後も増えていくと、空室率が高まる可能性があります。つまり、これまでと同じ成長が見込めなくなってくるので、不動産デベロッパーのビジネスは賃料収入だけでは厳しくなってくるのです。こうなると、物流施設での賃料+αの収入が欲しくなってくるのは自明です。 そこで不動産デベロッパーは物流施設を貸すだけでなく、その中で動く設備もレンタルすることで、収入源を拡大しようとすると思います。たとえば、借主となる企業向けに、AMRや自動フォークリフトなどをレンタルし、賃料+αの収益を得ようとすることが増えるのではないでしょうか。さらにそこで働く人も募集・斡旋して派遣すれば、従業員ひとり当たりの紹介料として、キックバックを得ることも可能です。こうした賃料+αのビジネスは実際に始まろうとしていて、たとえば施設にロボットを置いて、3か月使ってみてくださいといったトライアルサービスを提供している施設もあります。物流施設だけではなく、施設で必要なものをワンストップで手配できる代理店的なビジネスへの進化は、不動産デベロッパーが生き残るための未来像かもしれません。 10年、20年後には、物流センターの作業の95%くらいをロボットに任せられるようになることが予想されます。そうすると、さらに行き着く先としては、デベロッパー自身が「倉庫業」としてのサービスを提供するようになる、という世界がやってきてもおかしくないと思います。かつてはホテルを作っていた企業が、今はフロント業務を自動化したホテルを運営しているくらいですから、デベロッパーが倉庫業に転換したとしてもなんら不思議ではありません。 ロボット利用料の大胆な見直しが物流自動化を加速 Q.一方で自動化機器を供給していくマテハンメーカーが、ロジスティクス4.0をむかえるにあたり、意識しておくべきことはどのようなことでしょうか? 小野塚 これにはふたつのポイントがあります。ひとつは、ほかのシステムとどんどんつながれるようになっていこう、ということです。物流センターのすべての業務フローを1台でできるような多機能ロボットは、この世にはありません。現実には複数メーカーの複数種のロボットを使わないと業務が成立しないわけです。そこで、これら複数のロボットのシステムを連携させる必要があります。ロボットは例えていえばPCのアプリのようなもので、「うちのはWindows専用だから」とか「Mac専用だから」となっている複数のアプリを、ひとつの業務の中で組み合わせるのは使いづらいですよね。そういった意味で、物流ロボットは基幹システムがどんなOSであっても、改修などの手間もなく、より簡単につなぐことができる、という前提が重要になってきます。ゆくゆくはロボット側でOSをつくっていくということも理想的ですが、まずは現状のロボットが「ほかのOSとつなぎやすい設計」になっていることが、製品を選択するポイントになってきます。 もうひとつは料金体系の見直しです。今は1台あたりの月額でレンタルのような形になっているかと思いますが、生産量や出荷量が毎月一定であればこれはメリットがあるでしょう。しかし、ECをはじめとした物流では月によって出荷量が変動する、いわゆる「波動」が生じます。そのため倉庫側からしたら、10台で1日1000個の出荷がある月と、10台で1日100個しかない月とで、レンタル費用のロスが生じてしまうことになります。 そこでユーザーのことを考えた理想像としては、費用を作業量で計算した料金体系だと思っています。すなわち、ロボットの必要台数は波動に応じてメーカーがコントロール、その代わり「アルバイトの人件費」は1出荷あたり150円だけど、修理費などもろもろ込みで「ロボットの利用料」は1出荷あたり100円ですよ…という形です。これは使う側からしてみたら、コストが固定費扱いから、完全に「変動費化」するんですね。要するに、波動によって稼働率が下がって費用対効果が下がるリスクを未然に排除できるわけです。無論、マテハンメーカーにとっては大変な選択ですが、物流企業からしたらかなり画期的だと思います。 そして、この作業量あたりの費用形態を実現するためには、ラピュタロボティクスが実現しているように、実務経験から得られた膨大なデータと分析できるプラットフォームが必要なんです。この環境であれば30台のロボットが必要で生産性がこのくらいになる、という「適切なロボットの量」は、過去のロボット稼働データの蓄積がなければ決して導き出せません。つまり、この「膨大なロボット稼働データ」があるところでしか適切な価格設定ができないのです。これは先行者有利のビジネスモデルです。仮に同じスペックの競合他社が出現しても、「適切なロボットの量」を提案できるデータは競合にはないので、同じプライシング戦略を打てません。費用形態を作業量ベースに変えるだけで、マテハンメーカーが競争力を高められるようになるのです。 Q.スムーズなシステム連携という面では、WMSなど物流企業の既存システムとのつながりがカギになると思います。こうした基幹システムの日本での動向を教えてください。 小野塚 日本の会社はシステムの細かな部分を「うちの会社はこうじゃなきゃいけない」とか「現場が管理しやすい」という大義のもとに、オリジナルのWMSをスクラッチで作ったり、パッケージソフトを原型がなくなるまで独自カスタマイズする…いわゆるガラパゴス化を志向する現場が多いです。また同じ系列会社のふたつの倉庫なのに別のWMSを使ったりするところなどもあり、日本でのシステム統合やシステム連携というのは、大変苦労する仕事です。 しかし、グローバルに目を向けると、そんなことをやっているのは日本くらいだとわかります。海外ではパッケージシステムを導入している会社がほとんどで、使われているシステムの種類もそう多くなく、欧米では上位5社ほどのシステムで全体の80%を占めることも珍しくありません。では、現場の意向を汲みあげローカライズしたシステムが多い日本が、今後はどうなっていくかといえば、長い目では日本も欧米に近づいてパッケージ化していくと考えます。たとえばビジネスツールでいっても、PCのOSはWindowsが多数を占めますし、勘定システムもいくつかのシステムで統一されてきたという歴史があります。物流管理システムでもその流れはほぼ間違いなく起こるでしょう。ただし、OSや勘定システムが統一された歴史は、アクションが起きてから20年とかのスパンで起こっていることでもあります。そういう意味では、かなり長い目で見て徐々に変化していくのかなと考えています。 ■おわりに残念ながら少子高齢化を背景としたさらなる人手不足は避けられません。物流の現場では、需要と供給のギャップがますます大きくなっていきます。経済の血脈である物流の流れが滞りはじめるわけです。そして重要なことは、今のままではそれが「遅かれ早かれ確実にやってくる未来」であるということです。物流センターでの課題解決は、より少ない人数で、より多くの物流量をスムーズに運用できる「自動化」の推進がもっとも有効です。他社に先んじてAMRなどの自動化設備を導入し、コスト競争力を高めることができれば、事業としての収益性や持続性も向上します。人件費の上昇分を商品価格に転嫁する動きが広がりつつある今は、自動化への舵を切る絶好機といっても過言ではないのです。 【この連載の記事】・2024年問題以降の物流危機 第1回:2024年問題以降に待ち受ける具体的な物流課題とは?・2024年問題以降の物流危機 第2回:物流危機をチャンスに変える「自動化」投資と基準…
...
read me
ブログ
/ 04 Apr 2024
2024年問題以降の物流危機
第2回:物流危機をチャンスに変える「自動化」投資と基準
働き方改革法によって2024年4月から施行される「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」。これによって生まれるさまざまな課題が懸念されています。この物流・運送業界の「2024年問題」を乗り越えるためのヒントを、欧州を代表する経営戦略コンサルティングファームである株式会社ローランド・ベルガー の小野塚 征志さんに伺いました。「物流クライシスによっておこるこれからの日本」と「物流自動化への投資基準」という観点でお伺いしたインタビューを、3回にわたってご紹介していきます。前回は、2024年問題が物流業界に引き起こす「深刻な人材不足」が日本の経済危機を招きかねないというお話でした。2回目となる今回は、これを踏まえて、2024年問題を乗り越えるための「物流の自動化」に投資するタイミングや、その判断基準について伺いました。 ■小野塚さんプロフィール profile小野塚 征志株式会社ローランド・ベルガー パートナー 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、日系シンクタンク、システムインテグレーターを経て現職。サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」委員、経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」委員、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキンググループ委員などを歴任。近著に、『ロジスティクス4.0 −物流の創造的革新』(日本経済新聞出版社)、『サプライウェブ −次世代の商流・物流プラットフォーム』(日経BP)、『DXビジネスモデル −80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(インプレス)など。 自動化への投資が生み出す「費用対効果+α」の価値 Q.小野塚さんの著書『ロジスティクス4.0:物流の創造的革新 』(日本経済新聞出版)でも予測されているように、人手不足に苦しむ物流業界は、ロジスティクス4.0(=装置産業化)へと進んでいくと思いますが、その前段階にある「ロジスティクス3.0」、すなわち「物流のシステム化」を進めることにも悩みを抱えている企業はまだ多いと考えられます。具体的に物流のシステム化や、自動機器を導入していく現場はどのように思考し、行動を起こせば良いのでしょうか? まずはコンサルタントとして見てきたご経験から、システム化・自動化の「投資判断基準」を教えてください。 小野塚 たとえば自動化への投資を行った結果、100人でやっていた仕事が50人になりました、とか、紙からデジタルで処理されるようになったことで事務作業者が30人から10人に減りました、となったときには、基本的にはまず人件費が削減されていきます。仮に、月当たりで20人分のコストが年間で1億円下がったとします。投資総額が10億円だとして、約10年で回収できそうだ…という考え方で意思決定をしていきます。5年がいいのか10年なのかは各社さまざまですが、ひとつの大前提として、投資に対して「一定期間で回収が見込めるものに関しては投資をすべきである」というのが基本のキとなる考え方です。物流センターの自動化については、これに加えてさらにふたつほど考えておくべきポイントがあります。 まずひとつは、自動化によって労働環境が改善されるような現場では「自動化の副次的効果」が発生するということです。重いものを運ぶつらい仕事はロボットで、人間は人間にしかできないクリエイティブな仕事ができる…となれば、無論、働く人のモチベーションも変わっていきます。その結果「この会社は労働環境が良い」というイメージが生まれ、採用率と定着率の向上につながっていきます。定着率が下がると新規採用を常に行わねばならないから、コストの面で見れば、人材会社への報酬や広告費などの「採用コスト」がかかっていくことになります。もし自動化して定着率が上がったことで採用コストが浮けば、ほかの有用な投資にまわすことができます。もうひとつは、「人件費は上がり続ける可能性がある」ということです。先ほどの例でいう1億円×10年で投資を回収するというのは、あくまで「今の人件費」で試算したものです。ここで考えなければいけないのは、今後は「確実に人手不足になる」ということです。こうなると指数関数的に人件費が上がっていって、集めようと思っても人が集まらなくなっている可能性もあります。将来的には年間1億円は2億円になっているかもしれません。現実的には、人件費がどこまで上がるかは誰にもわからないですし、定着率も完全に計算できるわけではありません。それでも極端な話で、設備投資分と人件費がアップすることを見込んだ回収分が、投資に対してプラマイゼロだとしても、「働く環境が大きく変わる」ことで得られる「副次的効果」の果実はほぼ確実に得られるわけで、回収想定期間を超えた分はプラスに転じる可能性が高いわけです。先ほどお話ししたように、労働環境が最新設備となり定着率が上がることで見込まれるのは、採用コストと雇用コストの削減、PR効果といったものです。昔ながらの人海戦術で働く環境と、最新のロボットとともに働く労働環境を比較すれば、働き手がどちらを選択したくなるかは明らかですよね。 このように、長い目で見ても実際面の価値がほぼ確実に出てくるので、設備投資費用と数年分の人件費がトントンの試算であっても、投資する方向で意思決定しましょうというのが、私の意見です。 大手企業と中小企業で異なる「自動化機器」と「投資基準」 Q.大手企業と中小企業とで投資判断基準が異なるかと思います。これらの違いを教えてください。 小野塚 大型倉庫を複数持つ物流企業では、扱う荷物の量が多いため、GTP(商品棚搬送型ロボット)や自動倉庫など、大型の設備投資をしてもより早く効果を出しやすくなり、生産性を担保しやすくなります。さらに仮に3台の大型設備を導入した場合、トラブルで1台が動かなくなったとしても、残り2台でバックアップができるので、センターを止めずに稼働できます。 このように大手企業の物流センターだと、投資できる資金額が大きいため生産性を高めやすく、何かあったときに対応しやすいという特徴があるので、大型設備の投資でも意思決定が比較的スムーズだと思います。 一方、中小の物流倉庫では大型の設備を複数台導入するのが費用対効果の面から難しいケースが多く、また1台のメイン設備がストップすればバックアップがないため、センター全体が停滞してしまうリスクが出てきます。そのため、中小の物流倉庫では、トラブル時にバックアップが効きやすく、投資金額が小さくても生産性をある程度高められる、AMRのような小回りの利く小型ロボットをトライアルで複数台入れてから、判断されるのが良いと思います。 自動化で起きる地盤変化!物流業の未来とは Q.3PLと荷主側での投資判断基準の違いを教えてください。 小野塚 日本では、3PLと荷主との契約期間は3年程度であることが多いです。また3年契約でも再契約になるケースがほとんどなので、長い目で見た設備投資も本来ならばできるはずです。しかし、ロボットの設備投資に対しての回収期間が「10年」となってしまうと、3PLとしてはどうしても二の足を踏んで導入しにくくなる実情があります。そのため、短い投資回収期間で、一定の効果を出しやすいAMRのようなロボットを、セレクティブに導入していくのがおすすめです。またサブスクのような料金形態で利用できるサービスだと、よりコストを抑えた投資・運用も可能になりますし、現在そのようなロボットビジネスが増加していて活用できます。 投資への意思決定という点で言えば、荷主(商品の所有者=3PLへの発注者)の方が意思決定をしやすいということになります。物流センターの設備は荷主の所有物であることが多く、投資の是非を主体的に判断できます。そのため、長い目で見ても荷主側は早めに投資をしてくださいということが言えると思います。しかも荷主としては、収益性を維持しようとすると、人件費の上昇分を売値に転嫁する必要があります。そのため設備投資をいち早く実行し、省人化できれば、その分だけコストの上昇を抑えられ、売値を維持でき、コスト競争力を相対的に高めることができます。 Q.これからの物流企業がどのようになっていくか、小野塚さんの未来予測を教えてください。 小野塚 これまでの倉庫業は、とにかく人が集められればビジネスになりました。現場で指示だしできるベテランスタッフさえ確保できれば、業務を遂行できたわけです。そして属人化したその仕事には再現性がないため、中小企業でも競争力を発揮できました。このような人海戦術でまわすやり方だったからこそ、日本には6千社を超える倉庫会社があり、運送会社に至っては6万社超もあるわけです。 一方で、物流を自動化するためには相応の費用を要しますが、大手企業は資本力があるだけではなく、スケールメリットを追求できるため、投資を意思決定しやすいです。一度自動化したオペレーションを確立してしまえばクローンのように横展開できます。結果として、現場の属人的スキルに依存した地場の中小企業は次第に競争力を失っていきます。 運送会社についても同じことが言えます。自動運転トラックも設備投資になるので、先行投資をしていく大手企業が優位です。本格的に実用化すれば、中小の運送会社の多くは、気が付けば自動運転トラックに仕事を奪われ、競争力を失っていくことが予想されます。 次回、最終回となる3回目では、物流の自動化を広めるカギを握っている不動産デベロッパーやマテハンメーカーの動向、そしてWMSなどのシステム連携についてお聞きします。 【この連載の記事】・2024年問題以降の物流危機 第1回:2024年問題以降に待ち受ける具体的な物流課題とは?・ 2024年問題以降の物流危機 第3回:物流「自動化」のカギを握る各業界の未来…
...
read me
プレスリリース
/ 04 Apr 2024
ラピュタロボティクス、三菱ロジスネクストと自動フォークリフト「ラピュタAFL」の販売協業を開始
ラピュタロボティクス株式会社(東京都江東区、代表取締役 CEO:モーハナラージャー・ガジャン)は三菱ロジスネクスト株式会社(京都府長岡京市、代表取締役社長:間野 裕一)と自動フォークリフト「ラピュタAFL」の販売協業を開始いたしました。
...
read me
プレスリリース
/ 03 Apr 2024
ラピュタロボティクス、株式会社Rise UPの物流センターへ「ラピュタPA-AMR」15台を納入 
ラピュタロボティクス株式会社(東京都江東区、代表取締役 CEO:モーハナラージャー・ガジャン)は、株式会社Rise UP(本社:大阪市西区 代表取締役社長:田中慎也)の物流センター(ロジスティクス千葉第1センター)に、協働型ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」を納入いたしましたのでお知らせいたします。
...
read me